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2006年10月21日
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今、ようやっと公演の録画DVテープのDVD保存を始めた。土日で4回公演したうち、土曜夜の分は専門の人に録画してもらった。良いカメラなだけに画像が鮮明。アップも本格的でまるで映画のようにきれいに見える。私のキャノンミニDVカムコーダーは300ドル以下のお徳用で、どうしてもざらついた感じが表面にある。
ただ、専門家の撮った本格的な方は二人の主役女性のアップがほとんどで、周りのエキストラを映していない事が多いので、エキストラ役の人たちに配るには辛い。私の撮った分はロングショットがほとんどで、表情より全ステージがエキストラごと映っているから、こちらのコピーを作って全キャストに配る事にした。
それからが大変だった。DVDレコーダーにカムコーダーをつないで、二幕各45分のテープをDVDに書き込もうと試みたのだが、最後が切れたり、間違って上書きしたり、何かとアクシデントが起こって、せっかく3-4時間もかけた作業が一行に進まないのだ。コピーを8つも作る必要があるというのに、このままではいったいいつ完成するのか途方にくれてしまった。おまけに同じ芝居を何度も見るというのが、それもいろいろ問題の多い自作の芝居なだけに、台本や演出の問題点や役者との深刻な葛藤など思い出し、辛くてしかたがない。モニタの画面を布で覆い、音声を消してなるべく見ず、考えず、機械的に作業している、、、というなんとも不思議な光景だ。
芝居を見た人々からはポジティブな意見しか聞かないが、それは友達の意見だからということで、半分だけ信用することにしている。あらためて4回の公演を見てみると、意外と見落としていた良い所や悪い所がまざまざと見える。この芝居にはMとRという2人の女優が主演で出ているが、この二人の個性の違い、芝居の取り組み方の違いもくっきりと分かる。Mは大竹しのぶ型の本能で演じるタイプ。感情が自然にほとばしるような演技をする。稽古場でもいきなり感情の長点に達するので何度もドキドキさせられた。いや、オーディションでモノローグを読んでもらったとき、一瞬で本ものの涙がポロポロでてくるので仰天した。こういう人は滅多にいない。この人は嘘の演技をすることが不可能な人だと思う。まだ25歳と若いだけにぎごちないところは多いが、天才肌の役者であることは誰もが認めると思う。性格もきわめて素直。今年演劇学校をでたばかりで学ぼうという意欲も大きい。
もう一人の女優、Rは32歳。非常に頑固な女性で、前にも書いたが、英語に日本語訛りを使うと言い張って、説得するのが大変だった。作家兼演出家である私が何を言っても、自分の意志を通そうとする。稽古場では納得したようで大丈夫かと安心していると、突然本番で訛りを始める。配役当初からいろいろattitude problemが多く、何度この女優を辞めさせて代役を付けようと考えたことか。ただ、Rの演じる役が彼女の持つ個性にピタリときたので、困難覚悟でやって来たように思う。本人は自分とはかけはなれた「外国人」を演じたがっていたが、何もしなくても彼女は役そのものだったのだ。むしろ、「演技」しすぎでウソッぽくなってしまった。
彼女の場合、オーバーアクティングで泣いたり叫んだりしてカタルシスを感じるタイプなのだ。でもMのように本能で演じることはなく、役柄を分析してイメージを作り、それになりきろうとしていたように思う。Mのような天才タイプと2時間の二人芝居のようなものを演じきるのは確かに大変だったと思う。でも、力不足なはずのRが不思議と中年以降のアメリカ人の女性観客に「リアルだった」と受けが良かった。反対にMは20ー30代の日本人女性に受けていた。
Rは女優を目指して3年になるが、未だにユニオンに入れず、エージェントもつかずで、この芝居をなんとかしてキャリアのステップアップにしようと、それは鬼気迫るようなところがあった。鬼気迫るような演技というより、鬼気迫るような宣伝の仕方だった。本物の地下鉄内でパブリシティ写真を撮ろうと言い出したのも彼女、300枚の広告はがきの作成を要求したのも彼女、彼女がいなかったら、シアターのウェブサイトに広告を掲載したり、サイトを作ったりすることもなかったろう。(彼女のはがき300枚は結果として一人のエージェントを観客席に呼ぶ事もなく終わったが)。彼女のいかにも人の良さそうな白人のご主人は2回も芝居を見に来ていた。いつもニコニコと微笑んでいる、気の毒なほどに感じの良い人だったよ、本当に。





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最終更新日  2006年10月21日 14時08分30秒



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