|
カテゴリ:オンナ心
「よかったのに、ごめんね、払わせちゃって。ありがと、ご馳走様でした」
「気にすんなよ。俺だって男なんだぜ?ホストの時には客に払わせても、プライベートで付き合ってる女に、金払わせたりなんてしないさ。男の甲斐性見せないとな!」 「そういう、男気のある雅夢って好きだよ!益々惚れちゃいそう」もうベタ惚れだけど。手を繋ぐ私達。時折微笑みを交し合いながら、新丸ビル内を歩く。 「ね?君は何でホストになったの?その動機、知りたいな~!」 「話してもいいけど、多分美香に凄く呆れられそう。それでも聞きたい?」 「聞きたい」呆れる?はて?そんなに変な動機なのかな。ちょっとドキドキしちゃう! 「金が欲しかったっていうのはもちろんなんだけど、ホストになれば、いろんな女とヤれるかなって想ったの。そしたらこの世界違うんだもん~!」+゚(。pдq)+゚。エグッ... (゚д゚屮)屮「はぁっ!!それが動機なのっ!!」ぽかんと口を開けて彼を見るっ!! 「そっ!それが動機。俺さ、男子校だったから、女との接触なくてさ。東京出て来るまで、女と付き合ったことすらなかったんだよ。男ばっかのところにいたから、こうっムラムラっとしても抜けないわけよっ!!性少年なのに~!」゚。・゚ヾ(゚`ェ´゚)ノ。゚・。 「なんて子だ~!ひどーい動機ね~!ま、ある意味、本能に忠実ってことか」雅夢が笑ロい訳、何となく納得。「で、ホストになってみたら違ったわけね」 「ん。客に手を出しちゃ駄目って言われて、期待してたから超がっくりした。しょうがないから、そこらにいる軽そうな女をナンパして、酒飲ませて寝てるうちにヤっちゃった。それが初」 (>д<;) 「なんて悲惨な初体験!可哀想~!雅夢~!」 「悲惨とか言うなよ~!マジ凹むから~!ま、ホストやってるうちに、金持ちの女とか見抜けるようになって、スポーツジム行ってはナンパしてさ、金持ち女にヤらせてもらってたの。っつーか、美香っ!!思いっきり軽蔑の視線なんですけどっ!!」Σ(゚Д゚ノ)ノ 「当たり前だっ!!女子をなんだと想ってるっ!!それにヤらせてとか言うの、やーなかんじー」 彼の手を離し立ち止まってむくれる!ううん!本当は嫉妬してるだけ。君に抱かれてきた女達に。 「美香~!もうしてないから、過去だから、なっ?今はお前だけだよ!そんなに恐い顔すんなよ~!美香にはぜってー、ヤらせてなんて言わないぞ?抱かせてって言う。お前は特別だから」 あーあ!拗ねちゃって。でも可愛い。なんだかたまらなくなって、人が行き交うフロアで強引にキスを奪う。しかも前戯のように舌を絡ませたキス。憶えとけ、美香。お前が特別な女だから、人前でだってこんなキス出来ちゃうんだぜ。 いきなりそんな行動をとらないでよ!溶けちゃいそうだから。甘いキスは女のハートを、チョコレートみたいに溶かしちゃうんだよ!首に手を回し自らも彼を求めた。周りの喧騒も耳に入らないくらい、夢中にさせて・・・雅夢・・・ 結局俺と彼女は、新丸ビルの、ショッピングゾーンを二時間ほどうろうろした後、地下一階の成城石井で白ワインとロゼを買って、彼女のマンションに帰った。 ジネステ ボルドー ブランとテロワール・デュ・ヴァール ロゼ。白は彼女が選び、ロゼは鮮やかなローズピンク色が、グロス掛かった美香の口紅の色みたいで、俺が気に入って選んだ。 二人でシャワーを浴びている間に、寝室に持ち込んでいた氷のたっぷり入ったワインクーラー。それに入れておいた二本のワインは、気持ちいいくらいキンキンに冷えていた。 「どっちから飲む?」ワイングラスを持ったまま、ベットに腰を下ろした彼女に問い掛ける。 「君が選んでくれたから、ロゼがいいな!綺麗な色ね」 「うん。ローズピンクって美香に似合う。大人の女に似合う色だよな」ワインを取り出し、用意しておいたソムリエナイフで、コルクを引き上げた。 「上手だね、さすが職業柄、慣れていらっしゃいますわね」 「当然です。美香さん。貴女との接客で、鍛えられましたからね」まるで客とホストの会話のよう。ニコニコと微笑み、二つのグラスをサイドテーブルに置く。 黒のスリップに身を包んだ、肌が艶かしい。ドキドキするけど、まだ手出しはしない。