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2019.03.01
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カテゴリ:表沙汰


 フェロー諸島なんて、北欧の海の、人口5万人しかいない島の国だが、Eivør Palsdottirがとても好きなせいでフェロー諸島と言われてすぐにそれがどこなのかわかってしまう。この音楽は、古代の様相が現在にも残っている北欧文化的な素晴らしさを持ったもので、それはすなわちグリム童話にも見え隠れする、北欧のシャーマニズムの世界である。グリム童話に惹かれる人も、ペイガンメタルに惹かれる人も、シャーマニズムに惹かれているのである。そして北欧だけでなく、世界中の特定の音楽、特にいちばんのメインストリームから少し外れたそれには、シャーマニズムの勢いを激しく感じるものがある。

 すべての世界文化のうち、最も古い思想体系はシャーマニズムだ。人類ができて一番最初が唯物論だったわけではない。まずは多神教ができて、一神教ができて、それを発展させる形で唯物論がでてきた。ギリシャ哲学までは多神教の思想体系で、近現代は先は一神教あるいは唯物論の思想体系だ。
 いまの思想体系は、シャーマニズムの時代には当然想像もつかない思想体系だ。そんなことを考える必要もなかったとも言える。だが、一神教から唯物論の時代が長く続いた現在、むしろシャーマニズムの思想体系が新鮮になる。思想史的に大きな影響を残したバッハオーフェンの「母権論」や、そこから影響を受けたニーチェにユング、一神教から唯物論の時代に飽きたら次は何になる?

 スピ系の最大の原動力のひとつはシャーマニズムであり、シャーマニズムの思想体系である。それは人類の「集合的無意識」に近いのだろう。もし人類を温室で進化させたとしたら、まずはその思想体系が生まれるであろうものだから。正義と悪が一神教によって生まれ、「見えないものを見えないと言って何が悪い!?」という考えから唯物論が生まれた。それらのどちらもない世界である。

 想像力は、どこまで世界に適応されているのだろうか?人間の思考・意志・感情は、世界の現象と完全隔離されたものなのか、それとも、意志がひとを動かすという意味だけでなく、念じることで叶うとかみたいな引き寄せの法則とかサイコキネシスみたいな意味は現象になりえるのだろうか。
 シャーマニズムは、思考・意志・感情は現象に十分影響を与える。引き寄せの法則やサイコキネシスの世界の思想体系をある程度有する。
 そして「創造神話」でどのように世界がつくられたのかは、やはり思念が現象に影響を与えている例である。そこでは、神は世界があるように望むことで世界をつくったのである。

 創世記の一番最初、「神が世界を創った」の「創った」であるギリシャ語のepoiesen, poieoは「創造する」であり、しかし同時に「想像する」にも似ている。poemやpoetやポイエーシスの語源である。
 ラテン語では、creavitでcreation, サンスクリットのkarmaの語源でもある√kr, あるいは「切る」の√krtか?だとしたら、ギリシャ語だと、criticの語源であるkrinoだろうか。kronosクロノスの語源でもあるだろう。「区別する」ことで世界ができる。これは極めてユダヤ神秘主義的であり、「善悪二元論」的にも発展できる。createは、ギリシャ語のpoeioと雰囲気が変わってくるかもしれない。

 英語のmakeは、mega, maha, makro, などの語源から「長くする」である。インド哲学から影響を受けたショーペンハウアーから引き継がれたとも言える、ニーチェの「力への意志」Wille zur Machtという概念がある。このMachtは英語のmakeと同じドイツ語のmachenだが、これは「創造する≒想像する」でも「区別する」でもない。mega,maha(大きい)、macro(広い)、などからわかるように、makeは「大きくする、広くする=強くする」みたいな「力への意志」をガンガン感じる動詞だ。

 同じ「つくる」でもpoieo「創造≒想像」、creo「区別する」、make「広げる」で、全然語源の印象は違うものである。

 ヘラクレイトスも高校倫理ではアルケーを火と言ったと習うのかもしれないが、同じように「万物の父は戦争である」と言っている。その「戦争」はpolemosで、ギリシャ語には他にpolemosより少し小規模な「戦い」と言う言葉にmache(マケー)がある。プトレマイオスとかの語源なのだろうけれど、polemos(ptolemos)の語源は調べてもあんまり出てこなくてよくわからない。
 makheのほうは字面的に明らかにmake, machtと同じ「強くする」ような語源であるだろうから、もしこのヘラクレイトスの言葉がpolemosでなくmacheであったなら、ニーチェのWille zur Machtとほとんど同じことを言っていると解釈もできたのだが。「力(Macht)への意志」が世界を動かしているということだから。

 そしてそれは、世界大戦の惨状を見たフロイトが、人間にはTodestrieb「死への欲動」があるのでは、と考えるに至ったことを思いおこさせる。力を伸ばすこと・向上・権力への欲求がMache(戦争)を起こす。TodestriebはWille zur Machtによく似ているのかもしれない。占星術的には、Macht(made)とTod(death)の違いは、火星と冥王星の違いだが、火星の極限が冥王星とも言われるように、Machtの極限がTodなのである。





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最終更新日  2019.03.27 12:15:50
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