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チャンディガールは北インドのパンジャブ州とハルヤナ州の州都、そして首都デリーなどと同じでどの州からも独立した連邦直がい領でもあります。 インドでは政治的、歴史的、地理的、宗教的にビミョ~な場所が連邦直がい領になってるみたいなんですよね。 そんな複雑な3つの顔を持つ近代都市チャンディガール。 パンジャブはちょうどヒンドゥーとイスラムの中間のような感じのシーク教徒の多い州、北方にはシークの大聖地&総本山ゴールデン・テンプルのあるアムリツァールもあります。 頭にターバンを巻いているインド人男性は全員シーク教徒、他の宗教の人達はこれをしません。 戒律で髭と髪の毛を切らないのでターバンでまとめているのです。 チャンディガールはスイス生まれでフランスで活躍した建築家のルコルビジェ(本名はシャルル・エドゥアール・ジャンヌレ)による計画都市、彼自身が市の郊外にあるチャンディー女神寺院(黒い女神、シヴァ神の妻パールヴァティの変化)にインスピレーションを受けた事からこの町の名がつきました。 チャンディはパールヴァティの暗黒面を体現し、魔物を退治する強くて恐ろしい女神様です。 1947年のインドとパキスタンの分離独立後、元パンジャブ州都のラホールがパキスタン領に併合されたために急きょ造営されたインド側の州都です。 つまりインドが隣国になったパキスタンに対抗して、当時の首相のネルー達が世界にも類を見ない斬新で芸術的なヨーロッパ風の計画都市を建設してみましたというわけ。 今では都市そのものが目玉の観光地になっています。 でも東西に飛び地をしながら独立したパキスタンも負けてはいません。 現在はバングラデシュの首都である元東パキスタンのダッカに、ロシア生まれのアメリカ人建築家でモダニズムの巨匠のルイ・カーンによる国会議事堂を建設したのです。 その後の西パキスタンとの内戦や印パ戦争を経て1971年に独立したバングラデシュは、このメモリアルでアトラクティブな建造物をそのロケーションゆえに手に入れました。 伝統的なデザインが当たり前のインドの各地の中にあって、チャンディガールは日光江戸村などのちょうど逆の雰囲気。 モダンな町のセットの中に、今も日常生活がコスプレのミスマッチなインド人達が暮らしているようにも見えます。 見学者にとっては興味深い町ですが、インド人にとっては暮らしやすいのかどうか? でも建築観光で経済的にも潤っているので文句はなさそうですが。 スーパー・モダン・シティーの中をサイクル・リキシャ(自転車の人力車)が走り、ドーティ(腰布)姿で自転車を漕いでいるリキシャ・ドライバーがケータイ電話をかけている不条理。 数字のセクター番号で整然と区分けされたアドレスに右脳的なインド人達はかえって混乱、しばしば迷子になって拉致が開かない事もあるようでした。 どちらを見ても同じような風景というのは逆に覚えにくいものですよね。 ルコルビジェは都市機能を人間の身体と考え、各ブロックには必ず学校や病院や生活必需品の店などがある便利な構成に設計しました。 町の心臓部に相当する場所には巨大な広場とショッピング・センター。 そして人間の頭部に当たる町の上方には、都市の頭脳である国会や行政機関や裁判所や大学などが置かれています。 市議会議事堂の議事室の内壁には抽象的な人体の内臓のレリーフが飾られ、都市にとっての議会の役割を表現しているそうです。 議長席の真上には白いドーティ(腰布)&サンダル履きのマハトマ・ガンディーの等身大の写真が、議会席を見下ろしていました。 セクレタリアート(各州の役所)は2つの入り口がビルのちょうど逆方向にあり、2州の行政機能が建物内でも2分されていますが食堂だけは共有スペース。 裁判所はマンションのように合理的に各部屋が配置され、裁判の場所と進行状況が一発でわかるサイン・ボードも置かれています。 その辺りを植民地時代の名残のイギリス風の黒マントの衣装を着た、中身はインド人の裁判官などが多数ウロウロしているのが見ていて楽しい感じ。 ユニークなアイディアが具現化されたチャンディガールは、まるで都市自体がルコルビジェ&インド独立の志士達のコラボレーション・アートのようです。 町全体が視覚的にも機能的にも1つの作品だなんて、おもしろいコンセプトですよね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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