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埋もれ火のアンソロジー

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2013.12.11
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テーマ:徒然日記(23463)
カテゴリ:ことばの遊び場
俺と親父



息子「おっちゃん(お父ちゃん)は大連時代は何弁ば使いよったと?」
親父「はあ~?ナニベン?」
息子の問いにやや戸惑う親父
息子「使いよった言葉たい」
親父「標準語やった」
息子「大連は標準語ば使うと?なんで東京からはなれとっとに東京弁ば使うっちゃろか?」
親父「知るもんか。生まれてみんなが話しよったとが標準語やったんやろな~」
いつも自信満々の親父の姿がそにはなかった。

そんな親父とふたりで神戸に行ったもとがある。祖父清吉が神戸の生まれだったらしく本籍はずっと神戸市須磨区だった。
そこには親父の親戚がいて、叔母もいて、皆に歓迎を受けた。
そのとき驚いたことに、親父が今までの聞いたこともないような話し方でみんなと会話をしてるではないか。そう、あの吉本新喜劇のような関西弁をいとも自分の言語であるかのように話していたのである。

こんなこともあった。画家香月康男が生前、福岡で数回個展をしていた。香月のファンであった親父は俺を必ず連れて行った。香月に対面した親父も楠久津では見たことがないような態度としゃべり方だった。態度は香月を威圧するかのように見えた。しゃべり方はいわゆる東京方言だった。明らかに楠久津弁ではない親父が出現してるのを俺は目撃していた。

そして楠久津にもどると、前世から楠久津で暮らしているかのように、古老たちが使うような古い楠久津弁、山代弁、伊万里弁、佐賀方言を使いこなしていた。

この人はカメレオンかと俺は言語を自由にその場にあわせて使える親父を尊敬する気にはなれなかった。

親父は絵も木像も焼き物も言語も含め「ものまね」が得意だったのではないかと、今、思っている。そして、器用だった。器用貧乏とは親父のことだったのか。
妻はよく言う。
「あなたにお父さん(親父のこと)のような器用さが少しでもあればよかったのに…」と愚痴っぽく言う。




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Last updated  2013.12.12 08:08:43
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