プロジェクトに必要な事前学習の方法
新しい施設の開発に関わるプロジェクトがスタートする際には、必ず「戦艦大和」に関する本を読むようにしています。(今やすっかり習慣化してしまった)小学生の内は、ただ「かっこいい」のレベルでプラモデルを組み立てて遊んでいたのが、今では「失敗の教訓」として熟読を重ねています。なぜなら、失敗のパターンは似ているからです。(人間の欲望とかエゴの結果でしょうが)===きっかけは、90年代で全国に華々しく開発されるリゾートやテーマパークが次々と傾き出したこと。それらに運営コンサルタントとして現地に乗り込んで悪戦苦闘を繰り返すうちに、「なんでこんなアホな施設を造ったのか?」を考えるようになり、調べるようになって段々と原因がわかってくる。すると今度は、こんなアホなことをしたのは今になってからなのか?、昔からなのか?と考えるようになり、あれこれ調べていくと「大和」や「ゼロ戦」の時からズーッとなんだ、ということがわかってきたことがきっかけです。少年時代は憧れていた大和は、実は、全く役に立っていなかった、という事実を知った時にはやはりショックでしたね。見た目は少年心にも「美しい」なんて思ってたけど、その陰には、多数の「しわ寄せ犠牲」がありました。当時の国家予算の約1%も使って、結局「世界を驚かせる」程度の成果しかなかった。大和は、至る所で戦争の邪魔をしてます。もちろん予算。それから国内で最も優秀な兵士を3,000人も乗せて、重油をバカ食いして、浮いているだけ(ほとんどの月日)のお荷物艦でした。世界一大きな18インチ砲だけが自慢。しかも、豪華に3基も搭載。ちなみに、この18インチ砲1基で、現代の自衛艦と同じ重量です。重さ1.5トンの砲弾を40kmも飛ばすことができた。だから技術は凄い、、、かもしれないが、全く役に立たなかった。凄いのはそれくらいで、技術の自慢大会ならおそらくそれで優勝でよかったのかもしれないけど、「どうやって戦うのか?」と真剣に考えないまま、「何しろデカイやつ」的発想で開発してしまった。「箱モノ」を造るときにの鉄則は、「どうやって使うのか?稼ぐのか?」ということをバシッと決めることで、ハードどうするか?はその後で十分。だから計画段階の参加者が逆。だけど、日本は常にハード優先。===その証拠に、関西国際空港の開発方針が決める過程で行われる◯◯委員会だの、そういう会議にJALやANAは参加させてもらってない。使うのは航空会社なのに、、、。それで結局、ハードとしてはGOODデザインなのか、美しいのか知らないが、何しろ兆円単位の負債を抱えてしまう失敗空港の典型となってしまったわけです。航空会社が最初から参加してしまうと、儲けが少なくなる人たちがいるから、JALやANAは造ることが決まってから呼ばれることになります。最初からいるとどうなるのか?航空会社は、別に豪華な空港なんて欲しくない。発着料が安い空港にして欲しいわけです。豪華に造れば必ず発着料は高くなるから。(結果、日本は世界一高い空港だらけ)そんなことを全国でやってたら、北海道に行くよりアジアに旅行した方が安い、、、という現在の状況が定着してしまいました。何しろ、豪華に作りたい人たちが計画の最初に関わる場合、運営者は邪魔な存在なのです。===これは、テーマパークやリゾートも同じでした。開発方針や予算も決まって、着工になってしばらくして初めてその施設で働く社員を募集するわけです。そして、開発者たちの多くは、数百億円単位の大部分の予算を使いきって去っていきます。豪華な施設に残された社員たちは、巨額の借金をいきなりオンブさせられて、呆然とします。しかも、使いずらい、経費ばかり食う世界最高技術の代物、そして、商品開発予算がないから売れないお土産、、、で、給与は下がることはあっても上がることがラッキーと思える、、、ような状態で「お客さんを笑顔で迎えましょう」とか教育されます。===南方に出て行くのに、兵士の部屋に冷房を入れなかった大和。戦争設計が「一週間程度の戦争」ということで、ハンモックしかつけなかったのに、実際には洋上で3ヶ月間も滞在させられたり、、、。===あるテーマパークでは、「この技術でこういうアトラクションを造ろう」とか大いに盛り上がって、これまた世界最高峰の技術で乗り物を造りまくったけど、予算オーバー。予算を削る際に、レジャ研がいきなり呼ばれて図面を指しながら「この従業員食堂って本当にいるの?」「弁当を持参させればいいでしょう?」「いや、必要です」というと、「全く贅沢なやつらだ」と投げセリフ(汗)。数百億円も使っておいて、2,000万円もかからない従業員食堂を潰そうとするその儲け根性には呆れました。===どの地域で戦うのか?で、兵器の作り方は全く違うはずで、「こう戦う」「こう使う」という作戦と噛みあってなければやはり大和は邪魔なモノになってしまうのです。40km先まで飛ばすことができる世界一の主砲も、40km先の敵をどうやって発見するのか?しかも、敵(この場合はアメリカ)よりも早く発見するにはどうするのか?そちらの方が全くといっていいほどダメでした。アメリカは、18インチ砲は高いし無駄だと見切って、「敵を早く見つける」ことが大事で、それにはレーダーを造ろう、となります。あくまでも、ソフトが主体。===ある大手ゼネコンが地方の田舎に高層型の豪華なホテルを提案して建ててしまった。確かに目立つけど、高層ホテルと言えば、誰もが期待する「夜景」が周囲に何もなくて宿泊の客様が「なんじゃこりゃあ?何のために高い金を払ってるんだね?」と初日からお怒り。どんなに窓の外を凝視しても、そこは真っ暗な海。高層にしなければならない理由はなんだ?というわけです。===あげていくとキリがないですが、もうダブることが膨大に発見できます。そういうことでプロジェクトが始まる度に確認するために毎晩読みます。日本は、大型プロジェクトの失敗の理由や原因が検証されて公開されることがほとんどないからです。これも理由があって、公開されると罪に問われたり責任を負わされる人たちが大勢いるからです。(あるいは口封じをされている)いずれにしろ、こうしてまだまだ同じ過ちを犯しやすい仕組みがあるわけです。だから、手に入る範囲で学習しつつ、ある程度の失敗のパターンを計画に関わるメンバーや業者、クライントと共有するようにします。現在のところそれが失敗回避の重要なステップになっています。===最近は、JALに関しての失敗の教訓を学習中です!(いやー、出てくる出てくる、失敗の教訓の宝庫ですな:汗)