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五月のGWは美香の提案で、彼女の所有するという草津の温泉付きマンションで、家族水入らずの時を過ごした。
初めて顔をあわせたお袋と美香の親父さんは、最初こそ互いに探りあうようにしていたけれど、双方酒が好きという共通点を知ると、一気に距離が縮まったみたいだった。俺達が就寝した後も、二人でちびりちびりと日本酒を引っ掛けながら、互いの身の上話に華を咲かせていたようだ。 ま、似たような境遇って部分も多かったんだろうな。久しぶりにお袋も、過去の心の内を吐き出せたんだろう。美香と親父さんにマジで感謝!ありがとな、美香、そしてお親父さん。 個人的にめちゃ会うのが楽しみだった、美香の弟の慶介さん。ふくよかだったというお袋さんに似ている為か、背丈は181センチの大柄という事もあり、存在感は想像以上ヮ(゚д゚)ォ! 酒は飲めないけれど、美味しいスイーツにはめちゃ詳しくて、もっと早く出会えていたらホストの仕事の役に立っていたかも?なんて密かに思っちゃったよ。 酒飲まないのに、テンション高い彼。美香もそうだよね?どんな時でも、周りを笑顔にさせようとおどけてみせる。その辺は、血の繋がりのある姉弟なんだなって感じたよ!きっと美香のお袋さんは、太陽のように明るいお母さんだったんだろうな! ただ、皆を駅に見送った帰りの車中、余程疲れていたんだろう、助手席のイスを倒して、自宅マンションに着くまでぐっすりと寝入っていた。正直そんな姿を見る度、しんどいのに無理して過ごしているんじゃないか?って不安になるんだよ。心配をよそに、規則正しい寝息を立ててすやすや眠っていた。 マンション駐車場について、彼女の髪を撫でて起こすと、貧血の為か、幾分青白い顔をしながらも薄く微笑んだ。 「着いたよ、大丈夫か?美香」 「ん・・・ありがと・・・。久しぶりにみんなの元気な姿見たら、まだ頑張れるって希望が持てたんだ」 疲れた顔を隠すように、目を擦りながら作り笑いを投げかける表情。抑えていたほんの微かな苛立ちが一瞬疼き出す! 視線を逸らし、見えないところでぐっと右拳を握り、辛うじて押し寄せた波を止めた。 言葉に出してしまえば、深く彼女を傷つける。美香だって、俺を心配させないように、内に抱える不安、葛藤、苦悶なんて様々な感情を押し殺しているのにな。そう、十分過ぎるくらい解っているのに! 『美香、俺だって、職業柄女ってものを見てきたんだぞ?本当に苦しい時には強がらないで、頑張れないって言って欲しいんだよ!頼ってくれないとさ、俺ってお前にとって、苦しみすら分かち合えない男みたいでめちゃ情けねーよっ!!』 吐き出せない想いを頭の中で考えながら車のエンジンを切り、素早く運転席から降りて、寝起きでぼーっとしたままの美香が、車から降りるのに手を貸そうと腕を伸ばす。それに気がつきながら、彼女は微かな声で呟いた。 「雅夢・・」 「ん?・・」 「怒ってる・・ね・・」 「怒ってないよ、ほら、手を出せよ」 極力感情を抑えた声で応じたつもりだったんだ。でも美香は、差し出した手に一瞥もくれず 「ありがと・・でも、一人で立てるから」 視線を合わさずに言うと、ふらついた身体にも関わらず、自らの力で助手席から降り、体を支えようとする俺の腕を、ぎこちなく微笑むも首を左右に振って明確に拒絶した。 「なぁ美香、お前こそ何でそんなに強がるの?大丈夫じゃないのに、何故平気って答えるんだよ?」 拒否された悔しさで、つい口に出してしまった言葉に反応し、彼女は前髪をかき上げ微かな苦笑いの表情。 「だって・・雅夢は優しいからさ、弱い私はその優しさに縋りつきたくなっちゃう。甘えると、とことんまで付き合わせてしまいそうな自分が悔しいし情け無いの。ほんとに辛い時以外は、自分の力で凌がなくちゃならないじゃない」 俯いたまま掠れた声でそれだけ言うと、小さくため息を一つつき、ゆっくりとした足取りで歩き出した。 少しずつ遠ざかる背中を、そのまま見送る事など出来るわけないだろっ!!小さく舌打ちをして「待てよ美香っ!!」その大きな声に驚いたのか、少し慌てた様子で振り返る! 「じゃ、何で俺なんだよっ!!美香が俺を選んだから、いいって想ってくれたから、体を預けてくれたんだろっ!?」 「ちょっ、雅夢っ!!こんなところでっ!!」慌てる静止の声もシカトし、構わず続けてでっけー声を張り上げる! 「甘えられないなら、好きな女の為に何かしてやりたいって気持ちだけでも、黙って受け入れろよっ!!美香の方が分別のあるオトナなんだろっ!?」 精一杯の言葉なんだぞ?だってこれ以上、他に何を言えるんだよ? プライドは山のように高く、従属しないこの女にさ、俺の言葉にだけはYESって言って欲しいんだよ! 「雅・・夢・・・」 「いいか、美香!お前より年下でも、学歴下でも、一応男なんだからな!馬鹿でも力はあるし、人を護る覚悟だってあるんだぞ?頼むから・・頼む・・・から・さ・・意地張るなよ・・」 「ちくしょう・・・」また泣き虫男になっちまったじゃねーかよっ!!この先の言葉が声にならない。ぼやけた視線には彼女。哀しい眼をしたまま歩み寄って来て、その体にしがみつき、感情の波が引くまで声を押し殺して泣いた。二十歳を超えてのマジ泣きなんて、情けなくってカッコ悪りぃけど、みっとも無い姿を曝け出したって構わなかった。 