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2008年03月27日
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3年ぶり?に会った親父は、思ったより老けていなかった。

俺にとって反面教師でありつづけた男、
そして、俺のことを「冷たい息子」といい続けた男、
それが俺の親父だ。


75歳になる親父は、小説家になる夢を未だに追い続けている。
これから全身全霊で、人生の集大成となる本を書くという。

「俺は天才じゃない。
 だから自分の体験に基づいたことしか書けない。
 お前のことも書く。母さんのことも書く。
 自分が、家族に対して感じてきたことを正直に書く。
 お前や母さんが、読んだらショックだったり、
 不快に思うであろうこともとことん書く。
 それを言っておきたかったんだ。」

親父は、俺に会いにきた理由をそう説明した。

複雑な思いもあるが、嬉しかった。


昔の記憶が蘇った。

俺が高校一年生の時、親父が私小説を書いた。

小説の中では、親父は愛妻家であり、
お袋は親父のことをとことん愛し、
俺は親の愛を一身に受け、親を愛する息子だった。

現実から目を逸らし、世間体を気にし、
作品を創る事と嘘をつくことがごちゃまぜになった
吐き気を催す小説だった。


俺は、高校の作文の授業で、
その親父の小説の話を書いた。

「夢を追い続け、遂に形にした父親を尊敬している。
 いい作品だと感じた。」

作文に感動した先生は、
俺の作文をプリントにして色々な人に配った。

小説の中に書かれた家族の姿が虚像であるのと同様、
俺の作文も嘘の塊だった。

ある意味、親父と俺は似た者同士だ。




親父が全てをかなぐり捨て、
綺麗なものも汚いものも全て作品の中でぶちまけた時、
その時、初めて俺は親父の生き方を理解できるのかもしれない。

親父の人生に残された時間はもう、そう長くはないだろう。

頑張ってほしい。

半端なものはもう書くなよな。



正直、親父は嫌いだが、

悔いのない作品を、

親父なりの人生の全うを、

見せてほしい。



今は、素直に、そう思う。





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最終更新日  2008年03月29日 01時05分26秒
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