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「ああ、俺Aだけど。」先週水曜だったか木曜だったか、
突然弟から電話がかかってきた。 ただでさえドライな付き合いである弟から電話が来る 事というのは、非常に珍しい事である。私は真面目に 親兄弟に何事かあったのだろうか、と思いかけた。 「いや、さっき姉貴の名前で電話があってさ。 で、一応確認の電話なんだけど。」 は?どういう事。それって。 「いや、なんかりえですけど、って電話がきて、その時は 母親が出たらしいんだけど。1度切ってまたかかってきて、 なんか、電話口で泣いてるんだよ。事故っちゃって、とか 言って。それで警察に一応電話したんだけどさ。」 ほう。これがオレオレ詐欺改め、振り込め詐欺(だった?) というものか。 あり得ない。私は今こうしてぴんぴんしている。 しかも、私は車の免許なんぞ持ってはいない。 笑ってしまった。敵、詰めが甘い。 「で警察に電話したら、一応本人に確認をとってくれと 言われたからかけたんだよ。」 なるほど。本人ではないよねという確認の電話だった訳だ。 この振り込め詐欺なるもの、案外巧妙らしい。複数で組んで かけてくる場合がほとんどらしく、この電話で言うならば、 泣く女役とシナリオを書く役は別だったりするようだ。 場合によっては弁護士役までいるという。 決してこの類の詐欺にはひっかからぬ自身の100パーセント ある私にはこういった事件は滑稽であり、まさか自分に かかってくるなんてね、などと可笑しくて笑ってしまっ たのだが。 思わずお金を払ってしまう人の孤独を思うと騙される方も 騙される方だ、とは思いつつどこか切なくなった。 もうひとつ。 デパートにて買い物を済ませ、某地下鉄線に乗った。 正直妊娠10ヶ月にもなると、体にかかる負担も相当で、 立っているのは結構にしんどい。本音を言えば、席を 変わっていただけると非常に有り難いものなのだが、 期待はしないようにしようと私は決めているのであった。 疲労困憊して電車に揺られ帰途につく方々を眺めていると、 そういった親切心を当たり前かのように人様に期待する事が 申し訳ないとすら思う、からだ。 で、その日も私は期待をせず電車に乗り込んだのだが、 丁度優先席に空席があり、私はそこに座った。 すると、隣にお世辞にも清潔とは言えぬ外見の男が 座ってきた。年は、推測するに50代位だったろうか。 薄汚れた作業服のようなものを着ており、小さく華奢な 体をしている。あくまでイメージだが、酒を飲みくだをまき、 ギャンブルで一日を潰していそうな風貌の男である。 私は正直こんな風に、見知らぬ男と隣り合わせるのが あまり好きではない。嫌でも体をくっつける事になるのに 加え、人によってはなんとも言いがたい匂いを放つ方が おられるので、気分が悪くなってしまうのだ。 自分の鼻がきく事を、恨む瞬間である。 私はアルコールに弱いせいか、アルコールの臭いには 敏感な方である。妊娠中は匂いに敏感になるので尚更だ。 これにポマードの匂いが加わればもう完璧と言えよう。 スーツにこぼれたふけなどを発見してしまったら、 もうますます駄目である。 が、まあ仕方ない。彼らも好きで飲んでいるのでは ないのかもしれないし、好きでそういった匂いを放って いるのではないかもしれない。 が、その日出くわしたその男だけはどうにも耐えられなかった。 何故と問われても答えられないが、生理的にどうしても 駄目だったのである。何故こんなにも駄目なのだろうかと 思いつつ、私は平静を装い座っていた。 電車を降りるまで、どうもその男が、じろじろと私の体を 見ている気がした。気のせいかもしれないと思いつつ、 そして言い聞かせつつ、私は始終その事を気にかけていた。 そうこうしているうちに、最寄駅に到着し、私は電車を降りた。 男が同じ駅で降りなかった事に安堵しながら。 すると、後ろから私の肩を叩く人がある。 「なんでしょう?」と振り返ると、そこには4~50代位の 比較的お金に余裕のありそうな風貌のおば様の姿があった。 「あのね。あのおじさん有名なのよ。いつもあの車両に いてね。必ず同じ場所に座るんだけど、絶対に女の人の 隣にしか座らないのよ。あなたは体を見られただけだった けれど、股の間に足を入れてきたりね、もっと凄い事も あるのよ。本当に気持ち悪くてねえ。だから私はいつも、 あの人を見るとすぐ移動するの。」 そうなんですか、気持ち悪いですねえ。いえね、 見られてる気はしたんですよ。でも気のせいかなとも思って。 (そう言えば、だが、私と入れ替わりに席を立った おば様がいたような気がした。) 「本当は貴方にすぐ教えるべきだったし教えてあげたかっ たんだけど、ごめんなさいね。あの人がすぐそばにいたから。」 いいえ、怖いですもんね。いいですよ。 教えて下さってありがとうございます。気をつけます。 それだけなのだが。 同じ日にそういう事があったもので、ああ、こういう どうにもくだらなく不快でかつどこか気の抜けた小事件、 というものは、結構起こる時は立て続けに起こるもの なのかもしれぬなあ、と思った次第である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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