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カテゴリ:オンナ心
私のブログに、雅夢からの書き込み。「嬉しいよ!」小さく呟いて、パソコンの画面をなぞっていく。読み終えた後、じんわりとした温かさに包まれるよう。
「まるで、雅夢の身体の温もりみたい。意外に男らしいんだね」一人微笑む私。 美香。君のブログ見たよ。あと、携帯に最高に可愛い写真、サンキュー!(。-∀-) ニヒ♪早速、新しい待ち受け画面に設定しちゃった! なんだかさ、読んでて切なくなっちゃったよ。まるで、最後のお願いみたいなんだもん。君がいなくなるなんて、これから先も意識したくない。 元旦那って、俳優なんだね。女たらしって言ってたけどさ、君の結婚生活ってあまり幸せじゃなかったのかな? それが結果的に身体を蝕んだとしたら、俺、正直、狩野さんを許せない。つーか許さない。 顔見たら殴っちゃうかも。殴ってもいいよな?美香。 俺から大切な人を奪う、きっかけにさせたかもしれないんだ、当然だろ? 怒らせると怖いんだぜ!女には優しいけどな!(笑) 男の腕は、女を抱く為にあるんじゃない。女を護る為にあるんだ。少なくとも俺はそう考えてる。その為に力も強く、逞しい身体をしてるんだからな。 美香、君が望むなら、何度でも愛してやる。そして共に、病とも戦ってやるからな。 苦しい時は決して無理すんなよ!この間みたいに、弱音だって吐いていい。それで楽になれるなら。全部受け止めてやる、俺って存在が。 今日は外出先から、君のブログ何度も何度も見てた。美香の言葉を繰り返し反復しながら。 明日には仙台から帰る。遅くなりそうだったら、ちゃんと寝て待ってろよ!眠れないかもしれないけど、それでも横になってろ。言うこと聞かないと駄目だぞ!俺は甘えんぼ系だけど、好きな女には小煩いんだぞ! もし起きてたら、たくさんキスして虐めるからな!(。-∀-) ニヒ♪ 美香の好きな茶碗蒸し、明日一緒に作ろうな!これでも料理上手いんだぜ!意外だろ? 誰よりも、美香が好きな俺からのメッセージ。起きた後でゆっくり読んでくれよ! 雅夢。 待ちきれなくて、先に読んじゃった。ストレートにガツンと届く言葉、嬉しいよ。ね、雅夢。私頑張るよ!最後まで生きること諦めない。絶対投げたりなんてしないから。だから最後まで一緒に居てね! 「お休み、年下君」彼の言う通り、ちゃんと寝なくちゃ。パソコン画面の時間は夜11時過ぎ。深い溜息をついて、パソコンの電源を落とした。 携帯電話から、ありがとうのメールを送って、ベットに身体を滑り込ませる。 「お葬式か・・・」なんか葬儀って暗い感じがする。彼は、小学校時代の恩師の葬儀に参列する為、故郷宮城県仙台市まで里帰り。ちょっぴり寂しいけど仕方ない。 しかもその方は、私とほぼ同じ年齢で、同じ病だったなんて、何たる皮肉なんだろう。まだ42歳のシニアの監督、若すぎるよね。 死を嫌でも意識する出来事。憂鬱にならないわけじゃないけど、何とかメンタルを保ちたくて、携帯電話から自分のブログを閲覧していた。彼からのメッセージで、元気をもらいたかったから。 死っていったいなんだろう?生きるっていったいどういう事? 最近の私は、自分の生きる意味について、思考を巡らせる時が多い。宗教は持っていないけど、何とか心の救いが欲しいよ、特にこんな一人の夜は。雅夢と離れていると、とたんに弱気になるなんて、弱いな、自分。 彼が私に贈ってくれた、Cartierのクロスのネックレスを握り締め、不安な気持ちを押し殺す。