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カテゴリ:戦争
「シャンハイ」 Shanghai 2010年 アメリカ・中国映画 監督 ミカエル・ハフストローム 出演 ジョン・キューザック コン・リー チョウ・ユンファ 渡辺謙 デヴィッド・モース 菊地凛子 上海は、今でこそ超高層ビルが立ち並ぶ、世界随一の近代都市ですが、アヘン戦争以降、ヨーロッパの強豪国が続々と入り込み、昭和初期には、欧米各国(もちろん日本も)が租界を作り、ヨーロッパではナチス・ドイツが覇権を握り、日本軍が中国を侵略し始めたころには、世界各国が暗躍する、最前線の危険地帯でした。 そんな太平洋戦争勃発前夜の上海を、米・中・日のスターを集め、描いた作品です。 1941年10月、米国諜報員ポール・ソームズ(ジョン・キューザック)は、世界各国が睨み合う上海を任務で訪れました。同僚コナーとカジノで落ち合う予定でしたが現れませんでした。代わりに出会ったのは、美しい中国人女性で、コナーとは海軍情報部で遺体として対面することになってしまいました。 アスター大佐(デヴィッド・モース)によると、コナーは日本と繋がりのある裏社会のボス、アンソニー・ランティン(チョウ・ユンファ)について捜査を進めていたということでした。 ソームズは知り合いを頼ってランティンが出席するドイツ領事館のパーティに出席し、日本軍大佐タナカ(渡辺謙)とランティンの妻アンナ(コン・リー)と出会います。このアンナこそ、カジノで出会った女性でした。 コナーの愛人だった日本人女性スミコ(菊池凛子)の存在、タナカが海軍と空軍を掌握する日本軍情報部のトップであること、政治家だったアンナの父親は南京事件を非難し、日本軍に殺され、アンナはランティンと結婚することで、日本軍から逃れていたこと、ソームズは調べを進めていきます。 そしてついに、事件が発生します。反日組織であるレジスタンスが、日本軍人を狙って、クラブのテーブルに爆薬を仕掛けたのです。繰り広げられる激しい銃撃戦の最中、ソームズは、それがアンナの計画であることを見破り、彼女を追いかけます。 親友の後を継いで諜報活動を続けるとともに、その死の謎を追い求めるアメリカ諜報員ソームズ役のジョン・キューザック、上海の中国人裏社会を牛耳りながら、日本軍・ドイツ軍とも渡り合うランティン役のチョウ・ユンファ(「パイレーツ・オブ・カリヴィアン ワールド・エンド」で、シンガポールの海賊の親玉をやっていた人です。)、その妻で夫に隠れ中国人レジスタンスとして暗躍するアンナ役のコン・リー(「ハンニバル・ライジング」で少年ハンニバルを保護するレディ・ムラサキを演じていた人です。「SAYURI」にも出演していました。)、日本軍情報部のトップとして、ソーンズの目的などを探るタナカ大佐を演じる、我が国が誇る国際スター渡辺謙、米・中・日の演技派俳優たちによるなかなか見ごたえのある重厚なサスペンス&恋愛映画ととらえ、戦争前夜の緊迫する国際都市上海の裏社会の雰囲気もよく出ていて、結構楽しんでいたのですが、最後の結末で、「えっ!!???」と思ってしまいました。 確かに、日米開戦(つまり真珠湾攻撃)まであと2か月、時間が足りなかったと言えばそれまでですが、その結末についてネタバレは避けるためにはっきり語ることはやめておきますが、結構拍子抜けの結末でした。 ソーンズは、真珠湾攻撃に気づき阻止しようと暗躍するんじゃなかったのか、上海という最前線に常駐する情報部トップとしてのタナカの立場はそれでよかったのか、ランチョンがドイツ軍や日本軍と渡り合っていたのはいったい何のためか、そんな疑問が続々と湧き起ってきてしまいました。 日本軍が中国に侵略してきたこと、初期段階では日本はかなり優勢で、続々と中国本土を占領していっていたこと、日本軍のハワイ真珠湾への奇襲により日米が開戦していること、日本政府は奇襲の準備をひそかに進めながら、開戦ギリギリまで、アメリカに対し外交努力を続けていたこと、日米開戦とともに、日本軍の上海への進出が始まったこと、上海の各国租界にいた外国人は、日本軍の侵攻をギリギリまで知らず、脱出するために大混乱だったこと、これらは厳然たる事実で、動かしようはないと思いますが、例えば、コナーの後を追って、日本の艦隊が上海から姿を消していることを突き止めたソームズが、真珠湾攻撃を阻止しようと暗躍するが、結局巨大な力に逆らうことはできず、上海の裏路地でむなしく転がるのみ、という結論でもよかったのではないでしょうか。 ということで、なかなか重厚なドラマかと思いきや、結局ただ戦争に翻弄された恋愛ドラマにしか過ぎなかったという、激動な時代を背景にしながらも、なんか拍子抜けな結論でがっかりした映画を今回は紹介しました。 ところで、最後の外国人の脱出に混乱する上海の港、あの中に、両親とはぐれてしまったかわいそうなジェレミー少年がいるんだなあ、と勝手に空想してしまいました。(スピルバーグ監督作「太陽の帝国」参照。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.07.24 14:01:37
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