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カテゴリ:本の感想 作家別-か行
川上弘美作 「古道具 中野商店」を読みました。
川上作品で一番最初に読んだのが wowwowで小泉今日子主演 柄本明競演のドラマにもなった 「センセイの鞄」 こちらで二作目となります。 とりとめてすごいことが起きるわけでもなく なんとなく"へん"な人たちの出来事が 独特のリズムで とつとつと語られます。 各章が11章にわかれ タイトルは その章で 登場する 文房具だったり 古道具の名があてられていますが これもとりとめのないままに 次の章へと移り 骨董ではない古道具屋の イ・ロ・ハを なんとな~く垣間みた気分にさせてくれました。 でも ぐいぐいとひきこまれていくというか 読むのにあきたりしない 不可思議な魅力のある作品でした。 川上さんの感情の表現の豊かさには感服でした。 例えば 同僚のタケオと 同僚以上 恋人未満というか 仲違いのようなもやもやした 緊張感をはらんだ状態にある「わたし」が 店主の姉のマサヨさん(とっても魅力的な女性)と話していて 年をとると言い争いひとつでも、 もしかしたらその言い争いを最後に 相手が先に死んでしまうこともあると考えてしまって きつい一言を言うこともためらわれてしまうという話を聞いて ありもしないはずなのに 万一のことがあったらと いてもたってもいられなくなり タケオに会いにいく場面から ~引用~ 「死んでませんように」の間に、ときおりぽつんと 「死んでたらどうする」という思いもうかんでくる。 それは「死んでいるわけないじゃん」と 対になっている思いだが、 死んでいるわけない、の中に、 万一死んでいるとしたら、もしかして、 すごく、すごく、ほっとするかも、という、 針の先でつついたほどの微細な思いがある ~ こんなふうに心の正直な揺り返しを 目の前にさらされたら にやり としてしまいます。 東京近郊の小さな古道具屋でアルバイトをする「わたし」。ダメ男感漂う店主・中野さん。きりっと女っぷりのいい姉マサヨさん。わたしと恋仲であるようなないような、むっつり屋のタケオ。どこかあやしい常連たち…。不器用でスケール小さく、けれど懐の深い人々と、なつかしくもチープな品々。中野商店を舞台に繰り広げられるなんともじれったい恋と世代をこえた友情を描く傑作長編。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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