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テーマ:ミニ・シアター系映画(152)
カテゴリ:ヨーロッパ映画
2.みえない雲
■原題:Die Wolke ■製作年・国:2006年、ドイツ ■上映時間:103分 ■鑑賞日:1月8日 シネカノン有楽町(有楽町) ■公式HP:ここをクリックして下さい □監督:グレゴール・シュニッツラー □製作:マルクス・ツィンマー ◆パウラ・カレンベルク(ハンナ) ◆フランツ・ディンダ(エルマー) ◆ハンス=ラウリン・バイヤーリンク(ウリー)ハンナの弟 ◆カリーナ・ヴィーゼ(パウラ)ハンナとウリーの母 ◆リッチー・ミュラー(エルマーの父) ◆トーマス・ヴラシーハ(ハンネス)ハンナの入院先の病院の看護士 ◆ガブリエラ・マリア・シュマイデ(ベルガ)ハンナのおばさん ◆ジェニー・ウルリヒ(マイケ)ハンナの高校の親友 ◆クレール・エルカース(アイシェ)ハンナが病院で知り合った友人 【この映画について】 ドイツのベストセラー小説を映画化。原子力発電所の事故により引き裂かれてしまう少女ハンナとと転校生の少年エルマーとの愛を描いたラブストーリー。 幸せを手に入れたその瞬間に訪れた、原発事故による大災害。 その極限状況で次々に降りかかる困難に対し、家族の死という最大の悲しみにも遭遇しながら、時には膝を屈しながらも愛を原動力に乗り越えていくハンナとエルマーの姿は、感動と希望を与えてくれる。 さらにこの物語は、原発事故の悲惨さやパニック状況での人間心理や群集心理などもリアリティを持って描かれており、現代社会に対する警鐘も鳴らしている。 人間は極限状態に突如として遭遇すると思いもよらない行動を取るが、この映画ではそうした心理もたくみに描いているのでその辺も感じながら観てもらいたい。 馴染みの無いドイツ人俳優が出ているが、高校生役のハンナやマイケ役の女優やエルマー役の俳優も無名に近いが注目してみたい。 【ストーリー(ネタバレなし)】 ドイツの田舎町シュリッツで高校生のハンナは母と幼い弟のウリーの三人で暮らしている。 ある日の授業。遅刻したハンナは、光合成の質問をされ回答に窮してしまう。その時、転校生のエルマーが質問を引き継ぐことで彼女を助けてくれた。これをきっかけに、ハンナはエルマーの存在が気になるように。 一方で一人っ子のエルマーは仕事に忙しい両親に愛されず、裕福な家庭らしく誕生日プレゼントも現金だがいつも家では一人でさびしさを味わっている。 或る日、ハンナの母親が大事な仕事で1泊することになり家を留守にすることに。ウリーの世話を頼まれたハンナは渋々引き受けて母は仕事に向う。 そしてその日の試験中にエルマーに呼び出された彼女は、人気のない教室で突然彼にキスをされる。束の間、愛を交わす2人。だがその時、校内に警報が鳴り響いた。それは近隣の原発で事故が起こったことを知らせるものだった…。 警報を聞いてパニックになる生徒たちは各自帰宅するのだが混乱の中でエルマーは自宅に一端戻ったら迎えに行くとハンナに告げる。 同級生の車に同乗して自宅へと向ったが、徐々に異常な事態に町が陥っていることに気が付きハンナも何とか自宅へ辿り着く。直ぐにウリーの無事を確認し母に連絡を取るが繋がらない。警察は地下室に篭るように言いまわるが、住民は我先にと車で脱出を試みる。隣家から同乗を勧められるがエルマーが迎えに来る事を信じ舞い上がっているハンナは断る。 母から連絡が付きハンブルクのおばの下へ避難する様促され、エルマーを待ちきれず弟と二人で自転車で駅まで駆けるが、パニックに陥った群集らが道路封鎖を告げる警官らと押し問答になるなど治安は一気に悪化する。 そんな環境下で弟はぐずりながらもなだめて駅を目指していたが、一瞬目を離した隙に弟の自転車は猛スピードで牧場を駆け下り車道に出たところを跳ねられ即死してしまう。 後続の車から降りた家族に抱えられながら弟の遺体をトウモロコシ畑に葬り、悲しみに暮れる中を何とか駅まで辿り着く。しかしそこは押しかけた群衆でパニック状態になり、ハンナは一瞬エルマーを見かけたが人影に消えていき途方に暮れる。 母の消息も不明で弟も事故死し茫然自失のエルマーは駅舎の外で放射能を含んだ雨の中で彷徨い気絶する。 そして目が覚めたハンナはハンブルク近郊の臨時診療所のベッドにいた。しかしそこでは放射能を大量に浴びたハンナの体に異変が起きていた。病室の仲間が死んでいく中、彼女の希望は看護士ハンネスを通じて母の消息とエルマーの消息の情報だった。同世代のアイシェとも親しくなっていたとき、エルマーが診療所にやってきて感動の再会を果たすのだったが... さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。 1.消息不明の母はどうなったのか?おばとの面会は叶うのか? 2.エルマーとハンナは再会を果たしたが、果してエルマーの両親は彼にどう接したのか? 3.エルマーとハンナのお互いを思う気持ちはどうだったのか? 4.二人はこの先、愛し合って如何なる壁をも乗り切ることが出来るのか? 5.被爆したエルマーの母の治療を目的に渡米を説く父に対し、ハンナとの愛を貫きたいエルマーは彼女に揺れる気持ちをどのように伝えたのか?ハンナは理解を示す事が出来るのか? 6.放射能の影響で封鎖された故郷へ帰郷出来るのか?残してきたハンナの弟の遺体と再び対面出来るのか? 7.ハンナの病状の進行はどうなっていったのか?アイシェの病状は? 等を中心に全国でも単館での公開ですが、都内および近郊に在住の映画ファンなら是非映画館でご覧下さい。 【鑑賞後の感想】 この映画が旧ソ連のチェルノブイリ原発での事故をモチーフに作成されたのは明白である。公開館ではチェルノブイリ原発での事故後の模様や、被爆者の埋葬や病状を写真で展示するコーナーがあったが悲惨なものだ。 この映画で語られているのは「パニックに陥った時の群集心理」「絶望的な状況でも愛を貫けるか」「家族の絆」「無力な政治家への警鐘」「危険防止の大切さ」であると思う。 その中でも「絶望的な状況でも愛(初愛)を貫けるか」にスポットをあてることで、原発事故の影響だけを描くと言う重いテーマから脱する事が出来た。前半は束の間の幸せを感じたが一気に原発事故という未曾有の事故でパニックに陥り脱出する列車に乗るまで。 後半は被爆し徐々に衰えていく体力と気力を振り絞り、幼き未熟な愛を成就させるまでの心理的葛藤を絶望的な状況から脱出する方法を模索し続けることを前面に押しだすことでアピールしている。 時には身近な大人からの助言に苦悩し、友人との触れあいでヒントを得ようとしたり、お互いの立場を思いやる事で解決しようともがき苦しんだ。 結局、二人はお互いの愛の原点に立ち戻る事でもやもやを解決する方法を選択したのだった。その選択は必ずしも生き永らえる選択ではなかったが、それでも若い二人が下した選択に間違いは無かったと思いたくなるエンディングだった。 【自己採点】(100点満点) 89点。こうした映画が単館公開とは惜しい! 人気blogランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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