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マックの文弊録

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2006.10.20
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◇ 10月20日(金曜日):旧葉月二十九日(壬午);秋の土用、美智子皇后誕生日、えびす講。

この国は幾つもの部族が狭いところに重なるようにして暮らしている。幾つ異なる部族が暮らしているのか?はっきりは解らないが、おそらく十は下らないだろう。それが横に棲み分けるのではなく、縦に積み重なって棲んでいるのだ。特にこの国の都会はそうなってしまった。

下のほうに棲んでいる部族は、物理的に上の重みを支えているわけではないけれど、雰囲気としてはやはり圧伏されてしまったような様子で、覇気もなく話し声もこもるようで小声である。動きも鈍い。
それに対して上のほうに住んでいる部族は、やたらにあちこち移動しているけれど、下のほうには決して向こうとしない。大きな声で早口で喋っているが、その言葉はこの国で今まで使われてきている言葉とは随分違って聞こえる。自分達だけに通じる方言を作り出して、それでコミュニケーションは取れているらしい。
一番上の層に棲んでいる部族は、顔つきまで違う。話している言葉はちゃんと今までこの国で使ってきたものだが、仲間内でしか話をしようとしないのは、他の部族と変わりない。
それにしても、こんなに大勢の人間が重なり合っているというのに、全体は極めて静かである。

暫く前までは、部族同士の上下動はある程度活発であった。上層は中層に、中層は上層にと結構激しく動き、下層もその上の層に交じり合おうとする様子が見えた。その頃はそれぞれの層が「部族」として固定し、言葉まで違ってしまうようなことは無かった。・・・ように思う。

水の流れと一緒なのだ。
ニュージーランドの近くには、冬になると鯨が集まってくる場所があるのだそうだ。その頃になるとこの沿岸には強い風が一定方向に吹き付ける。この風が海面を吹き払うと、それに触発されて海の深みから深層の海水が沸き上がってくる。長い間かかって栄養が蓄積された豊かな水だ。それが表面の海水と交じり合うと、爆発するように一挙にプランクトンが発生し、それを食料にする鰯などの小魚が大量に増える。鯨はそれを知っていて、集まってくるのだそうだ。鯨だけではない、海鳥も大挙して集まってきて、一斉に繁殖に入るのだ。
ところが、時にこの風が途絶えてしまうことがある。そうすると海水の掻き混ぜは起こらなくなり、海の命は枯渇してしまうのだという。そうなると、再び荒涼とした海が戻り、鯨も離れて行き、子育て中の海鳥も次々に挫折していくのだ。

この国には暫く前から、強い風が吹くことが無くなって、深層と上層の水が混じりあわなくなってしまった。そうなると水の層は滞ってしまう。少しばかりの風が吹いても、上層の極薄い水の層をかき回すだけで、本来栄養を蓄積しているはずの下のほうの水は動かない。動かない水は腐るのだ。

・・・・・・・・なんだか変な夢だったなぁ。


♪♪今回の厚木語辞書♪♪

『あわび今日買い』 - 給料日になるとちょっと贅沢したくなって、海辺の町ではこぞって市場に鮑を飼いに行く。海辺の町でも、高級食材の鮑はめったに庶民の口には入らないものだから、少しでも良いものを廉く買おうと大騒ぎになる。転じて大騒ぎをして、混乱状態になること。
【対応する日本語】 - 阿鼻叫喚。






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最終更新日  2006.10.21 08:39:20
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