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カテゴリ:【小説】風来坊旅の途中にて
隆史と砂場で童心にかえって遊んだ。老婆と隆史、この二人を結びつける糸はいまのところはない。
しかし、二人とも俺を知っている。砂山を無心に掘る隆史の顔を見ていると遠い昔の記憶がおぼろげながら甦ってくる。あれは俺が4つか5つくらいのことだったか・・・」 「だんだん夕食が出来るから、中に入って待ってて」老婆が声をかけてきた。外はいつのまにか薄暮の頃になっていた。玄関に入るとそこは土間になっていて、数足の靴やサンダルが置いてある。 「ほかにも家族がいるのか」 柱にはいまどき珍しい振り子の時計が時間を刻んでいる。右に左に規則正しく触れる振り子を見ていると、ふとこれまでの人生を振り返り、心の隙間を手で覆い隠したくなる。 テーブルの上には人数分の茶碗や箸が用意されていた。 数えてみると5人分ある。 「やはり家族がいるようだ」 トントントンというまな板の音に混ざって老婆ともうひとり女の声がする。 「聞き覚えのある声・・・」 しかしそんなはずはなかった。 「他人の空似だろう」 まもなく老婆がお盆におかずを乗せ入ってきた。 「さあ出来ましたよ。こちらにおかけください」 「うわぁ!おいしそう」隆史が声をあげる。 「隆史ちゃん、みんなが揃うまでつまみ食いしちゃ だめよ」 「はぁ~い」 「風来坊さん、さぁおかけになって。あなたはこちらの席へどうぞ」 「あっはい。どうも・・・」 「もうすぐみんな来ますからね。今日はほんとうによくお越しくださいました。ゆっくりしていってください。今日はあなたにとって“新たな旅立ちの日”なんですよ」 「旅立ち?」 年がら年中旅をしている俺にとって毎日が旅立ちの日のようなものだ。 怪訝な顔をする俺を、老婆は優しいあたたかい微笑でつつむ。 「あなたに逢わせたい人がいるの。ずっとここで待っていたのよ。あなたにとっても久しぶりの再会ね。きっと懐かしいと思うわ。」 「いったい誰なんですか?」 「あなたもよく知っている人ですよ。わたしも隆史もあなたのことはよく知っているの。もうずっと昔、 あなたがずいぶん小さい頃、よく会っていたわ」 「・・・・」 「さぁ入ってきて。風来坊さんがお待ちよ」 台所からひとりの女がすっと入ってきた。 女の顔を見て俺は思わず息を飲んだ。 「そんなはずは・・・」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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