「ちゃんと話しておきたかったんだ」
彼が私に話しかけてきた
「えっ!」と驚く私は大人の私(今より若い頃の)
彼は中学生の時交換日記していた1歳下の彼
交換日記で続いた私達の小さな恋は野球部の練習で忙しかった彼と
デートらしいデートをすることもなく2年半そんなお付き合いを続けていた
その何冊かの日記帳は彼が持ったままのもあれば私の実家にもまだ残ってるかもしれない
日記の中の私達はとっても仲良かった
ある夏休み、お父さんの田舎に行ってた彼からの日記
自然が豊かで川の水がとにかく綺麗なんだ
胡桃ちゃんに見せてあげたいと思ったよ
そんな事を書いてたことが今でも覚えてる
年下なのに時々書いてる大人っぽい彼の言葉に14才の私はドキドキする
面と向かって会うことが少ないのに彼への想いはどんどん膨らんでいくのだ
「ちゃんと話しておきたかったんだ」
それは夢の中の言葉だった
「そうだね...どうしてあの頃ちゃんと話が出来なかったんだろう...
今ならこんなに近くにいても話が出来るのに」
交換日記の渡す場所は私の下駄箱の中だった
2時間目の終わった休み時間に彼はいつも届けてくれた
毎日が3日置き...そして1週間置きになることはあったけどそれでも続いた交換日記
日曜日は近くの広場で彼を待つ
待っても来ない彼
「きっと野球部の練習なんだ」
泣きながら2時間ほど一人で待つ私
自転車で現れた彼
嬉しいけど目を合わせて話すことができない私...彼も
彼がどんな性格だったのか
本当は知らない
でも大好きだった彼
私がフォークが好きだからって彼はギターを始めてくれた
受験を前にした中3の2学期に彼からの日記
「勉強が大変になるから日記はもう止めよう~」
それが別れだった
「ちゃんと話しておきたかったんだ」
夢の中の彼の言葉はきっと私の言葉なんだ
今なら話せるよ...
置いていった遠い日の想いが
何故か夢の中で甦ってきた
もう会うこともない
さよなら
私の初めての恋