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2006/05/19
カテゴリ：【小説】風来坊旅の途中にて
不思議な話だった。
山形県小国町付近を走っている時のことだ。地図に“極楽山”の文字を見つけ興味本位で林道にアクセスした。舗装はされているが、幅員が狭く対向車とのすれ違いは難しい。まぁ交通量も少ないのでその心配はいらない。 林道に入って３分ほど走ると横川が流れている。 「餓鬼のころこういう川でよく遊んだな」 ふと昔を思い出していた。 林道を更に進むと両脇に生い茂った草が道を覆うようになってきた。右に左に曲がりくねった峠道を注意深く進み、ようやく峠の頂上らしいところに着いた。 「どれ一服するか」と車から降り、山の空気とタバコの煙を胸いっぱいに吸い込む。 眼下に山並みが広がっている。 “分け入っても分け入っても青い山”という山頭火の唄がふと口をついて出た。そのとき背後に何かの気配を感じた。ふりかえるとそこに一人の老婆が立っていた。山菜取りの最中らしく白い手ぬぐいでほっかぶりをし、背中には竹で編んだ籠を背負い、その中にはいましがた採ってきたのだろう、山菜がしこたま入っている。 「よく来たね。待ってたよ」 「えっ？」 俺は初めて逢う老婆の口から出た意外な言葉に何か不吉な予感を覚えた。 お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
Last updated
2006/05/19 08:37:33 PM
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