なんとなくSF
しばらくつかず離れずっていうか疎遠気味でSFと付き合ってきたけど、まあなんていうのか、あー現実かったるいわ、という気分の今日この頃、現実逃避的になんとなくSFが読みたくなって『ニューロマンサー』を借りてみた。サイバーパンクの代表作で、映画マトリックスの元ネタみたいなSFだけどこれがまたもうくらくらするような名作。SF慣れしていないと読みにくいか?ハードボイルド系のストーリ展開はあまり好きじゃないけどこれは確かにすごいと思う。そのついでに古典方面にも。例のあの「人類補完計画」というネーミングの元になった、コードウェイナー・スミスの「人類補完機構」シリーズを、翻訳の出ている4冊まとめ読み。『鼠と竜のゲーム』『シェイヨルという名の星』『第81Q戦争』の3冊の短編集(現在すべて絶版状態)と、まだ書店で入手可能な長編の『ノーストリリア』。一番面白かったのは『シェイヨルという名の星』だったが、総まとめみたいな『ノーストリリア』も悪くない。ただ、この長編は短編集を読んでおかないと前提になる話がよくわからないと思うんだが早川は何を考えてるんだろう。スミスのSFはかなり好み。静かで冷酷な世界を温かい視線で描くというのが良い。スミス自身は相当な知識人でアジアにも精通した人だったようだが、その彼が人間と動物(から作られた準人間)の徹底的な断絶とその克服というテーマを繰り返し扱っているのが興味深い。人間と動物の境界線が曖昧なアジア的感覚を持つ自分から見れば、そんなにも人間と動物の間の溝ってのはキリスト教徒にとっては越え難いもんなのかと不思議に思う。人間と動物的人間が関わる同じような話なら川原泉の『ブレーメン2』の方がスミスの世界観より優れているような気がする。スミスが生きていればどう思うか、読ませてみたかったなあ。ついでにいろんな作家の短編集『20世紀SF』も読んでみた。今読んでいるのは重版未定で入手できない1950年代の作品を集めた第2巻。さすがに時代を感じるけどまあまあ。第3巻は入手可能。勢いでティプトリー・Jrの短編集もいくつか読んでみたが、残念ながら自分の好みではなかった。ストーリーはよくできていると思うが、何かひりつく痛みのようなものが大きくて読んでいていささか辛い。活字は何でも読むが、それにしてもやはり好き嫌いはある。ぶっ飛んだSFはダメかというとそうでもなく、円城塔は好きだし。SFに限らずフィクション作品全てがそうだけど、痛さばかりが先に立つような、突き放しすぎた救いの無い感じのものがどうやら苦手なんだな、と最近思うようになった。そう思うとあの人とかあの人の小説がダメなのはそのせいか、と妙に納得がいく。【楽天ブックスならいつでも送料無料】ノーストリリア [ コ-ドウェイナ-・スミス ]価格:1,058円(税込、送料込)【楽天ブックスならいつでも送料無料】ブレーメン2(第1巻) [ 川原泉(漫画家) ]価格:575円(税込、送料込)【楽天ブックスならいつでも送料無料】20世紀SF(3(1960年代)) [ ア-サ-・チャ-ルズ・クラ-ク ]価格:1,026円(税込、送料込)