こういう事になると…どういう事になると?…ルーちは本当に感情の表し方が
へたっぴいだと改めて思う。
怒り・悲しみ・憤慨…そんなマイナスの感情を他人にぶつけるのが
…多分ほとんど出来ない。喧嘩ができない。
ものの分かった良い子の仮面をかぶり通す。
…偽善者。臆病者。
したがって、ウチの中で、心の中で、かなり長い事グチグチやる事になる。
いつもいつも聞かされるダンさんはいい迷惑だ。
嫌な顔の一つも出ようと言うものだ。
だからぴたっと言うのをやめた。
…苦しい。
胸をかきむしられるように苦しい。
…ルーちがどれだけダンさんに依存しているか、よく分かる。
ダンさんだけが受け止め手…なんて危険な事。
人に頼るのは葦の棒によりかかるようなもの。いつか手のひらを貫かれる。
寝室に逃げ込んで枕を噛む。
悲鳴なのか、怒声なのか、叫びが胃の中で渦巻いている。
腹筋だけがぎゅーっと縮まり喉に力が入って叫びが出そうになる。
抑えるものがいる。
叫びは枕で抑えるまでもなく出ない。
それでもルーちは枕にしがみつく。
ダンさんに言っていた『グチグチ』の正体はこれ?
こうならない為に長い時間をかけて言葉に変換しているの?
でもダンさんは聞くのが嫌だと言ったんだから、自分で解決しなきゃあ…
自傷的な気分が高まっていく。
体が痛む時だけ、心の痛みが少し忘れられる。
体のあちらこちらをかきむしり出す。腕に噛みつく。
奥歯で指を噛む…ずうっと噛んでみる。
出してみた指はくっきりついた歯の跡が消えず、白いまま。
ズク…ズク…ズク…
血液が戻ろうとしている。
自分への哀れみの感情がそれと共に湧いてくる。
まるで中学の時の地獄をはいずり回っていた時のような気分…
あの頃と違うのは、今、私は自分を責めようとしていない。
ただ、あった事の名札をとって無意識下に押し込めようとしている。
それをやったらどうなるか…私の理性は分かっている。
だから出てくる。
右が理性。左が感情。
ルーちの右手はずっと噛まれた左腕を撫でながら、よしよしとなだめていく。
自分で自分の話を聞いてやる。
…他人が見たら、さぞかし不気味だろう。
家族もそんな私を不気味がっていたなぁ、あの頃…
でもルーちは必死。
なだめる方も。なだめられる方も。
なんでこんな事をせなならんかなぁ…
人とのコミニケーションの取り方がヘタだとここまでハンデを負わなきゃならないかなぁ…
一言外へ向かって言葉を出せばいいだけなのに…
『 !!』