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カテゴリ:☆英国バイオラボ見聞録!
イギリスは言わずと知れた動物愛護の国ですが、過激な動物愛護活動家が多いことでも有名で、世界中のバイオ系の研究者から恐れられています。
昨年7月には、びっくりするようなニュースがありました。 新薬開発のためにオックスフォード大学が建設中の実験施設が、反対派の妨害活動にあい工事中断。軍隊が出動して警備に当たるという騒ぎになったのです。 BBCニュースによると、当局は、今後、動物愛護活動家に対しテロリストと同様に厳しく対応する方針を示しているとか。 動物実験問題については、ニュースにたびたび登場し、BBCのウェブサイトでもホットトピックとして取り上げられるなど、イギリスでは強い関心を集めています。 筆者は一応ロンドンでも割と大きな医学系の研究所に在籍しているので、イギリスの動物実験施設が様々な点で日本と大きく異なっていることが実感できます。 たとえば、動物実験施設はとある建物の中に内包されており、どこにあるのか部外者からはまったく分からないようになっています。 これはもちろん過激な活動家対策です。 そしてスタッフは動物施設の入り口がどこにあるのかを外部者に口外してはならず、また研究所の中で誰が実際に動物実験に従事しているのかも口外してはならない、という厳しい規則があります。 また、動物に対する扱いが日本に比べるとずっと丁寧であることも確かです。 動物福祉について厳格な規準があり、たとえば麻酔一つにしても、日本で一般的なエーテル麻酔は動物の死亡事故や引火の危険があることを理由に禁じられていて、イソフルレンによる吸入麻酔を行うといった具合です。 実験動物への福祉が重要視されるのはもちろん良いことですが、一方で実験を行うために内務省(Home Office)による審査やライセンス取得など多くの手続きを経なければならず、研究の進行に支障をきたしていることも事実で、なかなかバランスの難しい問題であることを考えさせられます。 ちなみに、筆者の研究所には下の写真のような印象的なポスターが貼ってあります。 これを見ただけでも、いかに動物実験問題がこの国で大きな論争となっているかがお分かりいただけるのではないでしょうか。 動物実験の件数はピーク時より大きく減っているものの、遺伝子改変動物の開発などの新たな技術によりその重要性が増していることも確かで、この10年ほどの件数はほぼ横ばいです(BBCニュース)。 今でも世界一厳しい倫理基準がさらに厳格化するような事態になれば、イギリスの医学研究発展の足かせとなるのではないかと心配になります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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