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カテゴリ:くろのお気に入り!
くろが最初に出会った看板のない名店、 「メイクショップ・カミヤ」のことも 書きたくなってしまいました。 メイクショップ・カミヤは、沖縄のバイク屋さんです。 沖縄に引っ越すことになった時、 知り合いに教えてもらいました。 最初に店に行ったときは驚きました。 バラック、いや、ほとんど廃墟のような店構え、 そして店の前には廃品回収業者のような野ざらしの部品の山。 「なんなんだココは!」とかなりビビりました。 (今は北谷に引っ越してきれいになったけどね) 店の外にバイクをとめ、 「こんにちは・・・」 おそるおそる店に入ると、 中には、ひと癖もふた癖もありそうなバイカーたちがずらり、 皆、真ん中に座ってバイクを直している 一人の男を見つめていました。 「ハイサイ、こんちわぁ」 ニコニコしながら振り向いたのは 気の良さそうなオッサン。 そしていきなり、 「Vツインエンジンのバランスが悪いねぇ、 多分マフラーだろ」 と言いました。 まだくろのバイクを見てもいないうちにです。 エンジンの音しか聞いていないはずです。 確かにエンジンに不調を感じていました。 東京のバイク屋さんにも、 何回か見てもらっていました。 点火系の部品を変えてみたり、 キャブレターを調整してみたり、 その度に結構お金がかかりました。 でも直りませんでした。 「う~ん」 とひとつ大きな伸びをして立ち上がり、 店の外に出てきたカミヤさんは、 「どれどれ」とマフラーを鋭く一瞥、 「やっぱり、ここだ」と言うなり、 持っていたでかいハンマーで トンテンカンテンと マフラーをぶっ叩き始めました。 くろが口を挟む隙もありませんでした。 そして、数発叩くと、 「ほれ、直ったよ」 とまたしてもニコニコと顔を上げました。 エンジンを再びかけてみると、 今までの不調がウソのように、 くろのハーレーは 「ドッドコドッドコ」と テンポ良く回転を始めました。 「あ、ありがとうございます! で、おいくらで・・・?」 「なぁに言ってるか? タダに決まってるさぁ」 それがカミヤさんとの出会いでした。 カミヤさんはバイクの気持ちが 手に取るように分かる人でした。 たいした工具もないのに、 なんでも手作業で直してしまいます。 得意なのがマフラーを作ること。 「カミヤのマフラー」と言えば、 沖縄のバイカーの間では有名だったそうです。 その作業は大胆そのもの。 まずタコ糸でパイプをくるりと巻き、 円周を測ると、 それをアルミの板に鉛筆で写し取ります。 んでもって、いきなりジョキジョキと アルミ板を切り始めます。 切り取ったアルミをエイヤエイヤと丸め、 切り口を合わせて溶接しちゃいます。 あっという間の作業、 しかも作業中はたいてい鼻歌をフンフン歌っています。 初めて見たときは、唖然としました。 カミヤさんは不思議な人でした。 「沖縄にはいっぱい神様がいるさぁ、 俺も神様がいるからやっていけるんだはず」 部品が欲しい、と思うと その部品をくれる人が現れたり、 お金が足りなくなっても なぜかその都度、助けてくれる人が現れるのだそうです。 また、カミヤさんは いろいろな部品を組み合わせ、 まったくオリジナルのバイクを作ります。 その試走はなんと、夢の中で済ませてしまいます。 ある程度バイクが出来上がってくると、 大体夢を見ます。 夢の中でそのバイクを走らせると、 問題点が分かってしまうというのです。 だから、バイクが組みあがったときは、 ほとんど完璧に、 イメージどおりに走ってくれるのです。 そんなカミヤさんの夢は、 「陸、海、空を走るバイクを作ること」 しかも、ちゃんとナンバープレートもとり、 公道も走れるバイクです。 まず、陸上では普通のバイクとして走行します。 次に、バイクの後ろに大きなプロペラをつけ、 足元にフロートをつけると 水上仕様になります。 そして、更に翼をとりつけると、 空をも飛べるという 荒唐無稽なバイクです。 そんな訳の分からないバイク、 カミヤさんしか思いつきません。 もはやバイクと呼んでいいのかも分かりません。 でも本人は大の本気、 もう頭の中では何度も試走を繰り返していました。 そしてなんと、そんなカミヤさんにパラプレーン (パラグライダーにプロペラエンジンをつけたような簡易飛行機)を くれるという人が現れたのです。 空を飛び、海を走るために、 まさにカミヤさんが必要としていたものでした。 カミヤさんならではの神がかり的なヒキの強さです。 バイクを軽量化するための様々な工夫も、 次々と頭の中で出来上がっていきました。 そして・・・ 「来月には作り始めるつもりさね」 と言ってから、すでに7年の歳月が流れました。 昨年、久々に沖縄に遊びに行ったときも、 パラプレーンはバラバラに解体されたまま、 まだ倉庫に眠っていました。 さすがは生粋のウチナーンチュ、 てーげーの極みです。 そして、カミヤさんは未だに夢の中での試走を繰り返しています。 でも、くろは信じています。 カミヤさんがいつかきっと 夢を叶えてくれる事を。 「でぇじ、きもちいいやっさぁーーーっ!」と空を飛び、 「あぎじゃびよー、うちなーぬ海は世界一!」と海面を航行する。 少年のようなキラキラした瞳で バイクにまたがっているカミヤさんが 目に浮かびます。 そして、そんな光景を思い浮かべるたびに、 「本気で夢を追いかけるって、素敵なことだなぁ」と 思ってしまうのです。 おとぎ話ではありません。 本当に、そんな人がいるんです。 この世って、本当におもしろいところですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年05月16日 02時13分46秒
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