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カテゴリ:片岡さん
バッチーン
店中に鳴り響く音。俺はちんどうに思い切り殴られた 「おおっ」 「大丈夫なのか」 心配する常連さんたち 「ふ~、助かったよ」 と俺 「良かったですねえ」 微笑むちんどう 翌日・・・ 「このちんどうって奴はねえ。上司を思い切りぶん殴る奴なんですよ」 威圧系ボスと片岡さんに報告する俺 「そんな。やれっていったのはsugaさんじゃないですか」 「やれといっても何だあのうれしそうな顔は」 朝のミーティング前の煩い俺とちんどうだ この話、同じ話なのだ・・・って、分かるよな 事実確認 ちんどうは俺の部下(あまり俺は自分が上司だという自覚はないが) 場所は寿司屋でちんどうと俺は飲んでいた そしてちんどうは酔っ払って俺を“思い切り”殴った しかもそのパンチ その時居合わせた極真空手の岩手県の理事が 「良い鉤突きでしたね。脾臓打ちといって普通ならKOです」 という評価を受けたほどだ この状況を一言で言うと 「このちんどうって奴はねえ。上司を思い切りぶん殴る奴なんですよ」 となる。間違いはない 恐ろしい奴、ちんどう バルセロナは無意識に 台車を俺の急所にぶつけたり 怪我をしている部分に紙で一杯のダンボールを落としたり 果ては轢き殺そうとしたりしたが・・・ このちんどう 確信犯だ・・・ などと余り言うと可哀想なので、真実を話すと 実は俺とちんどうの俺の方の横に 仲良しの少林寺拳法の達人の先輩がいて その先輩、いつもはゴンと音がするパンチを俺の背中に喰らわせて帰るのだが その日に限って、わき腹にハッケイを使いやがった 「ぐっ、うぉおお」 静かなうねりが俺の体の中を走る。内臓がハッケイの当たった方からちんどうの方へ移動していく それとともに黒いものが俺の目を塞いでいく “いかん。失神する” じわりとくるハッケイで、じわじわと内臓を動かしているのだ 俺はマッスルコントロールで内臓を戻そうとしたがうまくいかない 黒いものが広がっていく 「ひっ、ひっ、ふーっ。ひっ、ひっ、ふーっ」 「な、何やっているんだちんどう。なぜラマーズ法を」 本当に、なぜラマーズ法を 「苦しそうですから。どうしたんですか、殴られたんですか」 「そうだ。ハッケイを喰らった。あのな・・・」 俺はちんどうの手を俺の左わき腹に置いた。右の脾臓を打たれたのだ 「ここ。ここを押してくれ」 「ひっ、ひっ、ふーっ。ひっ、ひっ、ふーっ」 ちんどうはラマーズ法をしながら俺のわき腹をさすっている 倍気持ち悪い 「ぎゃっははははははは」 常連さんたちが笑い出した その中に先の極真の理事もいる “あんたなら分かるだろう。助けろよ” 「あ、あ、あのな、ちんどう」 俺は声も出なくなった 「ひっ、ひっ、ふーっ」 “こいつ馬鹿か” 「殴れ」 「えっ、良いんですか」 「いいから殴れ」 同等の衝撃を反対から与えて内臓を戻す作戦だ。これしかない バンッ 効かない 「ひっ、ひっ、ふーっ」 こうしてちんどうのラマーズ法を聞いている内にも内臓が寄っていく 「もっと力を入れて」 「分かりました」 ほとんど左目(ちんどうの方)の端しか見えなくなっている俺 そこに見えたものは 口の端を少々上げて歯を見せながら 腰を回しコブシをスェーバックしていくちんどうの姿だった そうして・・・ 最初のシーンに行くのである 助かった俺は瞬時に正気に戻り、本当に、本当に嘘のように普通になって ちんどうと酒を飲み始めた そうして 「今日の仕事ですけどね・・・」 「ふむふむ・・・」 などと会社人っぽい話などをしていたのだが、 その時ふと目に入ったちんどうのお猪口を持っている手 拳骨の部分が真っ赤になっていた 「おいお前。コブシ真っ赤だぞ」 「あ、そうですね」 「大丈夫・・・かじゃないって。お前、思い切りやったな」 「やれって言ったのsugaさんじゃないですか」 「馬鹿。そんなにコブシを真っ赤にするくらい思い切りだったのか 思い出したけど、お前殴る前ににやけてただろう」 「にやけてませんよ」 そうして揉めている俺たちの前に徳利が置かれた 「どうもどうも。私は帰りますけど飲んで下さい」 先の極真の理事さんだ 「あれ、帰るんですか。おいちんどう、名刺名刺」 ちんどうは理事さんに名刺を渡した。そして彼の本業を知ってびっくりだ 「いやあ、いいものを見させていただきました 部下が上司を思い切り殴る場面なんて生涯のうち見れるもんじゃないですよね ありがとうございます、ちんどうさん。本当に良いものを見ました」 「そんな、恐縮です。私も人間を思い切り殴るチャンスなんて人生上中々ありませんから 思い切りやらせてもらいましたよ」 「ではお互い良い日でしたね」 「本当にそうです」 あっはははは 「い、いぃぃいいいい加減にしろ。二人ともおかしいぞ 大体先輩ならすぐ俺を助けられたはずじゃないか」 「だ、だってラマーズ法が面白すぎて」 爆笑の理事さん 「お前もお前だ。語るに落ちたな 何が“人を殴る機会なんて中々ないからこの際思い切り”だ」 「いやいやいや、そんな。でもこんな感じなんですね、人を殴るって」 「そうですよ。sugaさんじゃなきゃ危ないですよ」 あくまで穏やかににこやかな二人だ 「二人とも、何なんだ」 俺も怒り疲れたよ と、これが真相 やはり恐ろしい奴だ。可哀想と言ったのは撤回 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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