11-25.アメイジング・グレイス
■原題:Amazing Grace
■製作年・国:2006年、イギリス
■上映時間:118分
■字幕:小寺陽子
■鑑賞日:3月20日、銀座テアトルシネマ(京橋)
■料金:1,800円
スタッフ・キャスト(役名)□監督:マイケル・アプテッド
□脚本:スティーヴン・ナイト
□撮影監督:レミ・アデファラシン
□衣装デザイン:ジェニー・ビーヴァン
□音楽:デヴィッド・アーノルド
◆ヨアン・グリフィス(ウィリアム・ウィルバーフォース)
◆ロモーラ・ガライ(バーバラ・スプーナー)
◆ベネディクト・カンバーバッチ(ウィリアム・ピット)
◆アルバート・フィニー(ジョン・ニュートン)
◆マイケル・ガンボン(チャールズ・ジェームズ・フォックス)
◆ルーファス・シーウェル(トーマス・クラークソン)
◆ユッスー・ンドゥール(オラウダ・エクィアノ)
◆キアラン・ハインズ(バナスター・タールトン大佐)
◆トビー・ジョーンズ(クラレンス公爵)
【この映画について】
イギリスで「奴隷貿易廃止法」成立200周年を記念して製作された本作。「アメイジング・グレイス」の作詞者であるジョン・ニュートンに師事していた政治家ウィリアム・ウィルバーフォースの、奴隷貿易廃止のための戦いの模様を描いた物語。
ジョン・ニュートンはもともと奴隷貿易船の船長をしており、彼の航海の最中、2万人の奴隷が命を落としたという。「アメイジング・グレイス」自体が、ニュートンの悔恨と神への感謝から生まれた詩なのだ。本作を観た後でこの曲を聴くと、また新たな響きを感じるだろう。
監督は、「ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島」のマイケル・アプテッド。出演は、「ファンタスティック・フォー」シリーズのヨアン・グリフィズ、「つぐない」「エンジェル」のロモーラ・ガライ。
(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
18世紀のイギリス。交易で富を築いた家に生まれたウィリアム・ウィルバーフォースは成長すると、父と叔父が残した財産を多くの慈善事業に使うほどの優しい青年となる。イギリスの主たる収入源である奴隷貿易に心を痛めた彼は、世のために祈る聖職者になるか、世を変える政治家になるかで心が揺れる。
彼の師で、『アメイジング・グレイス』の作詞をしたジョン・ニュートンに背中を押されたウィルバーフォースは、21歳の若さで議員に選出される。
彼は英国最年少の首相ウィリアム・ピットと共に、奴隷貿易廃止を訴える。どんな危険な場所でも乗り込み情報を掴んでくるトマス・クラークソン、貴族出身で奴隷経験者でもあるオラウダ・エクィアノ、ウィルバーフォースの友人で下院議員のヘンリー・ソーントンら、12人が活動のために集められる。
1787年5月、彼らは活動を開始する。ウィルバーフォースたちはロンドンのコーヒー店や地方のパブ、ディナーパーティーの会場など国中を回って演説し、1年足らずで世論に影響を与える。39万人もの世論の賛同を得、1791年、国会に奴隷貿易廃止案を提出する。
しかし奴隷制度賛成派の妨害により、その申し立ては否決される。うちのめされたウィルバーフォースを病魔が襲う。ヘンリーはウィルバーフォースを自宅に招き、妻マリアンヌとともに看病をする。そして、美しく聡明なバーバラ・スプーナーと強制的に引きあわせる。
ウィルバーフォースとバーバラはすぐ恋に落ちる。ウィルバーフォースは心が折れかけていたが、バーバラによって立ち直る。ウィルバーフォースの苦難に満ちた活動は、名曲『アメイジング・グレイス』によって支えられ、奇跡の結末を迎える。
ウィルバーフォースは何度もくじけそうになりながらも、奴隷貿易廃止法案を国会で成立させることに情熱を燃やし続けた。そこにはジョン・ニュートンの影響が大きかったことは否めない。そして彼は一計を案じ、法案を提出する日に反対派議員達が国会に来ないように仕向ける作戦を練り、これが見事にはまった。
映画のストーリーそのものは「アメイジング・グレイス」の誕生秘話というよりは、むしろ曲誕生の時代背景を描いているといった流れに終始している。従って、誕生秘話を楽しみに観賞する人には向いていない?かも。
出演陣としてはウィルバーフォースを演じたヨアン・グリフィスの熱演や、ジョン・ニュートン役のアルバート・フィニーの抑えた演技などは良かった。共演者の中にはセネガル出身の世界的ミュージシャンとして有名なユッスー・ンドゥールが、ウィルバーフォースらに奴隷廃止法案を考えさせる重要な役で出ていたし、「英国王のスピーチ」ではチャーチル首相役だったマイケル・ガンボンなど英国出身の脇役達がストーリーに深みを与えていた。