|
全て
| 徒然奇2
| 【小説】加藤英雄無頼控え
| 【小説】但為君故(完)
| 風来坊の唄
| モリの大冒険~金曜の夜と土曜の朝~(完)
| Jeysomコーナー(旧ギャラリー)
| 【小説】風来坊旅の途中にて
| 【ドキュメント】ハムレット
| 【ドキュメント】細谷十太夫
| 【小説】加藤英雄無頼控え最終章(完)
| 実話控え
| 【小説】恋愛小説?
| 【小説】フィクションアクションハクション
| 【セミフィクション】無頼控え外伝
| 市民Ken
| 【小説】十太夫先生お日向日記
| 片岡さん
| 片岡義男北紀行(北海道2007)
| 嗚呼 先輩
| 片岡義男北紀行(北海道2009)
| 【小説】不動明王
| 【小説】鴉組
| ミステリーハンター
| ちゃーちん
| 武術
カテゴリ:【小説】風来坊旅の途中にて
今年もまた裏磐梯のペンションにお手伝いをする季節となった。
さて桧原湖という裏磐梯でいちばん大きな湖のほとりに小さなお土産屋がある。今朝ほど挨拶のためお邪魔したところ、入り口に何かがころがっていた。 一匹の魚が半分干からびた状態で落ちていた。 「もう死んでいるな」と思いそのままにしておいた。 店の主人を呼んだが返事がない。カギもかけずに外出するなんて無用心この上ない(これまで3回泥棒に入られている)。 30分も待っただろうか,帰ってくる気配がないので仕方なく出直すことにした。、入り口の干からびた魚をまたいだとき、“ピク”っと口が動いた。 まさかと思い突っついてみると、反応がある。 尾びれをつまんでみたが、体は床のコンクリにこびりついてなかなか取れない。傷つけないようにうまく拾い上げ、水槽にもどしてやると、正に「水を得た さかな」、元気に泳ぎだした。 魚の正体は“なまず”であった。 恐ろしいくらいの生命力だ。あれだけ干からびてもなお灯しつづける命の炎。俺も仕事でずいぶん干されたことがあったが、頭の下がる思いだった。 自然から学ぶべきことは多い。 水槽のガラス越しにかのなまずを覗くと、奴もこっちを見ている。ひげを優雅に動かしながら、お礼を言っているようにも見える。 「恩返しはしなくていいぞ」 と俺はそっと呟き、店を後にした。 朝一番、小さな命を救ったよろこびに、俺の心は今日の天気のように晴れ晴れとしていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|