新入社員フォロー研修での講演「日本を豊かにする生活改革の提案」
中国に通っているとハッと気づかされることがあります。最近は、上海のタクシー代が高いこともあって、なるべく地下鉄で移動するようにしています。かつて2004年頃は、混雑しているけど「元気、活気」を感じて、そのパワーに惹きつけられました。個人的には、2000年~2010年の中国(北京、上海)は私の10代の学生時代の東京と似ています。(おおよそ70年代)(私より年上の方々は60年代の東京だと言います)*年代によって捕らえ方が違いますね。その後、オリンピックに万博と躍進を続けました。しかし、最近は地下鉄の乗ると「皆、疲れてるなー」と。昔の東京の地下鉄のようで、あの活気はどこに行ってしまったのか?もう「能面」のような顔の人ばかりです。イケイケバブル経済は一段落したものの、まだ成長ラインにある中国経済。経済が成長する時は人々に活気があって「幸せそうに見える」と言われます。しかし、ある領域に達すると幸せそうに見えなくなってきます。それが急速に広まりつつあります。こういうのを見ると、GDPがどうのなど経済構造の視点で幸福度は計れないし、それだけでは幸せになれないんだな、と再認識できます。経済活動はそもそも人々の生活活動の結果。その上海の生活活動を見ていくと経済が豊かになっても「幸せそうでない」領域に入ったなということがわかってきます。その典型は、生活スタイルの変化です。それはマーケティングうんぬんの視点ではなくて、例えば、かつての中国人は、両親を大事にして同居して少々収入が低くても家族全員で合計すれば意外に不自由ない生活ができたし、年老いた両親も子供夫婦が面倒を見てくれるので、老人ホーム問題もありませんでした。また、子供は両親が面倒みてくれるので、夫婦でガンガン共働きしてお金を貯めることができ、それを元手にマンションを買ったり、商売を始めたり、、、。私が上海に借りていた大家さんがまさにこうした生活者だったので、「なるほどなー、幸せのサイクルだ」と思いました。しかし、近年は両親とは別居が増え、子供はベビーシッターを雇わなければならない。老人となった両親を預ける老人ホームが不足している。マンションは高くなってきたから、遠距離通勤が始まる。それで専業主婦も生まれてくる、、、。すると家計はますます苦しくなってくる。また企業でも、社員はノウハウを覚えたら他社へ転職してしまうか、会社のノウハウを使ってそのまま自分で起業してしまう。それを10年以上繰り返すと、もう社員は少なくていい、新卒はいらないとかどんどん慎重になってきて、経済は好調なのに大卒の就職先が減ってくる、、、というヘンな現象が起きてきます。さらにどうせ3年くらいで他社に移るなら、ノウハウを教えるだけなんだから、初任給をアップする必要はない、と考える人事部や経営者が出てきます。こういう流れが加速してくると、明らかに社会全体が「負のスパイラル」に突入していることになります。そういうのを見ていると、どっかの国に似てるな、と(笑)。それでハッとするわけです。===日本経済も消費税問題やTPP問題が目立ってますが、そういう経済構造だけをこねくり回しても問題は解決しないな、と思います。日本もバブル時代の手前くらいから、両親と別居が当たり前になり、短大や大学を卒業した女性たちが専業主婦化が始まりました。子供の面倒をみてくれる人がいないからです。マンションを買おうが一軒家を建てようが、収入はお父さんだけ(汗)。両親は年老いて、老人介護問題が浮上してきます。上海も東京に似てきてるなと。高度成長期の「インフレ」でイケイケ時代はそれでもなんとかなりました。(所得が年々上昇した)しかし、デフレ時代になった時に「構造改革」をしたのは政府で、生活者は生活構造改革をしてこなったのです。インフレ時代の生活をそのまま続けてしまいました。デフレそのものは政府の経済政策のミスの連発だったことは事実です。その一方で、その時代に適合した生活に改革できなかった国民にも問題があります。本来であれば、両親と同居して、共働きをして、「両親の年金+夫婦の収入」で生活すればよかった。大人4人に育てられた子供たちは、良い子に育ちます。専業主婦の母親に育てられた子どもは親の「ペット化」する傾向があり、学校の先生も「ゲンコツ」「往復ビンタ」すら禁止されてしまう。家では個人教育は出来てもチームワークを教えることはできないから、学校の先生に「もっとガンガンやってください」と言わなければならなかったはず。しかし、モンスターペアレンツ化した親が監視の目を光らせて、やがて先生も「文句言われなければそれで良い」的教育方針になってしまう。