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テーマ:ミニ・シアター系映画(152)
カテゴリ:ヨーロッパ映画
原題:Cache(フランス・オーストリア・ドイツ・イタリア)公式HP
上映時間:119分 監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ 出演:ダニエル・オートゥイユ(ジョルジュ・ロラン)、ジュリエット・ビノシュ(アン・ロラン)、モーリス・ベニシュー(マジッド)、ワリッド・アフキ(マジッドの息子)、アニー・ジラルド(ジョルジュの母) 【この映画について】 世界各地の映画祭にて11部門を受賞した作品であるが、日本では渋谷の映画館一箇所のみでの上映となった。 オープニングの映像から他には観られない設定で始まり、観ている観客にこれから何が起こるのかワクワクさせる効果を狙ったかのようなショットの衝撃は新鮮だ。更に、人間心理のどこか他人の生活を覗いて自分の生活と比較してみたいとの欲望を巧に刺激するかの様な展開や映像にも注目して欲しい。 ハネケ・ワールドに巧に引込まれている間にも物語は意外な進展?を見せるので、一時も集中力を欠かす事無く最後の瞬間までスクリーンから目を離さないで下さい。 【ストーリー(ネタバレなし)】 TV局の人気キャスターであるジョルジュとアンの夫婦は一人息子のピエロとパリ市内の一軒家に住むごく普通の幸せな家族だ。 休日には友人を集めて自宅でジョルジュの番組を見て食事を共にするなど、トラブルとは無縁の家族である。或る日、差出人不明のビデオテープがスーパーの袋に無造作に包まれて玄関先に届けられた。 不審に思いテープを再生すると、そこにはロラン一家の玄関先を近所から撮影した何気ない風景だった。だがテープには特別な要求などは一切録画されるどころかメッセージもなく、一家は何が目的で送られてきたのか見当も付かない。 最初は悪戯程度にしか感じていなかった家族も、繰り返し送られてくるビデオテープに対し夫婦間の見解の相違から関係がギクシャクし始める。何の要求もないビデオテープには相変わらず明快なメッセージはない。そこにあるのはロラン一家の行動をまるで覗いているかのようなテープが、家族の感情を逆撫でし始める。 ジョルジュはテープに同封されていた謎の絵などから徐々に送り主と思える人物を独自の調査で突き止める。その相手と思われる人物は、少年時代のジョルジュの隣人で移民の家族であり遊び仲間だった男だ。 アパートメントへ突然の来訪に驚くマジッドは数十年ぶりの対面を果たすが、ジョルジュはマジッドの目的が分からずイラ付く。移民の二世であるマジッドに対し、ジョルジュは人気キャスターとしての地位を得ている。マジッドは高圧的な態度を取るジョルジュに、突然驚きの行動を見せ付けるかのように取った。 さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。 1.マジッドとジョルジュの少年時代に何があったのか? 2.マジッドはジョルジュへのテープの送り主なのか? 3.マジッドの息子とロラン一家との繋がりはあるのか? 4.テープがロラン一家に与えた影響とは? 等に感心を払いながら何れ発売されるであろうDVDでご覧下さい。残念ながら上映映画館は限られた場所だけなので、東京以外の映画ファンはDVDが発売されるまでの辛抱です。 【鑑賞後の感想】 オープニング・ロールから観客をハネケ・ワールドに惹きこむ映像的しかけがあるが、こんな手法があったのかとイキナリ感心させられて映画はスタートする。 映画は或る日見知らぬ人物から特段の要求もなく自宅を撮影したビデオを何本も送りつける。このテーマは、現代社会の人間の覗き願望を満たすものであり観客の感心を留めておくには有効であろう。 だがここから先の話の展開はハリウッド映画ならサスペンス色やアクション・シーンを混ぜて派手な構成を考えるのだろう。しかしこれはヨーロッパ映画であるので、そうした構成にはならない。ビデオテープが家族を心理的に追い詰めていく過程は描かれているが、少年時代との関連性とビデオテープの関わり方には多少違和感を感じた。 少年時代の関わり方よりは、このテープが家族にもたらした動揺をもっと掘り下げた方が私としては良かったと感じた。それでも最後までこのテープ送付者が誰なのかは明かされないが、観客は独自の視点で送付者を割り出すだろうが、ハネケ監督の狙いはそこに有るのではないか。送付者を特定する映画ではなく、そうした行為が幸せな家族と思われていたロラン一家の精神面に与えた影響の描写には感心した。 ラスト・シーンは目を凝らして観ていたのだが、そこにはこの映画のキーとなる重大な何かが映っているはずなのだが発見できなかった。来年あたりWOWOWで放映される時にでも確認したい。 【自己採点】(10点満点) 6.5点。フランス映画風のタッチ(4カ国共同制作だが)で作られているが、興味深いテーマなのだがもう少しインパクトの強い何かが欠けていた? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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