|
全て
| 徒然奇2
| 【小説】加藤英雄無頼控え
| 【小説】但為君故(完)
| 風来坊の唄
| モリの大冒険~金曜の夜と土曜の朝~(完)
| Jeysomコーナー(旧ギャラリー)
| 【小説】風来坊旅の途中にて
| 【ドキュメント】ハムレット
| 【ドキュメント】細谷十太夫
| 【小説】加藤英雄無頼控え最終章(完)
| 実話控え
| 【小説】恋愛小説?
| 【小説】フィクションアクションハクション
| 【セミフィクション】無頼控え外伝
| 市民Ken
| 【小説】十太夫先生お日向日記
| 片岡さん
| 片岡義男北紀行(北海道2007)
| 嗚呼 先輩
| 片岡義男北紀行(北海道2009)
| 【小説】不動明王
| 【小説】鴉組
| ミステリーハンター
| ちゃーちん
| 武術
カテゴリ:徒然奇2
昔大宮駅で降りることがあってホームを歩いていると
人が次々と腹をおさえたり 子供が 「痛い、殴られた」 などと言っているところに出くわした みると俺と同じ位の背丈の中年男が歩きながら周りにいる人を殴っていたのだ で、俺はというと “なんだ、刃物じゃないじゃん” 位のものでその男のほうに向かった するとその男、馬鹿だからやっぱり俺にもパンチをくれた 「ううっ」 呻いたのはそいつ、拳を押さえて蹲った 「鍵がかかっているドアを開ける」に続く秘技 「腹でコブシを殴る」だ うまくいくと相手の手首が挫ける。どうも見事に決まったようだ この技はそうしたあと「痛い痛い」と言いながら 相手の手首を捻りつつ自分の腹に何度もぶつけながら あくまで被害者という事で 地味に肘や肩を壊していくという流れになるのだが 奴はぱっと電車に飛び乗った 「仕返ししてやったからよ」 俺は俺を呆然と見上げていた子供に言った その子も事情が分かったようで喜んで 「ありがとう、おじちゃん」 と言った。 おじちゃんではなかったはずだが、ま、子供に正義というものがあると伝えられて良かった 変な奴も居たものだ、とその時思ったのだが 結構刃物でそれをやる奴がその後出てきたな そもそもちんどう この凶器のような腹に思い切りパンチをぶつけ平気だったのだから どれだけの気合で俺の腹を殴ったか分かるというものだ あいつあの後 「なぜパンチは捻ると効くんですか」 などと俺に質問をしてきた。次は捻りを入れてくる気か そもそも捻るというのは捻るタイミングが難しいのだ 正確に言うと・・・って教えてやらん 俺って、まだ根に持っているのな 俺は街で変なことに関わるのが嫌だ。単純に怖いのだ。皆もそうだと思う が、・・・ これも東京でだが、電車で酔っ払いが人に絡んでいた ふらつき歩きながら目が合う人合う人に説教めいたものを大声でしている “あちゃー、次は俺の番か” 嫌だなあ、と思っていると 避・け・ら・れ・た で、俺の横に立っていた女性に絡んでいた 俺は 「おい。何故俺を無視する」 と、その男の後ろ襟首を掴んで引き戻すと 「ここで無視されたら立場がないじゃないか。俺に何を話すのか期待していたのに」 と話しかけた。彼は中々相手の特徴を捉えつつ、今の社会を風刺しながら面白いことを言うのだ 「ちょっと皆、リングになってくれ。もしかすると危ないから」 さすが東京だ。皆慣れたものでリングを作り 腕に自慢のある男は女性を自らの後ろに置いて前へ出てくる きちんと女性を守ろうとする心構えがあるのだな、さすがだ 「そもそもだ。恥ずかしいじゃないか、無視されたら。俺はどこか変なのか 俺を無視した理由を述べよ。但し、怖かったからと言ったら引っ叩くよ」 酔っ払いオヤジは沈黙した 乗客の皆は笑っている。帰りの電車での疲れた体に効くナイスなジョーク・・・のはずだ 「あっ、私次で降りないと」 彼はそう言ったが、俺は聞いていた 「あんた次の次らしいじゃないか。でっかい声で言っていたから聞こえたよ ほれ、時間はまだあるから。まずは無視した理由だ」 「いやあ」 「じゃ、皆の前で芸をしなさい」 「えっ」 「俺を喜ばせるのだ。俺は不愉快な思いをしたのだから。歌でも良いぞ」 これじゃあ、すっかり悪人だ。いじめだよな 彼の駅に着いた 俺は 「二度と顔を見せるなよ」 と言って蹴り出した さすが東京だと書いたが 盛岡に来たばかりのときに 「東京って怖いところなんでしょう」 と何度か言われた 俺が 「盛岡の方がよほど怖いぞ。自分たちが悪いことをしているって感覚がない分」 と言うと、何を言われているのか分からない顔をしていた。この話を書くと長いので書かない 東京の電車の中で 体の弱い子を連れていたお母さんがいた 「具合悪い」 子供がそういって、うっ、うっ、と唸りだした 「我慢して。すぐ次の駅に着くから」 ここは珍しく次の駅が遠いのだ 俺はさっき買った本を入れてあった袋を取り出した。吐いたときの用心だ その親子の周りには俺をはじめ4人の男女がいた ちなみに俺も含め皆若い とうとう子供が、えーっ、となった す・る・と 俺が紙袋を 俺の前に居た女性がポケットティッシュを 俺の横に居た女性がコンビニの袋を 俺の後ろにいた男性がハンカチを 一斉に出した そうして4人でテキパキと子供を介抱し その後何事もなかったように 俺と前の女性は文庫本を 横の女性と後ろの男性は雑誌を読み始めた お母さんと子供は最寄の駅につくとお辞儀をして出て行った 俺たちも会釈を返した 俺は何か凄いプロの連中といい仕事をした後のような気分を味わった きっと彼らもそうだったに違いない お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|