キース・エマーソン自伝
どういうわけか今年は猛烈にEmerson,Lake&Palmerにハマっています。前から知っていたのに、今になってハマるとは。もうね、何か(ファンの霊とか?)が取り憑いたとしか思えない(笑)。そんな一環で『キース・エマーソン自伝』も買ってしまいました。A5判サイズに文庫本よりも小さい字で2段組み(注釈入れて3段組み)422頁という、文字数比のコスパは良いけど、視力がアヤシイ者には全く優しくない仕様(苦笑)。ELPの話が出てくるのは半分過ぎ辺りから。キースの前身、The Niceについての割合がELPと同じくらいある感じ。ジャズ・ミュージシャンの名が大量に出てくるも、私には誰だかほとんど分かりませんでしたやはり注釈は必須。クラシック・ミュージシャンの方は、クラシック系職場に数年いたので少しマシ。仕事じゃない日も情報収集とお勉強として大量の公演を観ました。ていうか観に行かされた。合間を縫って自主的に観たのは、Pistols再結成ライヴとMarilyn Mansonです(笑)。指揮者のズービン・メータがレイ・チャールズにコケにされるエピソードがありました。キースも「カメラが回っている時とそうでない時の態度が違う人」という印象を受けたよう。私のズービン・メータの思い出...(知り合いでも何でもないですが)、オペラの公演日に大型台風が直撃したことがありました。凄い暴風雨に興奮マックスと化したメータ氏は凄い勢いでかっ飛ばして、オーケストラが死にかけていたという...。台風の日に海に行くタイプ?そういえばその頃、隣の席にいたクラシック音楽事務所出身の同僚から聞いたことがありました。ジャズ・ピアニストはクラシック曲も弾けるけど、その逆は決してないんだそうな。「どうして?」と聞いても、「でも実際そうなんだよね...」なんですって。密かに楽しみにしていたのは、話に聞くグレッグ・レイクの悪口大会。"性格が悪い"とは聞くものの、具体的にどのような悪行が白日の下に晒されてるのかと。キースがKingCrimsonの楽屋を訪ねて、初めて会った時点で強烈(笑)。基本的に態度がでかい。意見も批判もを婉曲に伝えることを知らない。相手が誰であってもそうなので、損得勘定とか小狡さはない。まあ裏表がないとも(笑)。そういう人だから、天才キースに平気で意見が言えちゃうんだろうけど。ムカつく言い方で(笑)。上司や同僚にいたら嫌だな。グレッグに関して印象的なエピソードは、初期の頃に、気に入らない曲を嫌々演奏させられたことで、不貞腐れた態度のままステージを降りるグレッグにキースがキレたところ。キースがワインボトルを叩き割り、グレッグをとっ捕まえると、割ったボトルを突き付けて怒鳴りつけたんだとか。グレッグは白い顔になったものの何も言い返さず、翌日も怒ったままのキースに、「また何か食い違いがあったら、シャワーでも浴びて落ち着くまで待って、どこか内輪の場所で話し合う方がいいと思う」と言ったんだそうな。「もう口もききたくない!」とかじゃないんだなぁ...と思って。カール・パーマーに関しては、可哀そうなエピソードが多くて、損な役回りになりがちなんですかね。何といっても、大阪公演の暴動事件の中での"人生最長のドラムソロ"案件は一番なんですが。何かと健気で温和なカールに比べて、クセの強いグレッグはツッコミ所に事欠かないので、どうしても多くなりがちだけど、本気の悪口とは感じませんでした。(個人の感想です。)買う前に他の人のレビューを見て、下半身ネタが多いのは知ってましたが、同じくらい"おくすり"の話も多いです。実は相当のステージ恐怖症で、それを克服するため、"おくすり"で元気をつけて何とかステージに出る勇気を得ていた時代もあったとか。少し社交的になれるそう。激しいライヴがキース・エマーソンを輝かせて命を与え、大事な腕と聴力を奪い、命も奪ってしまった...。自伝に記述はなかったけど、過剰なまでのサービス精神や極端な利他精神に、強迫観念めいたものを感じてしまう。そうしないと生きてられないような。