嬉しかったな。お礼に彼には、JUSTIN DAVISのKEY PENDANT。私の大好きなブランドのお返しに、雅夢はとても喜んでくれた。 KEYを選んだのは、再度この世に生まれ出たら、もう一度彼に出会って、私の心の鍵を開いて欲しいから。そんな乙女みたいな願いを込めたんだ。同時に買ったロックモチーフは、自分の携帯電話に付けている。 瞼を閉じても眠気が襲ってこない。「駄目だ~!眠れない~!」目が冴えちゃって、眠りたいのに寝付けない。仕方なくベットから抜け出して、睡眠薬を飲みにキッチンに向かった。 薬を前に溜息。「睡眠薬、あんまり飲みたくないな」薬が大嫌い。雅夢は治療薬すら飲みたがらない私に、口に水と薬を含んで強引に飲ませた。彼が仙台に向かう前日、私は彼に、酷すぎる醜態を曝してしまったんだよね。手にした錠剤を見てその出来事を想い出す。 「駄目じゃん、美香。ちゃんと薬飲め!飲まないとマジ怒るぞ!」 「やだ~!飲みたくない!副作用で吐き気が強くなるんだもん!」駄々を捏ねても、彼は許してくれない。困り果てた雅夢が考え付いたのが、口移し。 少し怖い顔をして、彼が用意した水と三種類の薬を口に含んだ。何をするのかと唖然とする私に、強引に両頬を挟み込んで薬を飲ませたんだ。 された時は、とにかくびっくりして、身体が硬直してしまった!嚥下したのを確認して、君はすまなそうに口を開いた。 「美香、ごめん。でもこうでもしないと、薬飲まないだろ?頼むよ。俺の為に苦しくても飲んで!」 懇願する表情に、胸に棘が刺さったような痛みを感じた。「苦しいんだよ?猛烈な吐き気。君に解る?」泣き言を言う私の背中を優しく擦って、ぎゅっと抱き締めてくれるのに、どうしようもなく感情が抑えられなかったよ。ただ、正直な気持ちをぶつけたかったんだ。 「解るよ、美香が苦しいなんて。ごめんな?でも一日でも長く、俺の側に元気で居て欲しいんだぞ?それって俺の我儘なのか?お前は俺の為に生きてくれないの?」 見つめる瞳には、見守る側の苦悩が垣間見えるよう。「ごめん、でも苦しいの!この薬、嫌いっ!!」彼を突き飛ばして、持っていた薬を奪い、壁に薬を投げつけるっ!! 「なんで?なんで、私ががんにならなきゃいけないの!?仕事も軌道に乗っていたのにっ!!まだまだやりたいこと、たくさんあったのにっ!!」 とにかく無性に悔しくて、しゃがみ込んで、子どものように大声を出して泣いた。背中に触れられる手が、そっと宥めるように撫でてくれる、優しい彼。我儘だって解ってても、言いたかった。「健康体の君には、病に苦しむ患者の気持ちなんて解る筈ないっ!!」少しの沈黙の後、 「美香。ごめん。苦しいよな。でも見てる俺も苦しいんだ。お前の痛みが解らなくて。泣いていいよ、思いっきり。あんまり吐き気辛いようなら、主治医と相談して薬変更してもらおう?次の診察、俺もついて行くからさ。美香が言えないなら俺が先生に言ってやるよ!」 泣きじゃくったままの私。その後、雅夢は黙ったまま気持ちが落ちつくまで、背中に手を添えてくれていたんだよね。ひとしきり泣いたら、彼に対する罪悪感と、申し訳なさで一杯になっちゃったんだ。でも、彼は優しく微笑んで、背中を抱き締めてくれた。馬鹿だな、私。 「ごめんね、雅夢。これからは、ちゃんと一人で薬飲むからね」心配させちゃいけないよ、一番好きな人なんだから。「美香、頑張れ!」自分に叱咤。 やっぱり睡眠薬飲むの、止めよう。彼のこと考えていたら、眠れるような気がしてきたよ。胸のネックレスに手を当てて、離れてる愛おしい彼を深く想う。 