|
カテゴリ:今日のひよりは…
新宿では庭なんてある人の方が少なかったから、みんな家や店の前・アパートの物干し台で草花を植えていた。緑が少なかったからそれを求める気持ちは多分、山の手の畑や雑木林が広々と広がる所の人達より強かったんじゃないかな。 公園でも木がいっぱいで、この間載せた新宿公園なんか、春になるとオオムラサキの花で満開に埋め尽くされた。…私が山の手に来て一番驚いた事の一つに公園の殺風景さがある。木もない、花もない、ぺたんと平らな土の上にブランコと滑り台だけ。ついでに公衆便所がなかったのも驚きだった。子供は来ていなかった…みんな、雑木林とか空き地で遊んでいた。私もじきにそういう子供になった。自然の方が面白いに決まっているもの。 うちも新宿時代は物干し台にいろいろ植木を植えていた。ヤツデやイチジクは鉢植えだったが1mくらいあった。 でもビルの狭間なので日当たりは悪く、箱庭に植えた草花はみんな枯れてしまった。学校からもらったひまわりの種も一生懸命芽を出して一生懸命伸びようと、水道の配管のようにS字型になってつぼみをつけた。一枚花びらを開いたところで力尽きて枯れてしまった…。その時の悲しさを、泣きながら「よく頑張ったね」と言った事を昨日の事のように思い出す。 楽天greetingにあったけなげさん 山の手に引っ越して家族共々庭造りに夢中になった。でもやっぱり日当たりの悪い庭だったのでなかなか他のお宅のように育たない。ひまわりも私のようにひよひよしていたが、咲いた時には嬉しかった。よくやったねと褒めてやった。苗だった桜が光を求めて大きくなり、花をつけたときには本当に誇らしかった。私はそれからソメイヨシノよりこの大島桜が好きになった。 不思議なものだと思う。江戸時代の日本人は外国人が驚くほど花好きだったと聞いたけれど、それを季節の風物の中でこよなく愛してきたのは多分庭を持てない、庶民の人達。貧乏な旗本や御家人は生活の足しに、庭で盆栽や菊・牡丹・蘭などを作ってその文化に貢献した。大名なんかよりずっとその愛着は深かったと思う。 人間、一杯あって当たり前の物にはなかなか美しさや愛を感じられないものなのかもしれないね。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[今日のひよりは…] カテゴリの最新記事
|