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カテゴリ:西部劇
「明日に向かって撃て」 Butch Cassidy and Sundance Kid 1969年 アメリカ映画 監督 ジョージ・ロイ・ヒル 出演 ポール・ニューマン ロバート・レッドフォード キャサリン・ロス ジョージ・ロイ・ヒル、ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォードが「スティング」の前に作った、アメリカン・ニュー・シネマの傑作です。 実在のギャング、ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドのお話です。 西部で名を馳せた荒くれ者、ブッチ・キャシディ(ポール・ニューマン)とサンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)は列車強盗を繰り返し、ついに追跡のプロを集めた最強の刺客を鉄道会社から派遣されてしまいます。 はじめはなんとか逃げ切ることに成功する2人でしたが、刺客たちは追撃をやめることはなく、ひたすら彼らへと猛追してきます。 2人は巨大な滝まで追いつめられ、逃げ場を失ってしまいます。ブッチは一か八かで滝つぼに飛び込もうとサンダンスに提案しますが、サンダンスはかたくなに拒否し続けます。サンダンスは泳ぐことができなかったのです。 大笑いをする2人でしたが、ついに意を決して飛び込み、命からがら逃げのびた2人は、サンダンスの恋人エッタ(キャサリン・ロス)とともに南米ボリビアへと逃亡します。 主人公は、西部開拓時代の最晩期に実在したギャングです。銀行強盗や列車強盗などを繰り返し、その悪名はアメリカ西部全体に轟いていました。 冒頭、サンダンスは酒場でポーカーをしています。彼は絶好調なようで、分が悪くなってきた相手は、イカサマではないかと因縁をつけてきます。そこへ、ブッチが入ってきて、「サンダンス!」と呼びます。すると凄んでいた相手は「サンダンス・キッド?」と、とたんにビビりだすのです。 ここで観客は、「ああ、有名なんだ。」と、設定を理解します。「つかみはOK!」といったところでしょうか。 時代はアメリカ西部開拓時代の最晩期、ゴールドラッシュに沸いた時代は今は昔、アウトローたちが幅を利かせていた時代は過ぎ去ろうとしていました。 だから、ブッチとサンダンスも、砂漠を通っても、川を越えても、足跡の残りにくい岩場を通っても、1頭の馬だけを違う方向に走らせて二手に別れたように見せかけても、一定の距離を保って追跡をしてくる鉄道会社に雇われた精鋭の追っ手にビビってしまい、なんとなくもう潮時なんだという空気を察知して、まだまだ開発途上にある国、南米のボリビアで一旗揚げようと、逃げていくのです。 そんな、時代に取り残された男たちの悲哀といったことが、本作のテーマなのでしょうか。 しかし、そんな結構重いテーマにもかかわらず、ブッチとサンダンスは、人生を楽しもうとしています。 ある早朝、エッタの家に、ブッチが自転車に乗って現れます。もちろんサンダンスは家の中でまだ寝ているのですが、ブッチはエッタを、“未来の乗り物”での散策に誘うのです。 主題歌「雨にぬれても」が軽快に流れる中、ブッチがハンドルの上にエッタを乗せ(「えっ、そんな乗り方あり??」と思いながらも、「カッコいい!」と思ってしまいます。)、田舎道を走り回る様子が映し出されます。まるでアツアツの恋人同士のような場面ですが、エッタと恋仲なのはサンダンスです。美しいアメリカの田園風景と相まって、3人の関係がよくわかる名場面です。 また、ボリビアへの行程は、その途中で3人が観光をしたり、パーティに参加したりしながら楽しく過ごしているところを、ダイジェストで見せていきます。 地元で行き詰って逃げていく奴らには、全く見えず、底抜けに楽しそうな3人です。 しかし、その画面は、なぜかセピア色のモノクロ写真で映し出されており、何かしらの意味が込められているようです。(ちなみに、この映画、最初のタイトルバックと、最後の有名なストップモーションのラストシーンもセピア色になっています。) 彼らは楽しく過ごしているが、実は悲しい状況なんですよ、という意味に、僕は捉えましたが、みなさんはどう考えるでしょうか。 ということで、結局は、有名なラストシーンに象徴されるように、時代に取り残された男たちの結末は、バッドエンドで終わるというお話です。でも、バッドエンドにしてしまっては、彼らの人生哲学、人生は楽しくかっこよく(これは、どこかに書いてあるわけではなくて、僕自身が、この映画から受け取ったものですが。)、というのに反してしまうので、彼らは、明るい明日に向かって行こうと、最後飛び出していくのです。つまり、「明日に向かって撃て」なのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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