「そういう下着もセクシーだよね。つーか、美香、下着黒が多いの?」 「そ!黒が好きだから」話しながら、彼が入れてくれるロゼ。ワイングラスに注がれる、ローズピンクに見惚れる私。 君が選んでくれたロゼ。これを飲んだら、セクシーな気分になっちゃうんだろうな。 そしたらまた、さっきみたいなキスしてね、雅夢。 瓶をクーラーに戻したのを確認して、彼にグラスを手渡し、私も手に取った。 「再び乾杯」「乾杯、美香」 ウインクする年下君。クールな顔立ちなのに、甘えん坊でやきもち焼き。でも男らしい部分もある優しい君。もうメロメロなんだから。ロゼを口に含みながら想う。 「ね、雅夢。最近私が、携帯にダウンロードした曲ってなーんだ?」言葉に思案顔。 「なんだろ?バラード系?」 「うーん、歌詞はそんな感じ、でも曲は違うかな。最近終わった、ドラマのエンディングで流れてたよ」再び考え込む君。気がつくかな?想い出の曲だよ。 「えー!判んないよ降参!教えて!」「早っ!!」(>д<;) ちょっと苦笑。 グラスを彼に渡し、サイドテーブルに置いてあった携帯電話を手に取った。ライブラリの中から、アルバム一覧を選択し決定ボタンを押す。今の自分の心境に一番合っている曲を、君に聞かせたい。 イントロでどうやらすぐに解ったみたい。雅夢が微笑む。 「GReeeeNのキセキだ!ROOKIESのエンディングじゃん!俺、この曲大好きなんだよね!」 屈託のない表情をして、微笑を浮かべる大好きな人。彼は曲に合わせて歌い出す。この曲を好きになったのは歌詞も素敵だけど、何よりボーカルの歌声が雅夢とそっくりだから。 そして一番の想い出の曲だって、君も知ってるよね?歌の上手な彼。初めて会った時、超ブルーで「Blue moon」を訪れた私に笑顔になって欲しいと、立ち上がって顔を見つめたまま、アカペラで歌ってくれたキセキ。 彼の歌声にホスト達も、周りの客達も手拍子を送ってくれていたんだよね。私、もうたまらなくなっちゃって歌を聴きながら、ずっとハンカチで顔を覆ってたんだ。きっとこの瞬間から、彼に恋をしてしまったんだろうな。 美香、潤目になってる。歌いながら、俺は持っていたグラスを置いて、彼女の肩を抱く。憶えてるよ、俺だって。初めて出会った時の、落ち込んでた美香に向けたエールだったんだから。 高校まで野球をやってた俺。後輩の喫煙と暴力沙汰を高校総連に誰かがリークし、甲子園出場が決まっていたにも関わらず、出場辞退になった。それが高校三年の夏。部員みんなで悔し涙を流した苦い想い出。 悔しくて悔しくて、どこにもぶつけられない憤りを、髪を茶髪にし素行を悪くすることで、憂さをはらしていたんだ。ぐれるっていっても、万引きや暴力沙汰は起こさなかった。親父の介護をしてる、母親を悲しませたくはなかったからだ。 ROOKIESは、どこか過去の自身に重なる部分があって、DVDに焼いて毎回ドラマを見ていた。そのエンディングで流れていたのが、GReeeeNのキセキ。 キセキ歌詞 好きな歌が美香に元気を与えられたなら、こんなに嬉しいことはないよ。肩に頭を預けて甘える彼女。こんな時間がずっと続けばいいのにな。 「あのね、この歌、私の人生最後のラストソングにする。葬儀は密葬でやってほしいんだ。なんでかっていうと、今までにない楽しいセレモニーにするからだよ!」 「お葬式って暗い感じがするの。私はそんなの嫌!明るく見送ってほしいんだもん、バイバイって」 「はぁ、美香らしいね。でもそんな葬式ありかよ?」 「なければ自分で演出するもん!その後の私の想い出話は「Blue moon」でやってよね!当然貸切で」 「君が望むなら。美香、本当に真里菜さんに言わなくていいのか?彼女きっと傷つくぞ?」 「だから言えないし言わないんだよ。優しい子だからさ、自分のことのように受け止めちゃうんだよ。泣かせたくないんだ。真里菜には笑っていてほしい」 「お前は自分も大変なのに、人を気遣うんだから。もっと我儘言っていいんだぞ?」肩から頭を離し、思案する顔をして軽く俯く。 オンナ心 仕草へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[オンナ心] カテゴリの最新記事
|