カテゴリ:ピアノ曲
「別れ」というサブタイトルはショパンの他の作品でもすぐに思い浮かべるものがありました。それは14のワルツの中の1曲、第9番です。実に愛らしく切なく、そしてショパンがまだ青年である香り漂う感傷的なワルツではないでしょうか。 1835年の夏、ショパン(25歳)はポーランドを出て以来久しぶりに両親に会う事が出来ました。これは、彼にとってはこの上ない幸せな数週間でした。「この日が来るのを本当にどんなに長く僕は待ち続けこがれていたかを考えて下さい。幸福、幸福、幸福なのです。僕は嬉しくて、息がつまるほど接吻します」・・と彼は姉のルドヴィカに手紙を書いています(実は両親とはこれが生涯の別れになってしまうのですが・・・)。 *この時に作曲された他のワルツに2番「華麗なるワルツ」があります。両親に再会し数日間過ごした喜びが溢れている楽曲になっています。 この帰り、ショパンはドレスデンに立ち寄り、知り合いのヴォジンスキ伯爵一家を訪ねます。ここで、娘のマリア・ヴォジンスカ(16歳)にショパンは恋心を懐くようになりました。マリアの母親はそれには賛成でしたが、マリアの伯父の当たるマチウェイ・ヴォジンスカが反対します。肺病やみの田舎ピアニストでは釣り合わないと云う訳です。ドレスデンを去ってパリに戻るにあたって、ショパンはこの9番、変イ長調のワルツをマリアに送りました。
今日の1枚~マリアが描いたショパンの肖像 そうこうしますが、最終的に二人の愛は実を結びませんでした。反対を押し切れなかったマリア・ヴォジンスカはジョルジュ・サンドのような行動的な女性でもありませんでした。1837年になって、ショパンもこの現実を受け入れ、マリア・ヴォジンスカとの結婚をあきらめました。ショパンの死後遺品の中にマリア及び母親のテレサとのやりとりの手紙の束が発見され、また1つに「我が悲しみ」と記されてあったそうです。 私自身演奏してみて思うのですが、「別れ」をイメージするような悲痛なものはほとんど感じられません。直前に過ごした両親との幸せな日々の想い出が背後にあり、マリアへの恋心が淡いシルエットのように描かれているような気がします。それでもどことなくやるせない、切なさも満ちていて、マリアへの恋が成就されないことをショパンの直感が察知していたかのような、そんな曲想ではないでしょうか。 今日も私の大好きな偉大なるピアニスト、二人の演奏をご紹介します。 ☆ピアノ:Urtext Rubinstein ルービンシュタインhttp://www.youtube.com/watch?v=ls0Hc2l2qYc ☆ピアノ:Dinu Lippati リパッティhttp://www.youtube.com/watch?v=ITpUeU2-Xlg&feature=related
マイ インフォメーション コーナー 私の演奏です◇自分のアレンジによる「春よ、来い」http://www.youtube.com/user/kumikopiano?feature=mhw5 私のファーストアルバム「ショパンワルツ全集」http://plaza.rakuten.co.jp/kumikopiano/diary/201001280000/ *華麗なる大円舞曲/グランドワルツ/別れのワルツ/子猫のワルツ/子犬のワルツ などをはじめ、14曲のワルツ全曲収録いたしました。
セカンドアルバム(タイトル未定)年内発表予定 収録曲)バッハ:主よ人の望みの喜びを/メンデルスゾーン:春の歌/ショパン:夜即曲「遺作」/ドビュッシ:レントより遅く・月の光/ベートベン:「月光」より1楽章 他60分程度 <本間くみ子 ピアノリサイタル> Vol.2 2010.10.2(土) ♪バッハ◇フランス組曲5番 会場:ソフィアザールサロン お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
April 11, 2010 09:20:56 AM
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