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テーマ:介護・看護・喪失(5317)
カテゴリ:グリーフケア
トマ女さんが亡くなってから、父の心の持ちようをわかっておきたいと思い、何冊か本を読んだ。勿論、私自身の気持ちを客観的に捉えておこうと思ったからでもあるが。
まずは国立がんセンター総長などを歴任された垣添忠生先生が、最愛の奥様を自宅で看取った経験を綴られた本。奥様との出会いから始まり、楽しかった結婚生活の思い出、そして奥様亡き後のさびしい日々と、遺作展を開催するなどして、一人で歩みを進める力を取り戻すまでが語られている。ドラマにもなったそうだ。 【送料無料】妻を看取る日 癌の専門医である先生が、その癌で奥様を亡くされた現実が、医師としてではなく、夫としての目線でほとんど書かれている。お正月を自宅で迎えるため、大量の在宅医療用品をそろえて病院を外泊し、帰宅当日は満足された様子の奥様だったが、翌日から病状が悪化。そして恐らく半ば予期されていたのかもしれないが、大晦日に亡くなられてしまう。そのときの様子は、こと細かに書かれているわけではないが、「ありがとう」と言ってくれたという。だが、医師としての眼で冷徹に病状を見据えて看病されたからこそ、このような死を迎えさせてあげられたとも思える。 垣添先生がすごいのは、「妻を看取る日」が出版された後、多くの死別悲嘆の経験者からの声に、医師として、また同じ経験を持った者として対話され、立ち直るためのある種の方法論の確立を使命と感じておられることだ。グリーフケアに関する多くの論文等を読まれ、実際に様々な方の話を聞かれてまとめあげたのが、「悲しみの中にいる、あなたへの処方箋」である。 【送料無料】悲しみの中にいる、あなたへの処方箋 この本は事例集と処方箋だけでなく、日野原重明先生とのホスピス・看取りに関する対談、死生学のアルフォンス・デーケン先生との対談を網羅し、更に埼玉医科大学の遺族外来の取組み、そして様々な参考文献とグリーフケアのサポート・研究団体の情報までもが紹介されている。まさに悲嘆に苦しむ中、立ち直るきっかけが満載の思いやりあふれる本になっている。 垣添先生と日野原先生に共通する意見として、「幸せな最期を迎えさせてあげられると、遺族の悲嘆を予防する」ということがある。「予防」といっても、垣添先生は奥様のご希望を叶えて自宅で看取る形になったわけだが、それでも大変に苦しまれた。ただ、もしそうしていなかったならば、後悔や罪悪感がもっと大きく、悲嘆の重しとなっていたということになる。 しかし医学的知識がない患者家族にとっては、「幸せな最期」はもっと難しい。一般の病院では、「幸せな最期」を迎えさせてあげるためのサポートを、職務の大きな柱とまで考えていない医師が殆どなのではないだろうか。「危ないです」と家族に連絡したものの、何度も持ち直す患者もいれば、「予想外」に力尽きてしまう患者もいるということを理由にあげるレベルである。勿論、それはとても悩ましい問題だろうが、患者の基礎疾患に体力と病状、患者家族がどの程度何を望んでいるかの理解を、もう一歩ずつでも緻密に掘下げれば、もう少しその人らしい死を迎えさせてあげることができるだろうに…。 癌だけでなく、全ての疾患・傷害の先にありうる死の迎え方を、もっと多くの医師・病院に取組んでもらいたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.07.29 16:20:07
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