大宇宙ファンタジア☆世界樹☆その47
大宇宙ファンタジア☆世界樹☆その47 「へーえ、おもしろいの。理屈はとおってるよ」と、ブッチ。 …あはは。よくわかるようじゃな、ブッチ。 それでじゃ、正反対の体験を、同じ量体験すれば、前の体験による変化は、消えるんじゃ… 「どうして? どうして消えるの?」と、ブッチ。 …正反対どおし、というものは、足せばゼロのような空、つまり、空っぽに隠れてしまうからじゃ… 「…わかんなーい。どうして、そうなるの?」 それは、こういうことじゃ。北に向かって十メーター歩くと、自分のいる場所が変化しておる。わかるかな? ブッチ… 「うん、わかるよ」 …そのあと、南に向かって十メーター歩くと、どうなるかな? ブッチ… 「もとの所に戻っちゃうよ。あっ、変化が消えちゃった」 …そうそう、そういうことじゃ。 さっきの袋というのは、別な言い方をすれば、相撲の土俵のようなもんじゃ。直径百メーターくらいのな… 「つまり、北に動くことがある体験で、南に動くことがその正反対の体験ってわけなんだね」 …そうそう、そうじゃ。わかりが早いのう、ゴマダラ・ブッチ…ブッチは「えへへ、ありがと、天空のおじちゃん。 それで、北にばっかし動いてたら、土俵からはみ出ちゃうってことが、袋が破れる、つまり、意識の主体が壊れるってことなんだね」 …そうじゃ、そうじゃ。 そこで、土俵からはみ出る前に南に動けば、はみ出ない、つまり、意識の主体は壊れないわけじゃ… 「つまり、南に動くことが、正反対の体験ってことなんだね」 …そのとおりじゃ。物理的にはまったく同じことなんじゃ。 つまり、北にいくらか動いたあとは、必ず南に同じだけ動いて、意識の主体が壊れないようになっておる。そういう仕組みがある、ということなんじゃ。この世界に意識がなくなってしまったら、この世界を意識する存在がいなくなる・・そうなるとこの世界はないに等しくなるから、意識の主体が壊れない仕組みがあるっていうことなんじゃ…ブッチは「それが質時間回帰なんだね」 …そうじゃ。イニシャルをとって、SJK、じゃ。科学的カルマとも言うんじゃ… すると、「やだっ、カルマってことば、ピアリー、嫌い」と、ピアリーが大きな声をあげる。 …そうじゃな、あちこちの時代・地域で嫌われるようじゃな。しかし、好きな人たちもおる。なにより、この宇宙の法則じゃから、どうしようもない。受け入れるしかないのじゃ… 「ピアリー、カルマってことばが嫌いなら、SJKって言えばいいよ」とブッチ。ピアリーは「うん。まあ、ちょっとはいいかなぁ SJK? まあいいよ」 ピアリーのそのことばにヴィジュアのあっちとこっちで笑いが起こった。 そのようすをずっと見ていて、今笑ったペンとオチャッピー娘の反応は、 「なんかごちゃごちゃしてきたけど、勉強になるだろ、オチャッピー」と、ペン、 「そうだね。ペンちゃん。でも、新しい考え方ってわかりにくいとこがあるよ」と、オチャッピー娘。ペンは「でも、真実だとしたら、勉強する方が賢明さ。ぼくなんか、天空人から、もうほとんど全部教えられちゃったんだ」 「へーえ、そうなの。で、説得力はどうだった?」と、オチャッピー娘。 「うん、ばっちりだと思った」と、ペン。 ヴィジュアライザーの場面では、今度は、その建物の内部がみえる。 「あの像、だれかなあ?」と、ピアリー。 「偉大な預言者にしてカリスマの、……あーあ、聞き取れなかった」と、ブッチ。ピアリーは「まあいいよ、ブッチ。ピアリーには、アマテラスって聞こえたけど。 ほらっ、人びとが礼拝してるよ」 「そうだね。今度はまた、人がおおいなあ。かぞえきれないや」と、ブッチ。ブリッカスが「ああいった像も人びとが欲しがるものなのよ」 「そうだね、しっかりした権威をかんじさせるからね」と、ペンも加わる。 「そして、その部族のシンボルとしての機能もあるしね」と、ブッチ。 「そうね。自分たちのシンボルも人びとが欲しがるもののひとつだわね」と、ブリッカス。 場面の位置と角度が少しずつ変化していき、ちがったものが見えてくる。 「わぁっ、壁画とか天井画、装飾なんかが美しいなあ」 と、オチャッピー娘も参加する。 「そうね。美しいものも人びとは欲しがるわけね」と、ブリッカス。 「心が求める芸術性をも満足させるしね」と、ペン。オチャッピー娘が「それに、娯楽性もあるよね」 別な角度の場面が見えてくる。 「あの音楽の演奏と歌、なかなかいいね。ピアリー、うっとりしちゃう」 と、ピアリー。 「あれも、芸術のひとつなんだね」と、ブッチ。 しかし、そういったものも、時とともに飽きられていき、人びとの心に働きかける力を失っていく・・いや、これは逆であった。人びとの心が、感じ反応する力を失っていくのである。 ここで、天空に声あり。その声が言う。 …その事実は、こうも説明されるのじゃ。それは、さきほどの質時間回帰、SJK、の法則による、とな… 「あっ、天空のおじちゃん、それ、おもしろそうな話しだね。つづけてよ」と、ブッチ。 …おう、ブッチ。興味があるか。それはつまり、こういうことじゃ。 意識の主体が、同じ体験ばかりしていると、 意識の主体につく変化が、もうそれ以上変化できないところにまで達する。 すると、もう、それによっては、心が動かされなくなってしまう。それ以上動いたら、心が、この場合、意識の主体が、壊れてしまうからじゃ… 「あー、そういうこと。よくわかるよ、といった感じだよ」と、ブッチ。 …ふむ。それで、ある場合には、そういった刺激、つまり、同じ体験が、正反対の働きを心に与えることもある。それは、苦しさとか不快になる、ということじゃが。by西山浩一(C)(春楽天・世界人)