11-17.アンチクライスト
■原題:Anchchrist
■製作年・国:2009年、デンマーク・ドイツ・スウェーデン・イタリア・ポーランド
■上映時間:104分
■字幕:齋藤敦子
■鑑賞日:2月26日、シアターN渋谷(渋谷)
■料金:1,800円
スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
□製作:ミタ・ルイーズ・フォルデイガー
□編集:アンソニー・ドッド・マルトル
□撮影:アナス・レフン、アサ・モスベルグ
◆ウィレム・デフォー(彼)
◆シャルロット・ゲンズブール(彼女)
◆ストルム・アヘシェ・サルストロム(ニック)
【この映画について】
『奇跡の海』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』で、それぞれカンヌ国際映画祭のグランプリとパルムドールを制したラース・フォン・トリアー監督。本作はキャリア初期の『キングダム』などにも通じる、アンダーグラウンドなホラー趣味全開の異色作だ。
幼い息子を亡くした夫婦が心の傷を癒す映画かと思っていると、不意打ちを食らうだろう。映画に流れる低音のノイズといい、その不可解さのテイストはデビッド・リンチ作品に通じる。常軌を逸した妻(シャルロット・ゲンズブール熱演)の激しいセックスシーンと、血まみれのバイオレンスとオカルトが一体となり、見ていて“痛い”描写は、私たちの神経を逆なでするだろう。好き嫌いは分かれるが、強烈なインパクトを残す作品だ。
出演は、本作で第62回カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞した「アイム・ノット・ゼア」のシャルロット・ゲンズブール、「デイブレイカー」のウィレム・デフォーなど。
(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
愛し合っている最中に、息子がマンションの窓から転落し亡くなってしまった夫婦。妻は葬儀の最中に気を失ってから、一ヶ月近い入院を余儀なくされる。
深い悲しみと自責の念から次第に神経を病んでいく妻。セラピストの夫は自ら妻を治療しようと、病院を強引に退院させ自宅に連れて帰る。催眠療法から、妻の恐怖は彼らが「エデン」と呼ぶ森の中の山小屋からきていると判断した夫は、救いを求めて楽園であるはずのエデンにふたりで向かう。
夫は心理療法によって妻の恐怖を取り除こうと努力するが、エデンの周りの自然の現象は彼らに恐怖を与え、それも影響してか妻の精神状態は更に悪化していく。現代のアダムとイブが、愛憎渦巻く葛藤の果てにたどりついた驚愕の結末とは……。
ラース・フォン・トリアー監督作品は「ドッグヴィル」以来2作目の観賞だったが、元々今回の作品は観る予定は無かった。予告編をみた時から難解な作品なのは明らかだと思えたのと、観た日はタマタマ別の場所で別の作品を観る予定だったが、私のうっかりミスで時間を間違えてしまい、時間的に間に合うのがこの作品だったので、急遽移動して観たという訳です。
そんなこんなで、映像に拘るトリアー監督の世界が冒頭から繰り広げられる。雨の日に自宅アパートで幼い我子の存在を忘れて夫婦で愛し合う二人。そんな時に、息子は自宅アパートの窓から転落死してしまう。
それが全ての始まりなのだが、妻の憔悴は激しく精神的に追い詰められていく。この難しい役をシャルロット・ゲンズブールが従来の自分のイメージの殻を破らんばかりに熱演している。
相手役のウィレム・デフォーと激しく愛し合うシーンなど、今までの彼女なら無かったシーンでしょう。カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞したそうですが、彼女のキャリアでも異色の作品である。
作品のジャンル的にはトリアー監督作品は分類が難しく、特にこの作品は宗教的な要素をふんだんに取り入れており、日本人にはその背景等が理解されていないとこの作品もチンプンカンプンな場面が多々ある。
精神を病んだ妻が夫が寝入っている隙に、足にドリルで穴を開け、石臼の様なものでねじ止めしてしまうというシーンは、観ている方にまで痛さが伝わって来る。また、ラスト近くで映し出される、妻が自らのものを切り取るシーンなどは目を背けてしまう。これらのシーンは、残念ながら?ぼかし処理がされているのだが、ある意味、ぼかし処理がなければもっと不快に感じる客もいるはずだが、その賛否については私は論じません。
愛し合う行為の最中に幼子を失い自らの精神を病みながらも夫との行為を止められない妻を演じたシャルロット・ゲンズブール、同じ行為の最中に息子を失った点では同罪?でありながらも妻を催眠療法で治療する方法を選んだ夫役のウィレム・デフォー。
映画では殆どがこの二人だけのシーンで成り立っているのだが、ウィレム・デフォーの抑えた演技よりは、どうしても感情の起伏を、しかも突如として発狂したかのような表情を見せるシャルロット・ゲンズブールの新境地と言える作品だった。
途中で睡魔に襲われてしまったのは不覚だったが、もう一度観る機会があったら、その時はどういう印象を自分が持つだろうか?とふと考えた。