クラシック音楽エッセイ～今日の１曲

カタロニア民謡◇鳥の詩　El Cant dels Ocells～カザルス演奏

前回のサラサーテに続きスペイン出身、ロマン派後期の作曲家としてカザルスの作品をご紹介します。

パブロ・カザルス　Pau Casals　（１８７６－１９３７）はスペインのカタロニア地方に生まれたチェロ演奏家、指揮者、作曲家です。チェロの近代的奏法を確立し、深い精神性を感じさせる演奏として20世紀最大のチェリストとされています。

カザルスの実績の1つとして、単なる練習曲と考えられていたバッハの「無伴奏チェロ組曲（全6曲）」の素晴らしさを見出し、広く紹介した事が挙げられます。私自身の極々小さな経験で恐縮ですが・・・バッハの「フランス組曲」それぞれの舞曲についての演奏で繰り返しをするかどうかをある日、先生に尋ねました。すると先生の応答はどうだったと思いますか？先生のお返事は「そうですね。。それはあなたの弾き方ひとつでしょうね」　（苦笑・・・）

また、巨匠指揮者フルトヴェングラーはチェリスト、カザルスに次のような賛辞を残しています。「パブロ・カザルスの音楽を聴いたことのない人は、弦楽器をどうやって鳴らすかを知らない人である」

カザルスは平和活動家としても有名で、音楽を通じて世界平和のため積極的に行動しました。当時スペイン内戦が勃発するとフランスに亡命し、終生フランコ独裁政権への抗議と反ファシズムの立場を貫いきました。また、カザルス率いるカザルス三重奏団の演奏活動の中、ナチス・ドイツに迎合する姿勢を示していたメンバーのコルトー（ピアニスト）との対立、決別によってカザルス三重奏団の解散へとつながったのです。また、スペイン内戦を避けて1939年にプラドへ移り、第二次世界大戦後の1945年に演奏活動を一時的に再開しますが、各国政府がフランコ政権を容認する姿勢に失望し、公開演奏停止を宣言しました。

今日お届けするこの曲、カタルーニャ民謡『鳥の歌』をカザルスが演奏し始めたのは、第二次世界大戦が終結した１９４５年といわれています。この曲には、故郷への思慕と、平和の願いが結びついており、以後カザルスの愛奏曲としても知られています。

もともとはカタロニアのクリスマスキャロルで「イエス様がお生まれだ。森の鳥たちも祝っている」と聖誕を鳥が祝っているという詩だそうです。しかしそれはもう1つの姿として現在の私達に伝説として引き継がれているのです。それがカザルス94歳、1971年10月24日、アメリカ亡命中、ニューヨーク国連本部において「私の生まれ故郷カタロニアの鳥は、ピース、ピース（英語の平和）と鳴くのです」と語り、をチェロ演奏したエピソードであり、今日の動画であるのです。

最後に、カザルスは何故、民謡である詩に言葉ではない表現、楽器を選んだのだろうか、その辺りを深く分析されているブログをネットサーフィン上、見つけました。宜しかったらこちらもお読みくださいね。http://am.jungle-jp.com/song11_2.html

　　　　　　今日の1枚～ピカソ（１８８１－１９７３）◇ゲルニカ

*パブロ・ピカソもスペイン出身、同世代ですが交流は特になかったとの事。この作品は1937年4月ドイツ軍がスペイン北部の古都ゲルニカを爆撃したことに対する抗議として描きました。ピカソの作品は、原色を使ったものが多いのですが、このゲルニカには色がなく全てモノトーンで描かれています。それは「戦争は、人々の希望全てが失われてしまう」という強いメッセージの証だと言われています。

☆カザルスのチェロ演奏で：ニューヨーク国連本部にて（スピーチから始まります）

http://www.youtube.com/watch?v=rt9iz3xApVg

☆民謡として：ソプラノ～Victoria de los Angeles

http://www.youtube.com/watch?v=tRwIb8ngQio&feature=related

　　　　　くみこpiano youtube  コーナー　

このコーナーでは私自身が今まで演奏した曲達の中から「ライブ録音」＆「本格録音」をしたものをご紹介します。下記は「今月のアップ曲」です。是非聴いて下さいね！

リベルタンゴ◇ピアソラ：Cello & Piano（本間くみ子） http://www.youtube.com/watch?v=xzCa7UNXn0A

ライブ録音：ソフィアザールサロン(2009.6　Duo Concert)

私のＣＤに関するお問合せはこちらへ：k-honma@violet.plala.or.jp