今日の充填治療457.00(中級編)
40代男性、左下765、外傷性咬合、 知覚過敏、歯茎部カリエス、2次カリエス全顎的に冷たいものがしみるということで診てみたが、臼歯部にはクラックが多数あり、咬合面にも挫滅痕がある。舌側面にも歯型が付いているなど、典型的な外傷性咬合の所見が見える。拡大してみると、遠心にはすでにCR充填されており、そこに向かって古い着色したクラックが伸びている。新しい虫歯(虫歯の電気化学説では応力腐食割れの一形態と思われる)にもクラックが伸びているように見える。クラックの存在と歯茎部カリエスの出現は高確率で一致する。それも当然だろう、共に外傷性咬合が原因の繰り返される応力の集中によるものだからだ。虫歯部分は接着性を維持できる程度に最小限取り除き、軟化象牙質が残っている部分はα-TCPセメントで覆罩する。このセメントは歯質と同じ成分のハイドロキシアパタイトなので、軟化象牙質の再硬化と辺縁封鎖が破れた時に代わりに溶けてくれる腐食工学で言うところのカソード防食を兼ねている。CRで削ったところを充填するというよりカバーすると良い。左下65歯茎部は洗浄だけで削らずにCRでカバーした。つづく