実家のベットで寝転びながら、彼女を想う。薬、飲んだかな?常に気になるのはそこのところ。一緒に時間を共にするようになって、見た目通り、結構頑固で気が強いと解った。 気が強く聡明な女は俺好み。落とした後、とたんに甘ったれになるから。美香もかなりのツンデレ系。店で振舞う様子と、プライベートで見せる表情全く違う。それが彼女の魅力でもあり、俺の独占欲を更に駆り立てるんだ。 最終的に、俺は美香とどうしたいんだろう?結婚?おいおい、俺、まだ24だぜ?でもそれが、彼女にとっての希望になるとしたら?美香はどうしたいんだろう。 ただ、このままの関係でいたいのも本音。きっとまだ自分には、誰かを一生涯支える位の、覚悟など無い気がする。ずるいな、俺って。 人から奪うだけで、何かを与える側にまだなれないんだろうか。男なのに。 「亡くなった親父にどつかれそうだな。こんな事想ってたら」小さく苦笑。するとドアをノックする音に気がつき、「あー?何?」そっけない返事を返す。 「何じゃないわよ!久しぶりに帰ってきたと思ったら、葬儀の後、さっさと部屋に籠るんだもの!全く!馬鹿息子っ!!アンタ、東京で真面目に働いてるんでしょうね?」 「やってるよ!これでも。なんか用?眠いんだけど」お袋に背中を向ける。 「雅夢。久しぶりなんだから、お酒でも付き合いなさい!お父さんの代わりに」 「んー?」軽く返事をして「しょーがねーなー」と言いつつ起き上がった。親父が亡くなって、姉貴も結婚して家に居ないんだもん、仕方ねーかと思う。階下に降りると和室には、親父の使っていた焼酎グラスと、二階堂が和卓に置いてあった。 「なに?俺とそんなに飲みたかった訳?お袋?」座りながらの問いに嬉しそうに笑う。 「当たり前でしょ!お酒一緒に飲む相手亡くしてるのよ?かーさんも寂しいのよ~!あーあ!旦那に先立たれ、未亡人の私って切ないわ~!」 「その割には楽しそうですけど?」ちょっと皮肉。軽く睨みつけるお袋を見て、肩を竦めてごめんの仕草。脳梗塞で倒れた親父を、俺と姉貴の手を一切借りず、半身不随になった、親父の介護をやり切った女。それが俺の母親だ。 さすがに歳は取ったけど、いつも楽天的で、物事にくよくよしない。こんな母親だったからこそ、親父も最後まで、安心して身を任せていたんだろう。な、美香?俺はこのお袋みたいに、君を最後まで支えられるんだろうか?ぼんやり考えていたら、心を見透かしたように笑いかけるお袋。 「雅夢、アンタ、好きな人出来たでしょ?以前より精悍な顔してるわ!男はね、護りたい相手が出来ると凄く良い表情になる。人生経験長いんだからね、解っちゃうのよ!」 「うえーっ!!マジですかっ!!」そう、お袋には隠せない。どんな出来事も。思わず苦笑。 「話してみな!どんな人なの?」 親父のグラスに二階堂を注ぎながら、視線をグラスに向けて静かに話しかけてくる。 「ん・・・いい女だよ。年齢は上だけど。人材派遣会社の女社長だった人」 「あらま~!アンタ逆玉の輿??やるわね~!」 なんで、そんな言葉知っているんだって、突っ込みを入れたくなったぜ!(>д<;) 「でも、彼女スキルス性のがんなんだ。今は元気だけど、治療の為に仕事も辞めて自宅療養に専念してる」俺の言葉に、お袋は少し顔を上げてじっと見つめ返す。その瞳は少し悲しげで微かに狼狽していた。 オンナ心 恋人へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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