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テーマ:ショートショート。(573)
カテゴリ:Stories
深夜近くの最終バス。 人々はバス停に到着する毎に次々と降りて行く。 最後に残ったのが、「その女」と私だけだった。 私は今夜は家に帰る気分にもなれず、 とうとう、女の後についてバスの終点まで乗ってしまった。 もうこの先の終点には、何もない。 住宅も何もないのだ・・・。 その先にあるのは、深遠な暗闇。 女はバスを降りる。 私もその後から降りる。 女は全く私を気にしていない様子だ。 霧雨のなかを先へ先へと歩き続ける。 鉄の柵を乗り越える女。 柵の向こうは墓地だ・・・。 私も柵を越える。 そして、見た。 何を? 女は十字架の其の墓石の上に仰向けになっているのだ。 冷たい墓石に横たわったまま動かない・・・。 「さあ。お帰りなさい。私は朝までこのままよ。」 「付けていたのを知っていたのか?」 「ええ。映画館からでしょう。」 「おやすみ。私はここに眠るのよ。」 「ねえ?あなたは、この前の戦争の時に従軍した?」 「ここには私の恋人だった人が眠り続けているの。」 「遺骨はないわ。ドイツで砕けたから・・・。」 「おやすみなさい。知らない人・・・。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.02.01 17:13:09
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