カテゴリ:●読書
昔、テレビでは毎日必ずどこかの局で映画を放送していた。夜の9時から始まる映画には解説者がいて、その人たちの独特の解説が映画を見る前、見終わった後の楽しみでもあった。20代の頃、会社の同僚のコピーライターRXR-M氏が、「淀川さんは、どんな映画でも悪いことは言わない人だ」と解説者を解説してくれたことがあった。淀川さんとは、淀川長治さんのことである。それを教えてもらってから、日曜日の夜9時に淀川さんの解説を注意して聞くと、僕がつまらない映画だと思っても、必ず良いところを探して褒めていることに気が付いた。今思うと、翌日の月曜日に気分良くストレスなく会社へ行けたのも、日曜夜9時の淀川さんの解説と「サヨナラ、サヨナラ」の挨拶のおかげだったかもしれない。
さて、海堂さんの「夢見る黄金地球儀」を読み終わった。やはりこの作家は、僕が推理したようにマンガの場面を浮かべながら小説を書いているようだ。文中には、「ルパン三世」のことも書いてあり、やっぱりキタかぁという感じ。前半は、盛り上がっていくのだが、途中からはつまらなくなってしまった。騙し騙されコンゲームというほどではなく、作家の自分勝手な好み、都合で終わらせたという感じが強い。読者が期待しているようなドンデン返しは無く、だいぶ物足りなかった。唯一の救いは、「ナイチンゲールの沈黙」の元看護師・浜田小夜が活躍するくらいで、これも前作を読んでいなければ「なんだ?このSAYOという謎のシンガーは?」という感じ。田口・白鳥シリーズのバックアップで売り物となったようなひどい作品であった。この本の出版社は、昔よく読んだ創元推理文庫だというのもナンか嫌だなぁ。海堂さんの本でなかったら、きっと買わなかった文庫本だ。それでも、近所の本屋に積まれていて、僕が買ったのはその時点で最後の一冊だった。読み終わった後に、淀川さんのように褒めた人はきっとイイ人に違いないです。 ハイ、ここからは淀川さんを見習って何とか良い部分を探しましょうということで、腕組みして「うーん」と悩む。一つあげるとしたら、前作で読者を置いてきぼりにして一人でどこか他の世界へ飛んでいってしまった浜田小夜がやっと着地したということだろうか。それもすごいカタチで「ナイチンゲールの沈黙」とは、イメージが変わるほどのマンガ的着地。彼女は多重人格者だったのか?小説にリアルさを求めている読者には、もう勝手にやってくれと諦めた人もいるかもしれない。作者は、このキャラに対してはゲームのマイキャラのような特別な感情を持っているのではないだろうか。前作であのような転回にしたことに罪悪感があるのかもしれない。この作家の作品のおもしろいところは、そういった作家自信の心理状態がうっすら感じられることでもある。単に想像だけれどね。 極めつけは、この浜田小夜の「ある時は看護師、ある時は特殊能力を持った歌姫、ある時はシークレット・サービスのアシスタント、ある時は銀のティアラをして水色のドレスを着た何でもお見通しの女神さま、その実態はキューティー・サヤ様よ!」というノリで、これまたアニメのパクリ、いやいやオマージュ満載のコメディ小説なのでした。このキャラ設定も、彼女の仲の良い同期の看護師の苗字が「如月」ということからも、「まさか…」と思っていたところ。以前、ある医療関係の仕事で、困った医者のマンガを描いたことがあった。患者の話も聞かずに、診察室のデスクに美少女フィギュアを並べて愛でているという姿。なんかそんなイメージが浮かんでしまったのでした。褒めになってないか^^; お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[●読書] カテゴリの最新記事
|
|