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テーマ:ミニ・シアター系映画(152)
カテゴリ:アメリカ映画
10.輝く夜明けに向かって
■原題:Catch A Fire ■製作年・国:2006年、アメリカ ■上映時間:101分 ■鑑賞日:2月3日 シャンテ・シネ(日比谷) ■公式HP:ここをクリックして下さい □監督:フィリップ・ノイス □製作:ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、アンソニー・ミンゲラ、ロビン・スロヴォ □製作総指揮:シドニー・ポラック、デブラ・ヘイワード、ライザ・チェイシン ◆ティム・ロビンス(ニック・フォス)公安部テロ対策班の大佐で硬軟交えた尋問を繰り返す ◆デレク・ルーク(パトリック・チャムーソ)石油製油所で現場監督をする ◆ボニー・へナ(プレシャス・チャムーソ)パトリックの妻で2児の母 ◆ミシェル・バーガース(アンナ・フォス)ニックの妻 ◆テリー・フェト(ミリアム)パトリックの愛人で彼との間に認知していないが1児がいる ◆マルコム・パーキー(ジョー・スロヴォ)ANC作戦部長で白人政権に打撃を与えようと画策する ◆ツミショ・マーシャ(オバディ)ANCの軍事教官で戦闘意識や方法を授ける 【この映画について】 実在する<自由の戦士>、パトリック・チャムーソの波乱の半生を映画化。 前半、世界中から非難の的になっていた南アフリカの厳しい人種差別<アパルトヘイト>の様子が描かれていくが、これが終結宣言の出される1991年、つまりつい最近まで続いていたという事実は、地球の反対側の住人である日本人には現実感に乏しく今さらながらに衝撃的だ。 無実の罪で無期限に取調べを受けるパトリック役デレク・ルークはアフリカ系アメリカ人だが、この難しい役を見事にこなした。そのパトリックを硬軟使い分けて取り調べる白人の大佐を『ミスティック・リバー』でアカデミー賞に輝いたティム・ロビンスが不気味に演じる。この二人の取調べが進んでいく様子を中心に映画は描かれているが、音楽も重要な意味を持っている。冒頭でドナ・サマーのヒットで有名な「ホット・スタッフ」を歌うシーンがあるが、この題名が意味するのもストーリーと無関係ではないのでよく観ておくことをお薦めします。 その他にもアフリカの伝統的リズムや土着の歌が効果的にセリフ代わりに使われている。 【ストーリー(ネタバレなし)】 1980年、アパルトヘイト政策下の南アフリカ。石油製油所で現場監督として熱心に働くパトリック・チャムーソは、当時の黒人としては裕福な暮らしをしていた。 妻と二人の娘との平穏な暮らしを望む彼は、同居する母とは異なり政治やANC(アフリカ民族会議)にも無関心。 ある日、石油製油所が反対勢力に攻撃される。現場監督のチャムーソはテロリストを手引きした容疑で逮捕、拷問されてしまう。彼を取り調べるフォス大佐は、硬軟を織り交ぜてパトリックを犯人の一味と思い込み取調べをする。黒人は無期限に拘束取り調べることが出来る法の下に、週末はフォスの自宅で食事を共にしながらソフトに対応するがそれでもフォスはパトリックを厳しく取り調べANCの幹部の行方を探ろうとする。 パトリックは爆破が有った日は、彼がコーチをするサッカーチームの試合で職場を欠勤していた。しかし、その日は本来は勤務の日であるがチームが勝ち進んだために妻のプレシャスに依頼し診断書を偽造していたのだった。アリバイを証明するはずの診断書も偽造であることをフォスに見破られ窮地に追い込まれるパトリック。彼はその間に愛人のミリアム宅を訪ねていたのだが、妻プレシャスに迷惑が掛かると思い言い出せないでいた。 フォスは取調べの間に車でパトリックの家の傍に停め、妻の姿を遠巻きに見せ自白を迫る。パトリックが取調べで話すアリバイもフォスは一笑に付し、やがて、その拷問が妻の手に及んだ時、彼は怒り狂い釈放後自由の戦士として立ち上がる決心をする。パトリックは「自白」を強要されたが、その自白をみてフォスは彼を無罪と感じ、これ以上、本物のテロリストを逃すことが大事だと考え釈放した。 自宅に戻ったパトリックだが、今まで無関心だったANCのラジオ放送を聴いて遂に母に無言で決心を伝えた。そして一家が寝静まったのを見計らって、隣国モザンビークのANCの本部に出向き覚悟を決めて兵士になる決意を固めたのだったが... さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。 1.パトリックの突然の家出を家族はどう捉えたか? 2.パトリックがANCの本部で訓練を受けているときに起こった事件とは? 3.製油所勤務時代の経験を生かしてパトリックが決死の覚悟で帰ってきた訳は? 4.再びパトリックを追う事になったフォスは果してパトリックの計画を阻止出来るか? 5.パトリックの今後の人生はどう変っていくのか?フォスとの関係はどうなる? などを中心に単館公開ですが興味のあるかたは是非映画館でご覧下さい。 【鑑賞後の感想】 悪名高きアパルトヘイトに終止符が打たれてまだ10数年しか経っていないのだが、あの頃はどういう時代だったのか現実感の乏しい日本人には理解が出来ない。この映画を観ていると黒人は明らかに白人から差別されているが、それでもこの映画は差別だけがテーマではないので極端な描き方はされていない方だろう。 それでも白人が黒人と接する時の態度は支配階級のそれである。ティム・ロビンス演じる大佐も一見すると「物分りの良い白人」として描かれているが、それでも黒人を差別的に見ているのがありありと感じられる。 アパルトヘイトが廃しされてから、大佐は一般人として一人で釣りを寂しくしていて、それに気付いたパトリックが彼の首をへし折ろうか迷った挙句に止めたシーンは印象に残った。暴力に対して暴力で報復しても何も生まれないと悟ったこの彼の決断に観ていた時に心の中で拍手を送った。 ティム・ロビンス演じた大佐はアパルトヘイトが長続きしないに違いないと思いながらも、自らは白人であることの優越感も持っていた。そんなロビンスの演技は派手さはないが好演だったと思うし、併せて、デレク・ルークの演技も良かった。 【自己採点】(100点満点) 79点。これを観るとやはり人種差別政策は間違いだと感じる! ←是非クリックして下さい 人気blogランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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