すると社会に出ても「弱い」。それが企業に入社しても、やっぱり「弱い」。特に大人との付き合いが少ないから、上下関係、人間関係に弱い。だからかつては問題が少なかったはずの社内が「問題だらけ」になってきます。新入社員研修で「30代の夢は何ですか?」と質問すると、「専業主婦です」と答える社員が増えて来た(汗)。ということで、経済不況の原因の半分くらいは「おっぺけな政府」にあるとしても残りの半分は生活者にもあるのではないか?と考えます。政府も「政府はこのように構造改革をします。国民はこういう生活をしてください」と言わなければならなかった。それをして来なかったこの20年間の集大成が現在と言えます。そこで、消費税やTTP以外にすぐにやらなければならないことは何か?これは私の考えですが、「子供手当て」は止めて、共働き夫婦への「24時間無料保育園」を作って、何しろ「皆さん働いてください」と言う。日本には世界一高学歴の専業主婦たちがいます。一人の子供を大学卒業させるには、家庭と政府で数千万円かかります。その子が社会に出て数年で専業主婦化してしまえば、税金を納める期間があまりにも少ない。こういうことは言いづらいから、政治家はなかなか口にしないが、事実は伝えなければ気がつかないわけです。働けば収入があるから、その分「消費」が増えます。税金は消費活動から生まれる、、、の原則。次に両親との「同居手当て」。(だいたい両親の面倒を見なくなったこと自体が問題のはず)ただ、いきなり同居しなさいと言っても、もう少し広い家やマンションに引っ越したりリフォームも必要でしょう。介護が必要になると、思うように働けなくなります。それを手当てしましょう、ということです。そういう本当の支援を最優先するべき。そもそも、自分の両親の面倒見なさい、という人間として当たり前のことを学校でも堂々と教えるべきです。(道徳教育の欠落)だけど、現在は生活が苦しいから、同居する家族には手当てを支給する。介護ばかり手厚くしていく前に、同居を奨励するべきで、それをしないで介護問題だけをクローズアップしても解決策は苦戦します。(もちろん諸事情で同居できない人は例外とする)それでも核家族化を希望する人たちもいます。そのためには「こういう生活改革をすれば、いずれインフレになります。インフレが安定したら、また核家族化しても結構です」と言えばよい。企業もグローバル化しなきゃ、と社内公募で集めた社員を留学させて、それで一気にグローバル化しようと思っていたら、MBAとか取得して帰国した社員が次々と辞めてベンチャー起業していく。(そして企業側が大きなダメージを負う)その何人かは成功してテレビとかで「日本の企業は世界から遅れている!」とか平気な顔してコメントしています(笑)。そして、こういうベンチャー企業から「社員を定着させるにはどうしたらいいですか?」という質問が来ます(笑)。自分は好きにやって来たけど、社員にはついてきて欲しいということです。企業側も、それはバカらしいからやめようとなり、ならば外国人を雇おう!どうせ3年で辞めるなら契約社員でOK、とか、そういう人事制度に変化していきます。または、3年目あるいは5年目から給与が上がるようにしよう、、、となり、なんだ結局は年功序列も悪くなかったんだ!ということになったり、、、。(結局、元に戻っていくパターン)こうしてみていくと、課題の多くはシンプルに「恩返しの文化(あるいは感謝の心)の欠落」が問題だなと思います。(日本でも中国でも、、、)この循環が回っているうちは、皆それなりに幸せな生活できたし仕事もできた。しかし、そのサイクルが「自分主義」が強くなり過ぎて「ブツっ」と切れてしまうと、世の中全体がなんだか幸せ度が薄く感じてきます。人間は、裏切られると臆病になります。(企業も同じ)そうして、結局は巡り巡ってそのサイクルが切れた部分を政府が負担することになっている、という見方もできるわけでで、それから目をそらせない状況にあるのも事実です。もっとドライな言い方をすれば、「借りたもの(あるいは恩)は返す」が基本で、それが止まると、経済活動にもどんどん弊害が出てきて、その結果が1000兆円(政府の負債)になっちゃった。だから、政府がアホばかり言ってないで、周りの人たちへの恩返しをしっかりやりましょう。挨拶でよく言う、「皆さんのおかげです」というのは台詞化してませんか?ということです。アクションで返しましょう。===以上は、とある企業の新入社員フォロー研修での講演内容です。もちろん、会場は賛否両論の嵐になりました(笑)。