Lake Moraine ～Book Cafe~

[ストーリー]
やってきたのは愉快な神様たち！
「憑神」は、しがない下級武士が三人の災いの神に取り憑かれ奮闘する物語。ささやかな出世を祈ったはずが、祈る稲荷を間違えた。やって来たのはなんと、貧 乏神・疫病神・死神という三人の災いの神。階級制度にがんじがらめに縛られた武家社会。婿に入った家から「用済みの種馬」と追い出され、八方塞がりの毎日を無為に過ごしていた男が、突然の災難に翻弄される中で、自分の人生の意義について次第に目覚めていく…。

話題作だったので　原作を読むのをがまんして先にDVDを
見たんですが　正直　出だしは　う～ん　と
主役の妻夫木君があまりさえないというかかみあわない感じで

まあ下級武士の次男坊で婿入りしたのに離縁されて兄の所に
居候とさえない役どころではあるのですが、貧乏神・疫病神と
災難に翻弄されても、どうも我が身にふりかかっているように
考えていないような　家族の心配はするのですが
もう少しコミカルにあわてふためく姿を予想していました。


なじみの蕎麦屋さんby香川照之氏のすすめによって
向島の三囲(みめぐり)稲荷にお参りにむかう彦四郎
うっかりさびれた祠をみつけ勘違いして手を合わせたのが
三巡(みめぐり)稲荷でした。

”みめぐり”　すなわち三つの災いがやってくきますが
第一陣は西田敏行氏扮する福の神じゃなくって
　　　　　　　(素で入力してしまいました)
呉服問屋を名のる伊勢屋
貧乏神　なのに　まるで布袋さんのような　恰幅の良さで
おまけに　これから貧乏になるんだから　楽しみましょうって
芸者さん呼んでお座敷でどんちゃん騒ぎ　ここは笑えるんですが
やっぱり　なにかかみあわない

第二陣は赤井英和氏扮する相撲取り九頭龍
疫病神ですが　疫病神を思い描くのはとうてい無理そうな
立派な体躯を持ってます。相撲取りにみえないんですが
ここでも　疫病神のせいで病で伏している彦四郎を
尻目にいつのまにやら宴会です。
　神様って宴会好き？
ここはもう佐々木蔵之介氏が奮闘して　彦四郎の兄　左兵衛を
演じています。悪い人じゃないんですがやっぱり穀潰しの
部類じゃないかという人物像で
もうおかしいやらあきれるやらここは絶賛でした。

この頃になると　感じていたかみ合わないものというのが
なんだかわかってきました。
彦四郎って家族や廻りに対してとても思いやり深く優しいのですが
自分のことに対してはあまり思い入れがないようで
自分ひとりで災いをのみこめるならそれでいいと考えているのみ。

ただ、いかんせん家族や知り合いにまで不幸が及んでしまうから
それを防ぐために奔走しているだけ　だからコミカルじゃない

それが　真打ち　死神登場で　徐々に自分にふりかかってきたことと
自分の生きて行く様がシンクロしてきます。

死神こと幼い女の子　おつやを演じるは森迫永依ちゃん(実写版ちびまるこちゃん)
彼女もすごいです。幼くてくったくがなさそうで、死神というか子供の酷薄さもしっかり
だして　でも恋する女心も愛らしく表現していました。

そして彦四郎も　自分のことを真摯に考えていく
死神である　彼女に怯えるのではなく　自分が見たままの幼子として
自分がおもうままに接していきます。

三巡り　災厄に見舞われても　最後の一歩は自分がきめること
神様にできることと　人間にしかできないこと
それに気がついて　おつやとたわむれる　彦四郎の凛々しい姿

妻夫木君　じっと受ける演技に徹して存在感が薄かったのが
じょじょに輝いていくのがさすがです。

すっごく面白い作品とは思えませんが、含んでいるものは
いろいろと大きくて　幕末の江戸って　ほとんど蚊帳の外
っていわれると　そうなんだと　自分が全然知らないことを
思い知らされました。

きっと原作は　もっと面白いのでしょう。
読まなきゃ！