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2005年03月03日
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カテゴリ:雑感
以前何かの会話の折に、どちらかが先に死んだときの話になった。

夫 「もし、君が先に逝くことになったら、どうして欲しい?」
私 「お葬式は、別にして貰わなくてもいいよ。
  もし、お葬式をするのなら宗教色の無いニュートラルな感じがいいな。
  好きな音楽でも流して、和やかな感じで・・・」
私 「土葬は嫌だから、火葬にして欲しい。出来れば日本の実家のお墓に
  入りたいけど、子ども達がどこに住むかにもよるかな。
  あなたはどうしたい?」
夫 「埋めてもらうのはどこでも構わないけれど、君の隣がいい。」

去年の今頃、夫が子どもの頃から尊敬していたネイティブアメリカンの友人が89歳で亡くなった。実家に帰る度に彼の家に寄ろうと思いながら、いつも忙しくて寄る時間が無かったり、家に挨拶に行くと丁度間が悪く留守だったりした。ある時、夫と娘二人で実家に行ったとき、彼の家に行くと丁度彼が居たらしい。病院に行くというのでもっと話がしたかった夫は、かかりつけの総合病院まで送って行った。
病院で彼と別れ、夫も実家から家に帰ってきた。その2日後彼は自宅のバックヤードのデッキチェアの上で眠るように亡くなった。

お葬式は彼の通っていた教会で、教会の儀式とネイティブアメリカンの儀式の両方に則って行われた。私と夫も参列した。式の後、墓地に向かうために教会から出て、車に戻ろうとするといつの間にか雨が降っていた。
夫に、日本ではこういう雨を涙雨と呼ぶのだと教えた。

墓地につく頃には雨も上がり、西の空に太陽が沈むところだった。彼の孫娘たちが馬を引き、周りを回り、跡継ぎの長男が祝詞と共に煙を炊いた。儀式が終わると、棺を滑車を使って土中に下ろし、先ず女性が一握りの土をかけて、それから男性がショベルで土をかけた。

彼がなくなった後、夫は残された奥さんの様子が気になっていたようで、時々電話を書けたり、花を贈ったりしていた。
今年の1月上旬、その奥さんが突然亡くなったという知らせが届いた。晴天の霹靂だった。子どもの学校があるので、夫だけがお葬式に参列しに行った。

お葬式から戻ってきた夫は、かなり気落ちしていた。色々と思い出話を私にしてきたので、黙って聞いていた。彼ら夫婦が出会ったのはお互いが17歳と13歳のときで、大学卒業後彼女の父親から許しを貰い、結婚を申し込んだ。以来65年の結婚生活を、死が二人を別つまで続けた。

私 「結局、死さえ二人を別つことが出来なかったんだね。
  彼が亡くなってから一年も離れず、二人は隣同士で永遠の眠りに
  ついたんだから。本当に離れたくなかったんだね。」
夫 「そうだね。二人は隣同士で眠っているからね。」
私 「私達も、彼ら夫婦のようになれるといいね。」
夫 「なるよ、前にも言ったよね。君の隣がいいって。」

夫の目には涙が光っていた。まだ、たった10年。これからもずっと一緒にいたいと思う。





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最終更新日  2005年03月03日 15時28分15秒
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