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カテゴリ:風来坊の唄
森の中に樹齢500年のブナがある。秋になると小さな実をつけるのだが、冬眠前の熊や越冬する鳥たちにとってブナの実は来春まで命を繋ぐ大切な食料のひとつだ。
一匹の熊が太い幹に爪を立て登り始めた。この年はブナの花が不作だったので、実の出来はいまひとつのようだ。 小さな殻に入ったブナの実は、体の大きな熊にとって腹を満たすにはあまりにもささやかなご馳走だ。 一粒の実が熊の口からこぼれ、地上に落ちる。 落ち葉の下に転がり込んだブナの実は、雪の下で春を待つことになる。 翌春、ブナの実は芽吹き、二葉の若葉をつけた。 その年の夏、樹齢500年のブナが倒れ、空にぽっかり穴が開き、芽吹いたばかりのブナに光が当たるようになった。 時間は静かに緩やかに流れていった。このブナもいつのまにか森の中で一、二を争うほどの大木になっていた。 やがて世代交代の日がやって来る。大雨の日、大規模な土砂崩れがこのブナを襲う。倒れたブナは斜面を下り、増水した川の中へと消えていった。幹は下流へ流され、大きな岩に突っかかって止まった。その後数年はその岩との関係を保っていたが,再び大雨に流され旅立っていった。そんなことを何回も繰り返すうちブナはやがて里へ辿り着く。 一人の男が川岸に転がっていたこのブナに斧を入れた。冬場の牧を作るためだ。 「これだけあれば次の冬はだいぶ助かる・・・」 男は家族の待つ家へ牧を運んだ。 冬になり、男はストーブに牧をくべる。 牧に火がつき煙突から一筋の煙が天に昇っていった。 「自然の恵みは長い時間の流れの中で、生まれてくるのだ」 男は自然のことは何でも知っていた。自分もいつかは土に還り天に昇る一筋の煙になることを・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/06/07 05:14:22 PM
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