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テーマ:ミニ・シアター系映画(152)
カテゴリ:ヨーロッパ映画
1.あるいは裏切りという名の犬
■原題:36 Quai Des Orfevres ■製作年・国:2004年、フランス ■上映時間:110分 ■鑑賞日:1月6日 銀座テアトルシネマ(京橋) ■公式HP:ここをクリックしてください □監督・脚本:オリヴィエ・マルシャル □製作:シリル・コルボー=ジェスタン、ジャン=バティスト・デュポン、フランク・コロー ◆ダニエル・オートゥイユ(レオ・ブリンクス警視)次期長官の有力候補 ◆ジェラール・ドバルデュー(ドニ・クラン警視)権力志向が強くかつてのレオの相棒 ◆ロベール・マンシーニ(アンドレ・デュソリエ、パリ警視庁長官)国家警察総局長に任命 ◆ヴァレリア・ゴリノ(カミーユ・ヴリンクス)レオの妻でドニもかつては心を寄せていた ◆アンヌ・コンシニ(エレーヌ・クラン)ドニの妻 ◆ロシュディ・ゼム(ユゴー・シシリアン)元情報屋で出所を2週間後に控えている ◆ダニエル・デュヴァル(エディ・ヴァランス)定年間際の刑事でレオの相棒 ◆カトリーヌ・マルシャル(エヴ・ヴァラゲン)ドニの部下だがその手法に疑問を持つ警部 ◆フランシス・ルノー(ティティ・ブラッスール)レオを慕う部下 【この映画について】 本作は、かつてフランスのお家芸だった犯罪ノワール映画を現代に誕生させたわけではなく、一級のミステリー映画となっている。 実際に警察官として働いた異色の経歴を持つオリヴィエ・マルシャル監督が、その当時の事件や実在の人物に基づき映画化。その企画にダニエル・オートゥイユ、ジェラール・ドパルデューほかフランスを代表するスターたちが賛同し、豪華オールスター映画として完成した。 ストーリーの面白さに注目したハリウッドが早くもリメイク権を獲得、早速、プロデューサーにロバート・デ・ニーロの名前が挙がり本年にも撮影に着手するそうである。 主演のダニエル・オートゥイユは最近では問題作「隠された記憶」への出演があり、クランの妻役であるアンヌ・コンシニは「灯台守の恋」や現在公開中で「愛されるために、ここにいる」では結婚前のマリッジ・ブルーの女性を演じ好評を博している。 因みにこの映画のフランス語の原題は「オルフェーヴル河岸36番地」を意味し、冒頭にいきなりこの住所表記版が盗まれるシーンで始まるがこれはパリ警視庁の住所でありパリ市民なら誰でもしっているそうである。 【ストーリー(ネタバレ無し)】 フランス、オルフェーブル河岸36番地にあるパリ警視庁に、二人の警視がいた。一人は仲間からの信頼厚く、正義を信じるレオ・ヴリングス。もう一人は権力志向の強い野心家のドニ・クラン。親友だった二人は、同じ女性を愛し奪い合った過去を持ち、今は次期長官の座を競うライバルとなっていた。 パリ市内で過去一年半の間に7件9人が殺される現金輸送車強奪事件を巡り、現長官のマンシーニはレオを頂点とするBRI(探索出動班)に捜査指揮を執る様命じるが、この件を最初から追っていたドニのBRB(強盗鎮圧班)はこの決定に不服で、何とかマンシーニからレオの指揮下に入るならとの条件付で捜査を認める。二人は共にかつての友人で、今では、マンシーニの後継長官として有力視されているがマンシーニはレオを後継長官と考えている。 全く操作手法の違う二人の部隊はそんな関係を反映しライバル関係にある。レオはかつての情報屋で2週間後の出所を迎え特別外泊を許可されているシリアンと会うことになったが、シリアンの企みで彼が車内から自分を密告したゼルビブを射殺してしまう。この時、ベルビブは車内で売春婦と行為に及んでいる最中だったが売春婦は命からがら脱出するのだが、この時の売春婦の行動がレオとその家族をどん底に落とすとは思いもしなかった。 シリアンからの情報を元にレオたちのBRIはアジトを突き止め包囲したが、現場でドニはレオの指示を無視し単独行動を取ったことで犯人一味に気が付かれ大切な相棒であるエディが銃撃され即死してしまう。挙句にドニの部下エヴまで捕虜にされ怪我を負ってしまい警察の捜査は失敗に終わる。 エディの殉職を巡り警視庁内務調査課ではドニを査問にかけ処分することをBRI全体が望んだが、形勢不利と思われたドニは査問委員会で「無罪」となりレオらは臍をかんだ。 レオらは結局犯人を逮捕できたが、ドニは逆にシリアンの犯行の件で密告がありレオは逮捕されてしまう。これをきっかけにドニは一気に次期長官の座を獲得し、二人の立場は逆転する。 そして警官嫌いの検察官のおかげで面会もままならないレオに対し、妻のカミーユはあらゆる方面に手を尽くすのだったが...そしてカミーユに対しシリアンが面会を求めるのだったが、そこで待っていたものとは... さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。 1.面会を許されない身の妻カミーユだったが、果して彼女はレオと会えるか?それともレオはこの事態を乗り切れるか?一人娘のローラの父に対する思いとは? 2.シリアンとカミーユの密会をキャッチしたドニらだったが、果してシリアンを逮捕出来るのか? 3.警察の尾行に気付いたシリアンがこのあと取った驚くべき態度とは? 4.模範囚として7年間の服役で出所したレオは復讐を果たすべく動くが、既に長官になっていたドニへ近付く事は出来るのか?復讐は実を結ぶのか? 5.出所して会った一人娘ローラへレオは何を伝えてのか? 等を中心に数少ない映画館での公開ですが、近くにお住まいの映画ファンなら是非DVDでなく映画館でご覧下さい。但し、週末はかなりの混雑が予想されますのでお早めにどうぞ。 【鑑賞後の感想】 フランス映画というと恋愛関係や人間関係の内側をじっくりと描いたような作品を今まで観てきたので、こうした警察内部の人間関係やライヴァル関係を描いた作品には最近お目にかかっていなかったので新鮮に感じた。 ストーリー展開としても二人のライヴァル関係の背景に、一人の女性を巡る恋愛関係のもつれがその後の二人の関係を決定付けたあたりの話題も良かった。二人は出世街道でも似たような経歴を辿り、遂に警視長官の座を巡って争うまでになる。二人の会話でもそうしたことが滲み出ているし、結局は権力志向の強いドニにレオは敗れた形になり7年間も収監されるのだが、この二人の争いは結局どちらが勝者であったのかは観た者が判断することになりそうだ。 権力の座を射止めたドニ、そのドニによって人生を狂わされたレオだが出所後の彼の生き方はある意味でレオらしい正義感から来るものだった。 どちらの行き方も男としての権力欲、支配欲、家族を大事にする心、正義感、家庭に仕事を持ち込まないなどの特徴をオリヴィエ・マルシャル監督は元警察官とあって上手く表現していた。ストーリーの展開も、そこに行き着くまでのサイド・ストーリーの作り方などをみていると見事である。 全く無駄な映像も、無意味なセリフも一行もない素晴らしい映画であった。 ハリウッド映画としてリメイクが決まったそうだが、果してフランス版を超える事は出来るだろうか?お手並み拝見である。 【自己採点】(100点満点) 92点。今年一本目の映画はいきなりの高得点だがそれも納得! 人気blogランキングへ ←是非クリックして下さい お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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