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カテゴリ:ヨーロッパ映画
8.ヒトラーの贋札
■原題:Die Falscher(英題:The Counterfeiters) ■製作年・国:2006年、オーストリア ■上映時間:96分 ■日本語字幕:佐藤一公 ■鑑賞日:1月19日、シャンテシネ(日比谷) ■公式HP:ここをクリックしてください □監督・脚本:ステファン・ルツォヴィッキー □製作:ヨーゼフ・アイヒホルツアー、ニーナ・ボールマン、パペッテ・シュレーダー □共同製作:カロリーネ・フォン・ゼンデン、ヘンニング・モルフェンター、カール・L・ヴェプゲン博士 □撮影:べネディクト・ノイエンフェルス □編集:ブリッタ・ナーラー □美術:イジドール・ヴィマー □衣装:ニコーレ・フィッシュラナー □音楽:マリウス・ルーラント □タンゴ演奏:ウーゴ・ディアス □メイク:ヴァルデマール・ポグロムスキー、ダニエラ・スカラ
ブルガーはサリーの説得にも耳を貸そうとしないばかりか作業の妨害を図る。ヘルツォークはサリーに目を掛けられていることもあり1対1で話すことも出来る地位だが、作業がはかどらない苛立ちから「4週間以内の完成」を厳命し、未完成の場合はブルガーを含む5名を銃殺すると通告してきた。 仲間の動揺は激しくブルガーを密告するべきと詰め寄られるがサリーは拒否し、自身が印刷技術を習得しようと寝る間も惜しんで作業する。だが、そんなときにコーリャが結核に冒された。が、それが知られれば銃殺されるので、サリーは薬手配とヘルツォークが密かに家族とスイス脱出計画を練っていることから一家の偽造旅券作成の取引に応じる。しかしその甲斐もなくコーリャは銃殺され激怒する。 数日後、連合軍が迫ってきていることから作戦は中止され機械類も全て親衛隊により慌しく撤去された。静寂が漂う収容所にヘルツォークが単身で戻り密かに隠していた贋ドル札を逃亡資金として回収に現れ、サリーと対峙する。もう、指揮官と収容者の関係も無くなった二人は、サリーが銃を突きつける。 サリーにはコーリャの銃殺が許せなかった!それでもサリーに命乞いをするヘルツォークに対して引き金を引くことは無かった。 翌朝、収容所には囚われの身だった男達がサリーらの棟に押し寄せてきた。感情の制御を失っていた連中は、サリーらを親衛隊への協力者とみなし殺害せんとばかりにいきり立っていた。 サリーの波乱万丈の人生はこうして収容所を後にして、今ではモンテカルロで贋札を賭け事に全て費やしてしまった。この先の、彼の人生はどうなったのか...。 【鑑賞後の感想】 ナチス・ドイツが贋札作戦を企画していたとの話はTVで何となくみた覚えがあったけど、どういう作戦だったかは詳しくは知らなかった。 この映画は実際に作戦に従事させられていたユダヤ人(ブルガー)の告白手記を下に製作されただけに真実味を帯びている。 フィクションの部分もあるそうだが、この映画を観てナチスがいかにしてユダヤ人を自分らの都合のいいように使っていたかが分かった。 贋札作成に必要な印刷工とサリーのように実際に贋札製造を行っていた者たちを連れてきたのだから。サリーもブルガーも最初は協力的な態度だったが、ブルガーが徐々にナチス嫌いを如実に露にしたことから工場内の雰囲気まで変わってくる。 サリーはあくまでも工場内の作業は「仲間達」との共同作業と捉えていて、不足があればヘルツォークに直訴できる立場でもあった。 しかし、ブルガーは仲間達との連携より個人的感情を余りにも優先させ過ぎた。この二人の考えの違いからくる感情のぶつかりもこの映画での特徴で、サリーを演じていたカール・マルコヴィクスの演技はどこかヒョウヒョウとしていて掴み所がないが感情や表情の起伏は豊である。 ユダヤ人の戦争中の運命はアウシュビッツでの体験を下に欧米社会では語り継がれているし、ユダヤ人社会では未だに当時のナチスの戦犯を追い続けている。数日前にも高齢のナチの戦犯が移送されてきた。 日本では杉浦千畝氏がリトアニアの領事館勤務時に日本通過査証を個人の裁量で発行し、多くのユダヤ人を救った話が最近では評価されているが日本人としてユダヤ人の苦悩を理解している人は多くはないのが現状ではないだろうか? そうした苦悩を理解するうえで最も有効なのがこうした映画の公開だ。「アンネの日記」もユダヤ人の苦悩の話だが、今回の映画も海外では評価が高くアカデミー賞外国語映画部門での受賞が有力視されているほどだ。日本での公開は限られた映画館のみなのはそうした意味でも残念だ。 アカデミー賞の受賞発表も迫っているが、受賞出来たら是非全国規模で公開してもらいたい作品だ。 【自己採点】(100点満点) 88点。娯楽性も兼ね備えた作品として高く評価した。 人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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