そうする事で美香が、これまで以上に全てを俺に預けていいと想ってくれたなら。今はそれだけを願っているんだから。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 素直って難しい この日のブログの更新を互いにしなかったのは、自分達だけにしか解らない事情があった為だけじゃない。時間を置いて、心が穏やかな時に更新したかったからだよね?改めて振り返ると、実は君の事知らない部分も多いよね。 雅夢、本当にごめん。裏切られる経験の方が多いんだもん、素直になれって言われても、簡単にはいかない。だけど涙を流す君を見て、もう一度ピュアな気持ちで向き合えたなら、信じられたならいい。きっと芯の部分は私は臆病者なんだよ。 「素直じゃないし強情」極親しい人が私を語ると、この言葉がまず浮かぶんだって!(>д<;) しょうがないじゃない、素直になりたくても出来なかったんだから。 雅夢にだけは、親しい人ですら知らない素の自分を出していいの? 呆れられちゃうよ?きっと!(´ω`ι) それでもいいのなら・・・作り物でもなく素の私でいきたいな。 しっかり体を整えないといけないね。今の私は体もメンタルもボロボロで、君の気持ちを、想い遣ってあげられるほど優しさも強さも無い。それでもいい? 美香 「当たり前だろ」声に出して呟く。短い日記に彼女の返事。仕事の合間に携帯から美香のブログを確認して、深く溜息をついた。喧嘩した日や口に出せないもどかしい想いを、こうやって伝えてくる。俺より大人なんだけど、マジ不器用で頑固者。(>д<;) ま、そこが可愛い部分でもあるんだけどな!(´∀`*))ァ'`,、自分が惚れた女だもん、欠点でさえ新たな魅力に感じてしまう。泣いた昨日なんてどこえやら。なんつーか、俺って楽天家だよな~! 横目でちらりと美香の親父さんを盗み見て、彼女の頑固さは、この人のDNAなんだろうと確信!(´ω`ι) 「おい、おめー、美香とはうまくやってんのか?」 「はっ!?あっ・・まぁ・・」視線に気がついていたのかよっ!!(>д<;)唐突に話を振られて一瞬たじろいだ。「ふん、あいつは強情だからな、おめーも手を焼くぞ。ま、根気よく付き合ってやれ」 「はっはぁ、頑張ります」これが義父となった、親父さんとの日常会話だったりする。極少ない言葉で励ましてくれたり、気にかけてくれたりで、ささくれ立った気持ちを穏やかにさせてくれる大人だ。親父さんのところで働く許可を得て「多くの人に会いたい」という美香の願いを出来る限り叶えたくて、新米にも拘らず、日曜休日は仕事に入れないという、一方的な我儘を押し通している日常。 さすがの親父さんも無茶な要求に苦笑していたが、俺の知らないところで、先輩大工に家庭の事情を伝えてくれていたらしく、作業が長引きそうな時は新人という理由をつけ、先に帰らせてもらえるような状況を作ってくれていた。 美香は早く帰ってくると、心底幸せそうな表情で微笑をくれる。 どんなにくたくたでも、俺にとってたったそれだけの瞬間が、すげー元気になったりでさ。二人で肩を並べて、前もって決めておいた晩飯を共に作るんだ。 そして、作っている間や食事中の会話の中で、美香にはその日に起こった些細な出来事でも報告するようにしていた。慣れない仕事と上下の人間関係に戸惑いもあるし、彼女はパートナーである以上に、人を見てきた優れた経営者だからな。 俺に自分の経験を語る事で、自らの軌跡を残そうとしているんだろう。毎度瞳を見つめたまま話にじっと耳を傾け話終えた後、暫しの沈黙ののち、ゆっくりと口を開く。 「苦言や注意って、聞きたくないって思うのが当たり前だけど、自身をもっと上に向かわせる為の天の声として捉えれば、不思議と素直に受け止められるよね」 「失敗もいっぱい経験しないと、人の苦しさや辛さを受け入れる大人になれないから、スタイルに拘ったままじゃ深い生き方できないよ。過去の私がそうだった」 「ふーん・・美香も色々あったんだ」 「当たり前よ、それなりの年齢重ねているし、社会に出ていろんな人間見てきているんだもの」そう言う彼女は、過去を思い出したのか肩を竦めて苦笑いをした。もっと深く知りたいって想う一方で、知られたくない部分もあるんだろう。どこか謎めいていて、そこに強く惹きつけられている俺。 「雅夢っ!!おめぇいつまで携帯手にしてんだっ!!とっとと仕事に戻りやがれっ!!」親父さんの声に我に返ったっ!!「いけねっ!!すいませんっ!!すぐ行きますっ!!」お茶の時間に、美香の事を考えているとつい時間を忘れがち。先輩には「美人嫁をもらったから心配でたまらないんだろ~!」なんてからかわれる始末。 心配っていったらいろんな意味で心配だし、不安だし、心が落ち着かないのも本当。けどこいつに付き合うって決めた以上、もう迷いはなかった。 「おっしゃっ!!行きますかっ!!」作業着の胸ポケットに携帯をしまって、自分に活!俺が頑張っていれば、美香だって必ず元気になれるさ!大切なのは希望を持つこと。ただそれだけなんだから。 オンナ心 不穏へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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