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2010年07月15日
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カテゴリ:だんな閑話

あれは、2年前の暮れだったろうか。。。

彼は彼の兄達と一緒に経営しているヒッピーなバーで仕事をしているが、最近はほとんど書類整理やアカウントなどのマネージメントだけで、週に2,3回仕事場に 行って手続きをすませれば後は信頼できる人達が働いてくれるようになっていて、もう朝の4時まで仕事をせずにすんでいるのだ。バーの仕事が安定期に入ったということであろうか、でも、そうなると、ちょっとつまらなくなってきた、と彼がこぼしはじめていた頃だった。もし仕事をやめて別のことをするなら全サポートするよ、と私達は話し合っていたことがあった。ちょうどその頃、自分達で小さなサンドイッチ屋さんのようなものでも持てると楽しいだろうね、と夢を描いては、なかなかそう簡単にできない現実とのギャップにため息をついていた頃でもあった。ところが彼の友人がさっさとその夢(彼の友人もコックさんだった。)を果たしてしまい、1年もしないうちにそのサンドイッチ屋さんは大流行りになっていたのが、彼をちょっと落ち込ませてしまったのか、焦らせてしまったのかもしれない。普段、彼はあまり愚痴を言う人でもないし、相談もあまりしてくれないのだが(彼が言うには私を心配させたくないらしい。)ある日、滅多にないその、「相談」を持ちかけられたのだ。

「僕はやっぱり料理がしたい。」と。。。

ただ、自分ももう、20歳やそこらじゃない、年も取って、長時間暑いキッチンで立ち続ける事に不安があるし、本当にそれが自分のしたいことなのか、ただ単にバーでの仕事が嫌になってるだけなのかを見極めたいから、昔、お世話になった今も尊敬しているケビンテーラーのところでエスタージュ(お給料をもらわない見習いのこと。)をしたい、と。お給料も入らず、君との時間も減っちゃうことに君がどう思うかわからないから、ケビンに相談する前に君にきちんと了解を得たかった、とも。私にはずぅっと前からわかりきっていたことだった。彼が本当に情熱を持っていること、心から愛してやまないもの。それが、料理だっていうこと。だから、私は「がんばって、自分が本当に望んでいることを見極めることができるといいね。」と喜んで送りだしたのだった。

(ケビンのお店はシアターディストリクトにあるホテル内のお店。↓)

Kevin Taylor's at the opera house.JPG

そうして、彼は新しい第一歩をまた踏み始めた。最初の一週間は久しぶりの長い立ち仕事で家へ帰ると、まるで日本の中年のおっさんのように「ふろ、酒、寝る」の3拍子だったのだが、それでも少しずつエスタージュの感覚に慣れ始め、しばしば彼は苦笑いと共に楽しそうにレストランでの様子を伝えてくれた。「包丁のスピードが落ちちゃって、スローモーションのように感じるよ。車椅子」とか、「ラインコックの中では僕が最年長なんだ、なんか、時代を感じちゃうね。ショック」とか、「ケビンの息子、覚えてる?僕が最初にケビンの元で働いてた時、彼は、まだ8つか9つだったんだよ、それが今じゃ、スーシェフ(シェフと同等、またはそれと同じくらいの地位)になっててさ、まだ赤ちゃんのような顔してるくせに、さすがに才能あるヤツだよ、僕の知らないテクニックを使って、見事な料理を提供してるんだ。グッド」と、毎日、毎日、活気立っている彼を見るのが私はとてもうれしかったし、久しぶりの彼のシェフコート姿がとても格好良く似合っていて、まぶしいくらいだった。ハートハートハート

毎夜、毎夜、このお店では、こんなものや↓)

March. 2010 186.jpg

(こんなもの ↓ が「これでもか!」という位出てくる。。。)March. 2010 196.jpg
3ヶ月エスタージュを続け、彼はとうとうパートタイムではあるが、ケビンの元で仕事として働き出した。週に2,3回の夜、彼はラインコックとして一生懸命働いた。全てが彼にとって納得できることらしいかった。キッチンの暑さ、時間の長さ、スピード、忙しくなった時のアドレナリン、キッチンでは1人1人が別の仕事をしているように映るが、本当はチームワークなしでは成り立たないということ、仕事を終えた後の充実感。。。どれだけ忙しくても、彼はその古巣-自分の本当の居場所-に戻れた事がうれしくて仕方ないという風だった。

そして、去年の秋、彼はまたもや「相談」を持ちかけてきた。

「僕はやっぱり料理することが好きだ。」と。。。

ただ、レストランで働くなら、自分はケビンのお店より格が下がるお店で働くのは嫌なんだ。コロラドではケビンのお店は最高級のお店だし僕はパートタイムであっても、そんな彼のお店で働くことに誇りが持てる。ただ、彼の息子がスーシェフである限り、自分はラインコックでしかなり得ない。あのレストランで感じる、アドレナリンは最高のものだと思う。でも、やっぱり自分はラインコックでは終わりたくない、と。

と、なると、やっぱり自分でレストランを開ける、ってこと?と私が聞くと彼は「多分本当に自分がしたいことって、小さなレストランを持つことなんだろうけど。。。」彼はため息と共に続けた。

今のような最悪な景気の中で、資金もそれほどない上、レストランってビジネスは一番失敗しやすいんだ。だから、ローンもなかなか組めない。それに、バーを初めからやってきた僕としては、また一からの出発って言うのに自信がないんだ。10年働いたバーの半分以上は一日12時間以上働いてきただろう、それを繰り返さなきゃいけないのかと思うと今はまだ、憂鬱にさえもなるんだよ。自分のお店を開ける時って、バーをきっぱりやめて、しばらく休暇を取ってからにしたいし、家のローンとかのメドがついてからにしたいんだ、と。

私は ここまで真剣に家のことや将来の事をしっかり考えている彼を見て、なんと言ってあげればいいのか言葉につまった。私は何度も同じことを繰り返して言うけれど、バーを辞めてレストランで働くというのや、お店を持ちたいと言う事で金銭的にあなたにプレッシャーがかかるのなら、私もまた仕事を見つけるから、夢を捨てるのだけはやめてね、とだけ伝えた。。。

 (愛情いっぱい、心を込めて一つ一つ作る彼の手つきはまるで赤ちゃんの頬を撫でるように優しい。ちなみにこれはポーランドのぺロギ(Pierogi)と呼ばれる餃子のようなもの↓)

March. 2010 158.jpg


 

 

 






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最終更新日  2010年07月18日 11時14分19秒
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