大宇宙ファンタジア☆世界樹☆その17
大宇宙ファンタジア☆世界樹☆その17 …あははは。あたしの知った予定では、ガガーリンなんだけど… 「へーえ、どっちが当たるか賭けようか?」 …賭けてどうするの?… 「負けた方が名前を変えさせるんだよ」 …えっ ? ? … 「つまり、ぼくが負けたら、ガガーリンさんの名前を、マーガリンって変えさせるんだ」 …あははは。そしたら、今度はあたしの負けになるから、あたしが、ガガーリンって変えさせることになるわね… 「あはは。そうなるね。それが永遠に繰り返されるんだ」 …あははは。賭けるのやめとくわ。あたし、そんなおもしろいことするようなヒマジンじゃないから… 「あははは」と、天空ボーイは愉快そうに笑った。 さて、地球はミドリかった、になったところであった。 …それでね、光合成バクテリアのおかげで、大気中の酸素がますます増えていくのよ。そして、二酸化炭素はへっていくの。未来の生物世界のための準備でもあるのよ… 「うん、わかるよ。おもしろくなってきたね」 …ほら、見て。知性体が、酸素なし呼吸バクテリアに、より小さい酸素呼吸バクテリアを入れているわよ… 「あっ、ほんとだ。でも、何のためにあんなことするの?」 …見ててごらんなさい、今にわかるから。 ほら、知性体が、その入れた酸素呼吸バクテリアを、ミトコンドリアという酸素呼吸エネルギー発生器官に進化させているわ。 ミトコンドリアって、酸素呼吸で大きな活動エネルギーを発生させるのよ… 「ふーん。たぶん、活発に活動できるようにするためなんだろうね」 …そうよ。よくわかったわね… …ここで、知性体が、 「できたぞ、しめしめ。ミトコンドリアちゃん、かわいいな、ちゅっ」 と言ってミトコンドリアにキスした。さらに、 「がんばれ、ぼくらのミトコンドリア。 これで、バクテリアちゃんの活動力が大きくなるぞっ」 と言って、満足げな顔をする。 そのようすを見ていた天空のふたりは、くすくすと笑い始めた。 すると、まだ生まれていない国立大学の文法学者が現れて、 …知性体よ、ぼくら、は複数だよーん。ほかにだれがいるのさ?… とのたまう。 知性体は応ずる。 「われは、ひとつにして数多く、数多くしてひとつなり。 これぞ、未来の孫悟空の一身多身、多身一身の術なり。ええいっ。 さらには、天空には無数の声・存在あり。 また、バクテリアも大勢おるなり。 しかして、《ぼくら》には、未来のすべての生物たちをも含むのである。 いかがでござるか、未生文法学者さん。メチャクチャ論理に理路整然、アホダラ理屈に筋道明快、がってんしょうちか? 学者さん。ええええいっ」 とたん、いない文法学者は大きくふくれあがって、はじけとび、朝陽の前の霧のようにうすれ消えてはててしまった。 知性体はつぶやく。 「ありがとうです、いない学者さん。気合をかけたらストレス解消になったぜっ」 ここで、目だちたがりやの、ぶりっこミトコンドリアが言う。 「あのね、あたち、ミトコンドリアなの。あのね、ミトコンドリアはね、自分が分裂して増殖するの。そしてね、母親から、まったく同じものが子孫に受けつがれるのよ。父親はまったく関係しないの。えへへ」 ここで、遥かなる未来のウーマンリブの女性が現れてはしゃぐ。 「これでまたひとつ、女の優位が確定したわっ。あっはっは」 知性体は、にこっとして言う。 「そうなのです。しかも、人間の脳もDNAも、基本型は女性です。さらに、男というものは、単なるバクテリアの寄せ集めなんだぜっ」と知性体。 そのいないウーマンリブの女性は、にっこりと未知の花のように笑いながら虹のように広がりうすれ消えていった。 ……時が流れた…… 天空の美しい女性が地上を見ながら言う。 …ほら、見て。知性体がまた進化を進めるわ。 かれが、酸素呼吸バクテリアを、ふたつに枝分かれさせ進化させているところよ。 ひとつは、ほら、あのミトコンドリアをさらに進化させて、もっと大きな活動エネルギーを操れるタイプに進化させてるところよ… 「あー、ほんとだ。もっと活発になっていく」 …そう。ほら、あのこ、すごくよく動くようになったわね… 「うあー、すごいなあ」 …ほら、あのタイプは、将来、動物に進化させられていくのよ… 「なるほどねぇ。合理的だね」 ここにそのタイプのバクテリア代表が顔を出して、ない口で言う。 「みなさん、わたくしが、動物の祖先であります。これ以降、わたくしに足を向けて寝ると祟りますぞ」 天空のふたりは、あはは、と笑う。 …ほら、もうひとつは、ミトコンドリアをさほど進化させないで、知性体が、その細胞内の中に、もっと小さい光合成バクテリアを入れてるとこよ… 「あー、ほんとだ。でも、何のために?」 …見てて、ごらんなさい。今にわかるから。ほら、知性体が、あの光合成バクテリアを葉緑体に進化させてるわ… 「あっ、ほんとだ」 …あのタイプのこは、当然自分で栄養の一部、つまり、炭水化物を合成することができるby西山浩一(C)(春楽天・世界人)