マイクの前で、一節の歌を唄いかけ、急に込上げる想いに
歌を止めて口走る。
「過ちを犯したの、やり直したいわ・・・」
黒人のピアノの伴奏者は、まるで神の使いのように答える。
「いや、やり直しは無理だよ。出来ないんだ・・・しかし、過ちはいい。過ちは、人生を豊かにするものだ。」
・・・・
老女は、重い病気を患い、もうじき人生の終末を迎えるべき
病床で夢を見る。若い頃の自分、若い頃に踏み切れずに
見せかけた物にすがった日々。
友人の死。親友の結婚。
愛する人との一夜、愛する人との別れ。
子供の産まれたこと、愛する人との再会と伝えられなかった言葉。
離婚、病気。。。。
彼女は、多くのことをゆっくり幻のように、人生を繰り返すように思い出すのだ。
老女は、若い頃は歌手で・・・街のクラブでジャズを唄ってた。
いつもいつも、訪れる観光客のために。空間に唄うのだ。
彼女が唯一、幸せに感じ、誰かのために歌ったのは
親友の結婚式が最初で最後で、
この時に初めて誰かのために唄う幸せを感じた感動が
最後まで忘れられない。
「言葉なんて何が必要だろうか?私はあなたに出会えてこんなにラッキー
何度も何度もいつも思うわ、あなたを愛した私は誰よりも、こんなにラッキーなんだから・・・」
そんな歌詞の素敵なメロディーの曲だ。
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これは、今日観た映画の物語の一部である。
「いつか眠りにつく前に」と云う、ヒューマンドラマな映画だ。
人の人生観などの映画なので、感情表現がゆっくりで、物語がまどろっこしい所はあるが、
サスペンスや、冒険、アクション・・・そんな物では感じない
心に突き刺さることが人生映画ではよくある。
セリフひとつひとつが、、、何故だかどんな人々にもリンクするのだ。
老女が言う、「過ち」とはなんだったのだろう?
観終わって考えてみた。
一目で恋に落ちた相手との一夜?
その結果、訪れた最悪な不幸?
愛する人と結婚しなかったこと?
見せ掛けの愛情で済ませて来た結婚?
子供に無理をさせてまで、唄ってたこと?
日々の子育てと生活とに追われて自分を感じなかった日々?
愛する人と再会したときに
「僕らの星を僕は今でも見つけられる、今でも心は変らないよ」の言葉に逃げてしまったこと?
しかし、最後に彼女は言う
死の床で、悩みを持つ愛する、我娘を優しく撫でながら、、
「いい?、、、人生に過ちなんて無いわ、全ての出来事が素晴らしいの」と
駆けつけた、親友は彼女の横に横たわり
「私たちは、出来ることは全部ちゃんとやってきたわ。あなたの人生は素晴らしい人生だったわよ」
「私の結婚式に歌ってくれた歌を何十年も思い出し、それを励みに生きてきたのよ」と。
彼女に出会えたことの幸せを話す。
そして娘達にも、「人間は、謎の多い生き物。でも、最後には多くのことにこだわらなくなるの。人生はとても素晴らしいわ」と・・・
永遠の眠りにつく前に。。。
人は、私は、何を考えるのだろう。
彼女のように・・・結ばれなかった恋を思い出すのか?
夢をかけたことだろうか?
必死で生き抜いてきた、、、たくさんの試練や現実だろうか?
なんであるかは・・・その時にならないと分からない。
ただ、この老女のように
最後の時は、愛する人達に囲まれて
扉を閉めたい。出来ることならば・・・
そして、愛してると心の底から伝えて
悔いは何も無いと、笑って逝きたい。
いつか眠りにつく前に・・・
そう、だからそれまで毎日を、一生懸命に精一杯生きよう。
神様が私にくれた
この命とチャンスを・・・大事に活用しよう。
そう思った映画でした。
毎日が平凡でも、人にはみんなドラマがあります。
ひとつでも多く、感動的なドラマを人生の主人公として作りたいものですね。
ps,重要なのは人生の長さではない。人生の深さだ。 by,エマーソン