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KINTYRE’S   DIARY~旧館

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2007.01.02
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カテゴリ:ヨーロッパ映画
原題:Je ne suis pas là pour être aimé (フランス)公式HP
上映時間:93分
鑑賞日:12月29日 ユーロスペース(渋谷)
監督・脚本:ステファヌ・ブリゼ
出演:パトリック・シェネ(ジャン=クロード)、アンヌ・コンシニ(フランソワーズ)、ジョルジュ・ウィルソン(ジャン=クロードの父)、リオネル・アべランスキ(ティエリー)、シリル・クトン(ジャン=クロードの息子)、アンヌ・ブノワ(秘書エレーヌ)、オリヴィエ・クラヴリ(タンゴ教室に通う男)

【この映画について】
2005年にフランスで半年を越えるロングランを記録し、フランスは「小さな宝石」と称えられた映画に夢中になった。
人生におけるターニングポイントを迎えた男と、結婚間近で揺れる女の心の機微を情感あふれる如何にもフランス的な独特のタッチで描き出した本作はフランスで絶賛された。メディアの絶賛と観客の熱狂が海外にまで広まり、すでに世界40カ国以上での公開が決定。そしてついに、待望の日本公開を迎えるが公開館が限られているのが残念だが観に行けるファンは是非観に行って欲しい。
くたびれた執行官を演じるのはパトリック・シェネ、フランソワーズを演じるのは「灯台守の恋」や現在公開中の「あるいは裏切りという名の犬」等で今注目の女優アンヌ・コンシニ。二人の息の合った演技は2006年セザール賞にもノミネートされた。
【ストーリー(ネタバレなし)】
50歳のジャン=クロード・デルサールには別れた妻との間に,植物を愛する内気な息子(シリル・クトン)がいた。自身は現在介護施設に入所している父親から執行官職を受け継ぎ,その事務所では秘書に加えて新たに息子も雇い入れ,将来的に執行官職を引き継く体制を作っていた。ただ、執行官とは裁判所から滞納などで物件の差し押さえを通告し立ち退きの際に立ち会う仕事で、気の優しい息子には父ジャン=クロードの様に割り切って仕事が出来ずに悩む。
彼は人々の怨嗟を買うこの仕事を決して好きになることができず,単調な日々に飽きてもいた。ある日家賃を滞納していた移民の女性に裁判所命令を突き付け,立ち退きを延期するように懇願する姿に気が沈んだ彼は事務所向かいにあるタンゴ教室を茫洋と眺める。
一方,タンゴ教室に通うフランソワーズは結婚を間近に控えていた。婚約者ティエリーは仕事で手一杯でフランソワーズが誘うタンゴ教室に一緒に行くことができず,彼女は不満が鬱積していた。そのタンゴ教室では彼女を気に入る男性がしつこくダンスの相手を誘う中で、タンゴ教室に入会したジャン=クロードはフランソワーズを相手に踊ってみるとぎこちないながらも必死にステップをあわせようと頑張る姿に気を引かれる。
何度か教室で相手を務めているうちに、ジャン=クロードとフランソワーズが実は母を通じて古い友人であることに気が付き二人の距離は一気に親密なものとなる。
何回目かのレッスン後に、激しい雨の中をジャン=クロードの来るまで送ってもらったフランソワーズは、車中に忘れた靴を後日彼の家まで取りに行く。ステップが難しいと言うジャン=クロードにフランソワーズは、その場で教室とは違った雰囲気の中で頬を寄せ合って踊る。これを機にさらに二人は接近して行くのを感じたのだった。
しかし、或る日のレッスン後、帰りのエレベーター内でフランソワーズを気に入っている教室の男が、「結婚式の準備は順調?」と発した言葉で二人の関係は一気に違う方向へと行ってしまうのだった。
さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。
1.フランソワーズは何故ジャン=クロードに対し婚約者がいる事を黙っていたのか?そして彼女は彼にどう弁解したのか?
2.彼の後を追いかけていった彼女は何を言ったのか?
3.婚約者との関係が上手く行かずに悩む彼女は彼に何を伝えたかったのか?
4.何時もの様に介護施設に入所している高齢の父を訪ねたが、その時、父との間の長年の確執が表面化してしまうがその原因とは?
5.彼女を拒絶してしまい心を閉ざしてしまうジャン=クロードに対し、事務所の秘書が与えた助言とは?

などを中心に映画館に行く事が出来る人は是非映画館で、無理な方はDVDが発売された際にご覧下さい。
【鑑賞後の感想】
この映画は心に迷いのある一組の男女の心理を、タンゴ教室という共通項で見事に纏めた如何にもフランス的な映画だ。エンド・ロールを含めても93分という短い上映時間だが、そこには「無駄なセリフ」は一切排除し、二人の俳優がまるでその役に成り切ったかのように台本どおりでなく二人の感性で演じているように思えた。
タンゴは暗い色調の映像に華を与える役目を演じているのと、情熱的な音楽と踊りが二人の隠された心境をそのまま語っているかのようでセリフは少なくともタンゴが果たしている役目はここでは重要だ。
結婚まえのマリッジ・ブルーを抱えた女性と、妻に逃げられて年老いた父との関係も微妙な50男の心の隙間をタンゴが繋いだ。女は男に婚約中であることを告げず、密かに恋心を抱いてきた気持ちは打ち砕かれ一気に心を閉ざしてしまう。平凡な映画ならこのままこの50男の惨めさと、女のしたたかさを描いて幕となるのだがこのフランス映画はそうした終わり方はしなかった。
そこまで存在感の無かった年老いた父の存在がこの後のストーリー展開で一気に大事な位置を占めてきたのには驚いた。詳しくは書かないが、ジャン=クロードが抱えていた胸のなかのモヤモヤが何かをきっかけに晴れていく様子は清々しささえ感じた。
因みに原題のフランス語は「愛するために、ここにいる訳ではない」という意味らしい。
自分はまだ50歳ではないが、果してこういう恋心を一周り(二周り)以上年下の女性に抱く日が来たとしてどう対応するのかな?と考えてしまった...
【自己採点】(10点満点)
9.0点。いや~、やはりこうしたフランス映画は良いね!アメリカ映画や邦画には出せない味を堪能出来ました。

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Last updated  2007.01.02 19:07:17
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