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カテゴリ:【小説】鴉組
「ありがとうございます、先輩、皆」
夜明け、朝焼けの峠で、十太夫は深々と皆に頭を下げた。 「一緒に行くんでしょうよ、江戸に」 ヒロイが言った。 「そうは行きません、鴉たちが困っています。あいつらの生活をたつようにしてやらないと」 「今戻ってもまた捕まるだけですぜ」 ヒデ公が無宿人街の親分らしくなく気を揉んでいた。 「油断したよ、ヒデさん。ヒデさんの言うとおり田村三代記にあと少しだった」 「田村麻呂ですらどうしようもできねえのに、猪の字なんてのが総大将なら無理ってなもんで」 「何、俺は鴉だよ。ほら、ヒデ公も待っているし」 「だからあっしは江戸に一緒に・・・ってカラスのヒデ公ですかい」 「あっはははは」 皆、笑い出した。 「大丈夫。ここは俺の国です。もう捕まりやせんや」 「おうおうその意気でえ。格好つけるよりそっちが何ぼか良いぜえ」 ヒデ公も納得した。 「そうそう。捕まるたびに姉上が出てきますので、くれぐれも頼むよ、細谷さん」 「はい」 細谷十太夫は頭を下げた。 「ど・う・い・う・ことじゃ」 美和姉さんも本気で怒っているわけではなかった。 「あっはははは」 笑い声が木魂で残っているうちに細谷十太夫と十太夫先生一行は別れた。 細谷の十太夫はその後一度仙台に戻ったが、金を借りようと思って寄った塩蔵町の御蔵元手代安冶清太郎から 「細谷様。あなた、私を軽く見てませんか。商人にも商人道があるのです。何も言わずに受け取りなさい。ある時払いの催促なし。ある時あっても支払い不要」 と言われ、千両を借りた。 「すまねえ」 そうして受け取った金を「鴉組」の全員に分け解散させた。 「行くか、ヒデ公」 細谷十太夫はカラスのヒデ公と行方を晦まし、奥州中の町村に匿われて、数年の後戊辰戦争一切ご赦免の触れが出るまで西軍に捕まることは無かった。 人気ブログランキングへ くる天 人気ブログランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/12/30 09:33:02 AM
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