耳を澄ませてみると
今日、学んだことを記しておく。これを読んだ時、これは絶対に忘れたくないと思ったからだ。以下、タイピングによる視写である。「耳を澄ませてみると」 雨音に耳を澄ませたことは、誰にでもあると思います。夕立の音、台風の音、秋雨の音と、いろいろな雨音を聞くことができます。私が住んでいる東北では、トタン屋根の住居が多いので、雨が降るとすぐにわかります。今、早朝から降ってきた雨の音を聞きながら過ごしていますが、優しい雨なので、屋根からの雨音ではなく、窓のすぐ外にある樹木に降り注ぐ雨音が耳に入ってきます。 人工的に造られた音があふれる現代社会ですが、耳を澄ませてみると、虫の声、取りのさえずりや動物の鳴き声、川の流れる音、波の音など、さまざまな自然の音を聞くことができます。また、そういう自然の音がヒーリングミュージック(癒しの音楽)と呼ばれる音楽の中に取り入れられ、多くの人が聞いているようです。 関西学院大学の窪寺俊之教授は月刊誌「スピリチュアリティー」の中で、この自然の音に癒しの力があるのは、「自然の音にいのちを聴く」ことができるからではないかと指摘しています。 自然の音に耳を澄ませる、これは現代人にとって必要なことではありますが、より大切なのは、私達の周りにいる人たちに対して耳を傾けることです。それは、聞くことが人間関係の基本、土台だからです。 明治大学の齋藤孝教授は『100%の人に好かれる聞く力』の中で、「人間関係を築く上で大事なのは話すことより『聞く力』なのだ」と述べ、「聞く」ということを「相手の話を、キーポイントを落とさずに要約して、再生できること」と定義しています。そして、まさにそういう聞き方が新しいアイデアや発見を生み出す「クリエイティブな関係」を築く上で不可欠だと語っています。 同じようなことをアメリカで「リーダーシップ論」の権威であり、影響力のある牧師としても活躍するジョン・C・マクスウェルは、その著『求心力 人を動かす10の鉄則』の中で述べています。「どのような仕事に就いていようと、どのような立場にあろうと、絶対に必要なスキルが一つある。それは才能でも洞察力でも愛嬌でもない。『人の言葉に耳を傾ける』能力である」「相手との関係を強固で深いものにするには、とにかく一心に『話を聞く』こと。相手が何を必要としているかを理解することである」「聞き上手な人は相手との強い絆を築き、貴重な情報を手に入れ、人間をより深く理解できるようになるのだ」 埼玉大学教養学部の山口仲美教授の新著『若者言葉に耳をすませば』では、「若者言葉」にしっかりと耳を傾けることによって、今の若者たちの気持ちや考え方、期待や希望を理解することができると述べられています。すぐに批判するのではなく耳を澄ませてみる、つまり、相手の言っていることをちゃんと聞いてみると見えてくるものがあるということでしょう。 「すべての人は、自分の言うことに心から耳を傾けてくれる人を必要としている」(C・ニコル・ストレイト)。これはマクスウェルが先述の本の中で引用している言葉ですが、聞くために大切なことは技術よりも心で聞くこと、相手の心の声に耳を澄ませることです。そのためにも、言葉になっていない相手のメッセージも聞き取ることが必要です。 「だから、人の話を聞く時には、神経を集中して、相手にエネルギーと注意を向けるべきである。ボディランゲージも見逃してはならない。顔の表情を観察し、目の動きに注目すること」(マクスウェル)。このほか、固定概念や先入観などの「ゆがんだフィルター」を外して聞くことが大切です。 耳を澄ませるだけで、私達に与えられている関係は確実に豊かなものになるのですから、聞く力を身につけ、聞くことにもっと心を向けたいと思います。(長井信義「晴考雨読」より)